みかんが酸っぱいのは、ビタミンCとクエン酸がたっぷり含まれているからです。酸は脂肪分やタンパク質を分解しますので、魚の毒消しにぴったり。海辺にみかんの木が多いのは、自然の絶妙な配慮なのです。また、果物のなかでもビタミンCの含有量が多く、免疫機能を高めます。オレンジ色の色素はカキと同じベータ-クリプトキサンチンという成分で、高い発がん抑制作用があります。
袋には食物繊維のペクチンが多く、皮の内側の白い筋にはフラボノイド化合物というビタミンに似た作用の物質が含まれます。これはビタミンCの作用を助け、毛細血管を強化する働きがあります。
実は風邪予防や便秘解消に、干した皮は冷え改善や咳止め、健胃に効果があります。
Q.気になる農薬を落とすには?
みかんは、農薬の不安はやや少ない果物です。選ぶときのポイントは、まず旬のもの。12月、1月がもっとも安全です。ハウスものは8月、9月、2月などを中心に出回っています。
みかんやりんごなど果物の表面には果物自身の持っているワックス層があります。この組織の存在により、果物からの水の蒸散を抑え、鮮度を維持するなど、ワックス層は果実にとって大切な生理的役割を果たしています。果実を水(特に温湯)で洗うと、このワックスの水溶性の部分が切られ、分離してきた水不溶性の部分が果実表面で固まり、白濁することがあります。
また、収穫後の果実の鮮度を保つため、樹上でカルシウム剤を散布することがあり、このような場合カルシウムが付着して白い物質が見られることがあります。これは水で洗浄するか布で拭けば簡単にとれますし、カルシウムの結晶ですので、ここに付着している程度の量では、特に人体に対する危険性はありません。
白い粉ではありませんが、リンゴの「ジョナゴールド」などの表面は、べとべとしていますが、これはリンゴの皮に含まれているリノール酸やオレイン酸が表皮組織から表面にでてきたものです。
通常、農薬散布が行われている果物ですが、農薬は自然界で光などによって分解し、食べる頃には農薬が全く残っていないよう考慮された農薬散布体系がとられていますので、通常の果物では、特に残留農薬に対して心配する必要はありません。
「ワックスは安全?」という質問がでるのは、ワックスが農薬などと同じものと考えられているためと思われます。ワックスは、果物表面に塗布されるため、食品衛生法による食品添加物としての規制を受けています。このため、天然物そのものか、一覧表に挙げられて許可されている添加物の混合物から作ったワックスしか使用できません。実際、天然多糖類、タンパク質、動植物性油脂などを主成分としていて、食べても安全なものです。
欧米では、ワックスは多く使用されていますが、我が国では、ハウスミカンのような夏の暑い時期に収穫される一部のカンキツ類などで使用されているにすぎません。近年は、ワックス使用が敬遠される傾向がありますが、9月から10月頃の初期の極早生品種はみかんの皮の水分蒸散が激しく、収穫後に皮がしわしわになってしまうため、ワックスを使用する場合もあります。しおれた果物を消費者が買わないのも事実で、鮮度保持の観点からは、適切に使用されることが望まれます。
ワックスは天然由来のものが殆どの為、人に害はありませんが、気になる場合、実はワックスは家庭で簡単に落とすことができます。
脱脂綿に焼酎などを含ませ、みかんの表面を拭く。ワックスはアルコールによく溶けるので、これだけでかなり落とせます。ノーワックスが手に入らないときにおすすめの自衛策です。
農薬の方は、ほとんど表皮とクチクラ層*に残留しているため、皮をむけばOKです。
*植物の葉の表面に覆われている物質が透過しにくい層のこと。
みかん
果実だけでなく、果皮や白い筋にも薬効あり
みかんは果実だけでなく、皮や白い筋などすべての部位に薬効があります。
果実には疲労回復やかぜの予防、美肌、抗がん作用があります。また、消化吸収を高めて、食欲を増進させます。香の強い皮は気の巡りを改善し、のどのつかえ感や咳、げっぷ、腹部膨満感を解消します。また、白い筋の部分には、毛細血管を丈夫にして動脈硬化を予防したり、アレルギーを予防する効果が確認されています。
みかんの薬効データ
体質 | 気滞 |
五性/五味 | 涼/甘・酸 |
帰経 | 肺・胃 |
主な作用 | 風邪予防、食欲増進、せき、腹部膨満感、動脈硬化、アレルギー |
注意点 | 特になし。 |
食べ合わせ | +鶏肉→消化促進 |
旬 |
11〜3月 |
選び方 |
皮が薄くてきめが細かく、ヘタが小さいもの |
主な栄養素 |
カロテン、ビタミンC・P、ベータ-クリプトキサンチン、リモネン |
陳皮(チンピ)
果皮を乾燥させて1年ほど経ったもの
気の巡りを高めて、消化不良と痰の多い咳を改善
爽やかな香りとほのかな苦味が特徴的な陳皮は、胃腸と肺の気の巡りを改善する効果があります。
消化吸収力を高めるので、気の滞りによる消化不良や腹部膨満感、食欲不振、吐き気、下痢を改善します。肺にたまった余分な湿気を取り除き、痰の多い咳や胸苦しさを改善する効果もあります。
みかんの皮を干した陳皮は古いほど薬効が高い
完熟したみかんの皮を干したものは、陳皮という生薬。古ければ古いほど薬効が高くなるといわれ、胃腸の働きを高めます。作り方は簡単で、
①食べる前に洗ったみかんの皮を適当な大きさにちぎってザルなどに入れて乾燥させます。
②乾燥して2〜3割り程度まで縮んだら、乾燥剤と一緒に瓶に入れて保存します。様子を見ながら時々干すと長期保存できます。
おなかの張りを解消
完熟した温州みかんの皮を乾燥させた陳皮は、生薬として用いられるほか、スパイスとして使用されます。さわやかな香りのもととなっているリモネンには、気の巡りを良くしてリラックス効果があるほか、胃腸の調子を整える働きもあります。
陳皮は布袋などに入れてお風呂に浮かべると、香りでリラックス、ポカポカと温まり、新陳代謝を高めるので、冷え性にも適しています。
また、フードプロセッサーなどで細かくしておくと、味噌汁や煮物の香り付けにも使えます。ショウガパウダーやシナモンパウダーとはちみつを合わせて、ティーとして飲むと身体が温まります。浅漬けを作るときにもおすすめ。
陳皮を手作りして、みかんの果皮の薬効まで余すところなく取り入れるためには、やっぱり無農薬のみかんが安心です。
陳皮の薬効データ
基原 |
ミカン科 Rutaceaeのウンシュウミカン Citrus unshiu MarcowczまたはCitrus reticulata Blancoの果皮 |
三品分類 | 上品、理気薬 |
代表的な成分 | エピヘスペリジン、クエン酸、シネフリン、テルピネン、ナリンジン、ヘスペリジン、リナロール、リモネン |
使用量の目安 | 1回乾燥6〜9g |
注意点 | 特になし。 |
食べ合わせ | +行った米→子どもとお年寄りの下痢 |
五性/五味 | 温/辛・苦 |
帰経 | 脾・肺 |
適応症 |
腹部膨満感、嘔吐、下痢、食欲不振、消化不良、胸の詰まり感、せき、痰 |
含まれる漢方薬 |
平胃散(ヘイイサン)、胃苓湯(イレイトウ)、温胆湯(ウンタントウ)、藿香正気散(カッコウショウキサン)、芎帰調血飲(キュウキチョウケツイン)、啓脾湯(ケイヒトウ)、香蘇散(コウソサン)、釣藤散(チョウトウサン)、通導散(ツウドウサン)など |
薬膳メモ |
みかんの季節になったら自家製陳皮を作り足していく |
焼きみかん
カラダに疲労物質がたまっていると、体調を崩しやすくなります。みかんのクエン酸で乳酸を分解し、血液をきれいにすることが、風邪の予防につながります。
【材料】
みかん・・・1〜2個
【作り方】
オーブントースターや魚焼きグリルで7~10分焼きます。
皮をむいて食べます。熱いので気をつけて!白い筋や薄皮が食べやすくなり、皮のビタミンCが実に染み込んで甘みも栄養価も増して美味しいです。食べるとカラダが冷える、冷たいから食べづらいなんて方にもおすすめです。
火の中に入れて黒焼きにしたものを熱湯に浸して、その汁を飲むのも効果があります。酸味のある温州みかんや夏みかんがおすすめです。
鶏肉とみかんのグリル
①鶏もも肉1枚を一口大に切って塩コショウを振り、ごま油大さじ1を熱したフライパンで中まで火が通るまで焼きます。
②みかんの皮(半分〜1個分)を刻んだものとみかんの果実(1〜2個分)、白ワイン(100cc)を加えて煮詰め、味を見ながら塩で整え、お皿に持って小ねぎを散りばめたら出来上がり。
薄皮も使うと、消化を助けて胃もたれしにくくなります。
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