炭水化物の真実
炭水化物とは?
知らない誰かが何かを売りさばくために言い始めたことが伝言ゲームのように広まって悪者扱いされているものは数多くあります。炭水化物もその一つです。
炭水化物を食べると太る、炭水化物には大した栄養がない、と散々悪者扱いされてきましたが、炭水化物は悪者ではないどころか、私たちに必要不可欠なものの一つです。
ステーキとレタス、どちらが私たちに力を与えてくれるか?と考えた時に、多くの人がステーキと答えると思いますが、同じカロリーで考えた時に、レタスにはステーキの約100倍のカルシウム、約20倍のマグネシウムがあり、他にも食物繊維や抗酸化物質、ミネラル、ファイトケミカルなどたくさんの栄養が詰まっています。
炭水化物は大きく糖質と食物繊維に分けることができます。糖質は炭素と水素と酸素でできた比較的単純な成分で、植物が二酸化炭素・水・太陽エネルギーからつくり出してくれるもっとも基本的な栄養素です。一番単純な炭水化物は単糖が1個のブドウ糖、果糖、ガラクトースなどの単糖類です。単糖が2個の蔗糖(サトウキビやビートからとれる)、麦芽糖、乳糖などが二糖類で、単糖が2~10個のものが少糖類(オリゴ糖)で、これらは単純糖質と呼ばれます。代表的なエネルギー源のデンプンやグリコーゲンは、もっと複雑な炭水化物で、どちらもグルコースが多数結合した多糖類です。植物は光合成によってもっとも単純な単糖をつくり、それを他の糖類やデンプンに変えて貯蔵しています。単純糖質や多糖類はまとめて糖質と呼ばれ、体内に吸収されてエネルギー源となります。
糖質を食べると、からだはそれを代謝、つまり「燃焼」させて、貯えられていたエネルギーを放出し、再び水と二酸化炭素に変えます。糖質は成分を分解してエネルギーを放出するのにさほどの工程を必要とせず、代謝の最終産物が二酸化炭素と水なので、植物にとっても動物にとっても良質で効率がいい燃料であるとともにクリーンな燃料でもあります。
糖質は豊かな太陽エネルギーから植物が最初につくる形態で、もっとも基本的な栄養素であり、からだの中で消化・分解されるスピードが早く、もっともインスタントなエネルギー源です。炭水化物は体内では、主に血液中にグルコース(ブドウ糖)の形で存在しており、組織や細胞に運ばれます。細胞の多くはグルコースによって働くことを好み、脳神経細胞のようにグルコースがなければ働かないという特殊なものもあります。
脳にとって最も速効性のあるエネルギー源はグルコースであり、グルコースを摂取することで脳に栄養が供給され、脳の活性化や疲労回復の効果があります。
体内の臓器は一般的に、グルコースという単純糖質を最も重要なエネルギー源にしていますが、実際には、脂肪、タンパク質もエネルギー源として利用しています。しかし、脳だけは例外で、脂肪、タンパク質はもちろんのこと、グルコース以外の糖質も受け付けません。さらに、脳は全重量のたかだか2%を占めるにすぎないにもかかわらず、全エネルギーの約20%を消費します。例えば、体重70kgの成人男性の脳が1日に消費するエネルギー量は、グルコースの重量に換算すると約120gです。脳は、大変な「偏食家」であり、「大食漢」でもあると言えるわけです。
では、脳はこれだけの量のグルコースをどうやって確保しているのでしょうか?
私たちがふだん口から摂取する糖のほとんどはデンプンとスクロース(蔗糖:グルコース+果糖(フルクトース))で、これが主たるグルコースの供給源です。ごはんやパンなどに豊富に含まれるデンプンは多数のグルコースが連鎖した多糖類ですが、唾液、胃液で徐々に分解され、最終的には小腸でグルコースに分解されて体内に吸収されるため、吸収されるまで時間がかかるという欠点があります。一方、スクロースはグルコースとフルクトース(果糖)が1つずつ結合したシンプルな物質で、簡単に分解できるという特性があります。小腸で消化吸収されたら、その数十秒後には血液中にグルコースが現れるほどで、スクロースは、脳に手っ取り早くグルコースを供給するのに適した食材なのです。
脳は睡眠中もグルコースを消費し続けますから、起きた直後は血糖値が低くなっています。血糖値が低い状態では脳の活動が低下することが知られていますから、朝食前に頭がスッキリしないのは血糖値が低いためです。
グリセミック・インデックスとグリセミック・ロード
グリセミック・インデックスとは食後血糖値の上昇度を示すグリセミック・インデックス(Glycemic Index)のことで、略してGI値と呼ばれています。食品に含まれる炭水化物量50gを摂取した際の血糖値の上がり方を示したものなので、たとえば100gあたり10gの炭水化物を含む食品の場合、500g食べた場合の血糖値の上がり方を示した数値となります。GI値の基準としては、70以上が高GI値、69~56が中GI値、55以下が低GI値となり、GI値が高い食材を食べると血糖値が急上昇して眠くなったり、からだが重くなったりします。反対に、GI値が低い食材を食べると血糖値は緩やかに上昇します。
血糖値というのは、血液中のグルコース(ブドウ糖)の濃度のことで、健常な人の場合、空腹時血糖値はおおよそ80-100mg/dLであり、食後は若干高い値を示します。血糖値が高すぎると高血糖に、低すぎると低血糖になります。
私たちの血糖値は、血糖値を下げるインスリン、血糖値を上げるグルカゴン、アドレナリン、コルチゾール、成長ホルモンといったホルモンによって非常に狭い範囲の正常値に保たれています。インスリンが不足したり十分に働かなくなって、この調整がうまくいかなくなることで高血糖が慢性に続く状態が糖尿病です。
GI値が炭水化物量に基づいているのに対し、グリセミック・ロード(略してGL値)は、一般的摂取する炭水化物量による血糖値の上がり方を数値化したものなので、より実用的な指数となります。なぜなら、たとえば、ホットケーキのGI値は80なので、ホットケーキは高GI値=血糖値が上がりやすく脂肪になりやすい食品です。実は、ニンジンもホットケーキと同じGI値80の高GI値食品なのです。が、GI値は炭水化物50gあたりの数値なので、ニンジンで炭水化物を50g摂取しようと思ったら、ニンジンを約5本分ということになります。1回あたりの摂取量として比較対象が何となくおかしいですよね。ニンジンジュースとして飲む際には大量のニンジンを摂取しますが、βカロチンやさまざまなビタミン、ミネラルなども摂取できるので、からだにしてみればホットケーキとはまったく別物です。
そこで、一般的な摂取量に基づいて血糖値の上がり方を数値化したのがGL値なのです。GL値の基準は、20以上が高GL値、19~11が中GL値、10以下が低GL値となります。GL値の算出方法は、
GI値×各食品摂取量あたりの炭水化物量÷100
なので、炭水化物量さえ分かれば実際に食べるものの数値を割り出すことができます。
私たちが日常的に摂取するもののGL値を算出し、GI値と比較してみました。
<主食>
食品 |
炭水化物量 |
GI値 |
GL値 |
白ごはん(150g) |
55.7 |
75 |
41.7 |
そば(乾麺100g) |
66.7 |
46 |
30.6 |
うどん(生麺200g) |
113.6 |
62 |
70.4 |
食パン(6枚切り1枚:60g) |
27.8 |
75 |
20.8 |
ライ麦パン(6枚切り1枚:60g) |
31.6 |
57 |
18 |
スパゲッティ(乾麺100g) |
73.1 |
46 |
33.6 |
<野菜>すべて100gあたり
食品 |
炭水化物量 |
GI値 |
GL値 |
アスパラガス(ゆで) |
4.6 |
25 |
1.1 |
オクラ(ゆで) |
7.6 |
28 |
2.1 |
かぼちゃ(ゆで) |
22.5 |
66 |
14.8 |
大根(生) |
4.1 |
26 |
1 |
タマネギ(生) |
8.4 |
30 |
2.5 |
トウモロコシ(ゆで) |
22.5 |
60 |
13.5 |
トマト(生) |
4.7 |
30 |
1.4 |
ナス(ゆで) |
4.5 |
25 |
1.1 |
ジャガイモ(ゆで) |
16.6 |
78 |
12.9 |
ニンジン(ゆで) |
8.4 |
80 |
6.7 |
ブロッコリー(ゆで) |
5.2 |
25 |
1.3 |
<果物>100gあたり
食品 |
炭水化物量 |
GI値 |
GL値 |
いちご |
8.5 |
29 |
2.4 |
いちじく |
14.3 |
36 |
5.1 |
温州みかん |
12 |
33 |
3.9 |
柿 |
15.9 |
37 |
5.8 |
桃 |
8.9 |
41 |
3.6 |
グリーンキウイ |
13.4 |
35 |
4.6 |
さくらんぼ |
15.2 |
37 |
5.6 |
バナナ |
22.5 |
55 |
12.3 |
ぶどう |
15.7 |
50 |
7.8 |
メロン |
10.3 |
41 |
4.2 |
リンゴ |
15.5 |
36 |
5.5 |
<甘味料>大さじ1杯あたり
食品 |
炭水化物量 |
GI値 |
GL値 |
砂糖(9g) |
8.9 |
109 |
9.7 |
グラニュー糖(9g) |
9 |
110 |
9.9 |
三温糖(9g) |
8.9 |
108 |
9.6 |
黒砂糖(9g) |
8 |
99 |
7.9 |
水あめ(21g) |
17 |
93 |
15.8 |
メープルシロップ(21g) |
11.9 |
73 |
8.6 |
純ハチミツ(21g) |
16.7 |
58 |
9.6 |
てんさい糖(9g) |
8.7 |
65 |
5.6 |
異性化糖(21g) |
15.7 |
55 |
8.6 |
アガベシロップ(21g) |
15.7 |
21 |
3.2 |
オリゴ糖(21g) |
8.6 |
10 |
0.8 |
参考:文科省|食品成分データベース、THE UNIVERSITY OF SYDNEY | Glycemic Index Research and GI News、カロリーSlism
※GL値のを求める際に、基準となるデータはまだまだ不足しており、参考値もデータによって違いがあるため、参考程度に留めておいてください。
食物繊維
食物繊維は多糖類の一種で、ヒトの消化酵素で消化されない食物中の成分の総称です。主に穀類、野菜、果物、イモ類、海藻、甲殻類などに含まれています。食物繊維の多い食べ物は自然とかむ回数を増やし、唾液の分泌を促すほか、少量で満腹感が得られ、食べすぎの防止に役立ちます。同時に、小腸での糖質の消化吸収をゆるやかにするため、血糖の上昇が抑えられて糖尿病の予防につながります。食物繊維は大腸では腸内細菌の餌となり、発酵してエネルギー源(短鎖脂肪酸)を生成するほか、腸内の発ガン性物質などの有害物を抑える有効な菌を増やします。また、便量が増え、発酵の過程で生成したガスの刺激によって排便が促されるため、便秘の予防にもなります。
食物繊維の含有量によって、消化・分解されるスピードが異なります。そのため、甘くて糖分たっぷりだからダメだ、と単純に考えてはいけません。たとえば、レーズンや白砂糖よりも1.5倍も甘さがあるアガベシロップは、甘くても食物繊維が豊富で消化・分解に時間がかかるため、GI値は低くなります。
食物繊維はさらに、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に分かれます。不溶性食物繊維は大腸まで達してもほとんど分解も吸収もされずそのまま便として排泄されるもので、セルロースやキチンなどがあります。水溶性食物繊維は小腸までは分解吸収されにくく、大腸で分解吸収されるものです。果物に多く含まれるペクチンは腸内の善玉菌である乳酸菌を増殖させて腸の調子を調えてくれます。こんにゃくの主成分であるグルコマンナンには、胃の中で水分を吸収して膨らむ性質があり、食欲を抑えるだけでなく、糖やコレステロールの吸収を抑える働きもあります。キノコ類や酵母に多く含まれるβグルカンは、多糖類の一種ですが、免疫力を高める効果や、ガンを抑制する効果、コレステロール値を下げる効果の他、腸内に存在する異物などの不要物質を排除して腸内環境を整える働きがあり、便秘予防や改善に効果があります。
日本人の平均食物繊維摂取量は、1950年頃には一人あたり一日20gを超えていましたが、穀類・いも類・豆類の摂取量の減少に伴い、減少傾向にあります。最近の報告によれば、平均摂取量は一日あたり14g前後と推定されています( s )。
厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、一日あたりの「目標量」(生活習慣病の発症予防を目的として、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量)は、18~64歳で男性21g以上、女性18g以上となっています。食物繊維は、体に絶対的に必要な栄養素ではありませんが、体の健康に深く関与する食品成分です。平均摂取量と目標量の差を見て明らかなように、食物繊維の積極的な摂取が必要です。
欧米において一日あたり24g以上の摂取で、心筋梗塞、脳卒中、2型糖尿病、乳がん、胃がん、大腸がんなどの発症リスク低下が観察されるとの研究報告があります。体内でコレステロールから作られる胆汁酸の体外(便中)への排泄を促進し、血中コレステロール値を下げます。また食後の糖の吸収をゆるやかにし、血糖値の急激な上昇を抑える作用があるためです。さらに便の量を増加させるとともに、腸内の腸内細菌のうち、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌の割合を増やし、腸内環境を良好に整える作用も知られています。
体のサインから見た食物繊維の必要量は「一日に一回、規則的に排便がある」ことがひとつの目安になります。この状態である人の排便量は、一日に約150g(見た目ではMサイズの鶏卵で約3個分)であることがわかっています。まずはこの便量を作り出すための食物繊維を食事からとれているかが重要です。
それぞれの食物繊維の特徴は以下の通りです。
不溶性食物繊維 |
|
セルロース |
代表的な不溶性食物繊維。 あらゆる植物性食品に含まれる多糖類で、繊維素ともいう。植物の細胞壁と繊維に、リグニンやヘミセルロースとくっついた状態で存在する。 分解が困難なため、逆に胃腸などの消化器官に良い影響を与える事が分かっており、生活習慣病全般の予防に役立つ。また、その特性から増粘安定剤や結着剤などの食品添加物としても使われる。 多くの植物性食品に含まれ、特に全粒穀物、小麦ふすま、大豆、きな粉、ごぼう、イモ類、海藻類などに多く含まれる。精製・加工度合いが高いほど含有量は少ない。 牛や羊には消化する酵素があるため、セルロースを栄養にすることができる。 |
ヘミセルロース |
植物細胞壁にあるセルロース以外の不溶性多糖類の総称で、半繊維素とも呼ばれる。リグニンやセルロースとくっついた状態で存在し、そのはたらきもセルロースに準じて、同じように体内をキレイにする効果がある。 セルロースとほぼ同じものに多く含まれる。 |
リグニン |
セルロースやヘミセルロースと結束して植物の細胞壁を構成しており、木質素と呼ばれる高分子化合物。多糖類ではなくポリフェノールの一種であり、体内では生活習慣病全般の予防に役立つ。 セルロースとともに植物細胞に存在しており、セルロースやヘミセルロースと同じものに多く含まれる。特に、カカオマス(ココアやチョコレートの原料)にずば抜けて多く含まれる。 |
ペントザン |
石細胞の一部で、リグニンとペントザン、リグニン、シリカ、結晶化したセルロースなどが固まって、細胞膜が白い石のようになったもの。厚壁細胞。 植物の皮などに存在し、梨の表面のジャリジャリ、マルメロ、釈迦頭、フェイジョアなどにみられる。ライ麦に多く含まれ、ライ麦粉独特の吸水力の元となっている。 胃腸で消化されず、大腸を刺激して便通を良くすることなどから、不溶性食物繊維の一種とみなされる。 |
キチン |
主にカニやエビなど甲殻類の殻に存在するムコ多糖の一種。軟体動物の殻皮やキノコなどの菌類の細胞壁にもみられる。 胃腸への働き、免疫強化、高脂血症にも役立つとされる不溶性食物繊維の一種だが、そのまま食用にされることはほとんどなく廃棄されるか、特殊な処理をして利用される。 グルコサミンはキチンを酸加水分解処理したもの。 キチンを脱アセチル化したものがキトサンで、キトサンは難溶性から一部水溶性に変化するため、キチンは不溶性、キトサンは水溶性の食物繊維と分けられる。 |
水溶性食物繊維 |
|
ペクチン |
植物の細胞に存在する複合多糖類で、代表的な食物繊維。多くの植物、特に果物の柑橘類やリンゴに豊富に含まれる。 コレステロール低下、血糖値の安定、整腸などの作用があるとされる。また、ゲル化作用があり、増粘安定剤など食品添加物としてもよく使われる。 |
ムチン |
動植物の粘性物質(粘液糖タンパク質)。ネバネバの主成分で、強い粘り気があり、保湿性も高い。ヤマイモ、オクラ、モロヘイヤなどの植物性食品、ウナギなどの魚介類のほか、ほとんどの動物の粘液に含まれる。 体内では他の食物繊維と同じように働き、胃を保護する効果も期待される。 |
グルカン |
自然界に広く存在する多糖類で食物繊維の一種。α(アルファ)型とβ(ベータ)型があり、植物、菌類などに含まれるβグルカンの機能性に注目されている。 霊芝やアガリクスの主成分で、マイタケなどのキノコ類や海藻などに含まれており、抗ガン、制ガンの他、食物繊維独特の整腸作用や血液浄化にも役立つとされる。 |
グルコマンナン |
こんにゃくの主成分でコンニャクマンナンとも呼ばれる多糖類。針葉樹の細胞壁にも存在する。 食物繊維としての働きのほか、胃の中で膨張するためダイエット食品としても利用されている。昔からこんにゃくは体内を掃除することが伝承されている。 |
イヌリン |
植物に含まれる多糖類。キクイモやごぼうなどに多く含まれる。 低カロリーの等として注目されており、砂糖、小麦粉、脂肪などの代用として使われる。 血糖値安定、カルシウムやマグネシウムの吸収を良くする、整腸作用、腎機能を高める、利尿作用などがある。 サツマイモなどと同じように体内でガス化する。気になる場合は摂取量を徐々に増やして慣らしていく。 |
ラミナラン |
海藻やキノコに含まれる多糖。キノコ類とは違うβグルカン一種。 アルギン酸、フコイダンとともに、昆布のぬめり成分として知られ、水溶性食物繊維の機能をもつ。 |
フコイダン |
昆布やわかめなどのぬめり成分に含まれる硫酸多糖。 デトックス効果、ガン予防、高血圧、動脈硬化の予防、健胃作用などがあるとされるが、ヒトでの研究は乏しい。 |
アルギン酸 |
フコイダン、ラミナランとともに昆布などの海藻に含まれる多糖類。水溶性食物繊維としての効能は認められており、トクホの健康食品などに使われているほか、ゲル化剤、安定剤、増粘剤などいろいろな添加物として広く利用されている。 多くはアルギン酸ナトリウムだが、略してアルギン酸と呼ばれている。 |
ポルフィラン |
スサビノリ、浅草海苔などの赤みを帯びた海苔に含まれる硫酸多糖類。 海苔を紫外線や渇水から守る役目をしている保水性がある糖で、コレステロール低下や免疫活性の効果が認められている。 |
カラギーナン |
ツノマタなど海藻に多く含まれる多糖類。 ゲル化剤のアガーとして知られており、ゼラチンや寒天などと同じように使われる。増粘剤、安定剤として利用されるほか、さまざまな分野で広く活用されている。 |
アガロース |
天草などから作る寒天の主成分である多糖。 寒天は昔から料理に使われてきたが、現在では質の高い水溶性食物繊維として広く認知され、健康目的での利用が増大している。 |
キトサン |
エビやカニの甲羅の成分であるキチンを、脱アセチル化させて得る多糖類。 キチンは不溶性だが、キトサンは可溶性のため水溶性食物繊維とされる。 健康食品、増粘性の食品添加物のほか、医療、工業の分野でも幅広く利用される。 |
ガラクタン |
寒天、里芋のぬめり成分に含まれる多糖類。 食物繊維としてさまざまな効果があるとされているが、ヒトでの研究は乏しい。 |
糖質
糖質は、消化や代謝によってグルコースに分解されることで、私たちのエネルギー源となります。グルコースがなければ私たちはあらゆる活動を行うことができなくなってしまいます。
デンプンなどの多糖類は準インスタントエネルギー源です。植物も動物も、多糖類からエネルギーを取り出すためには、まずはそれをグルコースに分解しなければなりません。人間の歴史的に糖類が簡単に手に入るようになったのはつい最近のことで、炭水化物は農耕の発明以来、一貫してほとんどの文化の中心的存在であり、人間の食生活の主役でした。米、小麦、トウモロコシ、豆類、ジャガイモをはじめとする根菜塊茎類、パン、パスタなどの『農民食』である炭水化物が、栄養と慰めを与えてくれていたのです。
今世紀になると、炭水化物の糖質は虫歯や抑うつにいたる膨大な病気の原因として非難の集中砲火を浴びることになりました。利権に絡む新たな食品が次々と出現するのと同時に、炭水化物は栄養が少なく、肥満のもとになる食べものだというメディアからの情報が流通し、多くの人がその情報を鵜呑みにすることとなりました。パスタをイメージすると、あなたの頭の中にも何となく、でっぷりと太ったイタリアの農民が浮かんでくるのではないでしょうか?
メディアは利権がらみの専門家などを通じて、脂肪やタンパク質に比べるとあまりにも安価であることが、炭水化物の精製糖(白砂糖)や精製粉(白い小麦粉)が『空(エンプティ)カロリー』で不要なものであることを裏付けていると主張し、多くの人はその情報をしっかりと刷り込まれていきました。
しかし、最近になって、『炭水化物は、美味しく、消化吸収しやすく、効率の良いクリーンなエネルギー源である』として炭水化物に関する見解が見直されるようになりました。
炭水化物が肥満のもとになるのは、①脂肪と一緒に食べる ②運動をしない という2つの条件のいずれかがついた時だということが分かってきたのです。
海外のあるパスタの箱にはこんなことが書いてあります。
「パスタ・・・・なぜ肥満のイメージと結びつけるのでしょう?カロリーの摂りすぎを気にせずに美味しいものが食べたい。それならパスタです!そう、パスタはダイエット食品なのです。一食分わずか210カロリー、しかも脂肪はゼロ」
ところが、その隣には「チーズパスタのつくり方」というレシピが載っていて、その材料は
パスタ1ポンド(約453g)にバター大さじ6、ハーフアンドハーフ(ミルクと生クリームが半量ずつ配合されたコーヒー用のミルク。脂肪分10~18%)3.3カップ、ハイファットチーズ(高脂肪チーズ)1ポンド
というもの。
私たちの味覚はこのように、『炭水化物と脂肪のコンビネーション』を好むように慣らされてしまっています。パンの中身だけでなく表面にもバターを塗り、ポテトにはバターやサワークリーム、マヨネーズを添え、パスタソースはバターとクリームと油を組み合わせています。そのような組み合わせでは当然カロリーも高くなり、食べ過ぎれば太るのは当然のことなのです。
よくからだを動かす人が、あまり脂肪分を摂らずに炭水化物を食べる習慣をつければ、相当量を食べても特に心配いりません。炭水化物から生じるカロリーはエアロビクスなどの有酸素運動によって簡単に燃焼してしまいます。主食は玄米や全粒粉、ライ麦やトウモロコシ、豆類、ジャガイモやサツマイモなどの根菜類などの複合炭水化物にするべきであり、その割合は全消費カロリーの40~50%にするのが望ましいとされています。
白い小麦粉や白米のような精製炭水化物も、全粒粉や玄米と同じくすぐれたエネルギー源です。複合炭水化物と違うのは、重要な繊維質であるふすま、ビタミンをはじめとする各種の栄養素が含まれている胚芽が、精製の過程で失われているという点です。良質の無漂白小麦粉でできた白パンを、他の全粒食品と一緒に食べるなら問題ありません。玄米と一緒にさまざまな国のいろいろな種類の白米を混ぜたり、全粒粉のパンと良質のフランスパンなど、いろいろな種類を愉しみながら食べると良いですね。
<多糖類と単純糖質の違い>
デンプンなどの多糖類とグルコースなどの単純糖質(糖分)の違いは、多糖類は、からだがそのカロリーをうまく蓄積して必要な時にグルコースに変えることができますが、糖分はからだに入るとすぐにエネルギーになってしまうため、その配分や蓄積のコントロールが難しいということころです。糖分が多い食生活をしている人の多くは、エネルギーの素早い『ラッシュ』(急激な増加)と、それに続く無気力や抑うつへの『クラッシュ』(墜落)という症状を訴えています。甘いものを食べるとぐたっとして眠くなるというクラッシュだけを感じる人もいます。糖分の摂取をやめると気分の高揚が途切れてしまうという人もいますし、子どもに糖分を与えるとハイパーアクティブ(過活動)になり、制限したりやめさせたりすると落ち着いてくると断言する親もいます。
私たちのからだは、ひとりひとり異なります。糖分をきれいに処理できる人もいれば、できない人もいます。処理できない人の場合、そこで生じる症状はアルコールから生じる症状の経度なものと似ています。アルコールは薬物であり、また食物でもあります。からだはアルコールを炭水化物として代謝する際、燃焼が急速なため、組織や器官に大量のカロリーを放出します。ノースカロライナ州の伝説的なバンジョー奏者であり、シンガーソングライターであり、有名なウイスキー愛好家でもあったチャーリー・プール(1892~1931)は、ウイスキーのことを『ヘビー・シュガー』と呼んで生涯手放しませんでした。彼は、アルコール依存症から合併症を起こして39歳で亡くなっています。
今日では、『デザートは別腹』、スイーツ男子、コンビニスイーツなどといって語るのが一種のファッションのようになっています。一部の人は「砂糖は食べものと考えるべきではない。砂糖は薬物だ」と主張しますが、砂糖嗜癖も他の食物嗜癖とそれほど変わらず、『ある人には薬物に似た作用をおよぼす食物』といえます。何にせよ砂糖はもっとも即効性があり、力のつく栄養源であり、強力な快楽のもとであることは事実です。
そして糖分が歯に悪いことは明らかです。糖分は虫歯の原因となる細菌の大好物なのです。その点からいえば、同じ糖分でも質のいいものと悪いものがあります。ハチミツはベタつくという点では歯には良くありません。チョコレートは細菌がエネメル質に付着するのを防ぐような成分が含まれているため、それほど悪くないものもあります。糖分の多い食生活を続けると、特に女性は酵母菌感染(カンジダ症)にかかりやすくなり、ある種の関節炎やぜん息を悪化させ、血清脂肪(中性脂肪やコレステロール)を増加させます。
これほどからだに良くない糖分を、なぜ私たちはこれほどまでに好むのでしょうか?
遠い祖先たちが狩猟採集生活をしていた頃は、糖分は熟した果物や蜂の巣ぐらいのものでした。糖分は即席エネルギーなので、それらを好んで食べた者の方が、生存に適した行動がとれ(サーベルタイガーから逃げおおせたり、戦って勝ったりして)その遺伝子を子孫に遺すこととなりました。生理学的にも立証されている人間のからだに備わったシステムとして、好物を見たり食べたりすると、脳内で『オレキノン』という化学物質が分泌されます。オレキノンが分泌されると、摂食中枢が刺激され、胃のぜん動運動が起こり、胃の内容物が腸に押し出されるようになります。その結果、胃に空間ができて、仮にお腹がいっぱいだったとしても、もう少し食べられる余裕が生まれるのです。ただし、この現象は、そもそも甘いものが苦手な人には起こりません。この不思議な現象は、次にいつ食べものが手に入るか分からない時代に、飢餓に耐えるためにできたシステムと言われています。
この飢餓に耐えるためにできたシステムが、今、人類に対して脅威になっています。『飽食』と呼ばれる時代になり、好きなときに好きなだけ食べられるようになった現代でも、このシステムの働きによってさらに甘いものを食べすぎてしまい、健康に悪影響を及ぼしているのです。
甘いものに目がなく、どうしても食べすぎてしまうという人にどんなものを食べているのかを聞いてみると、アイスクリームだったりケーキだったり、クッキーだったりします。それらは単に甘いだけでなく、砂糖と脂肪の組み合わせであり、とても誘惑的であり、カロリーの宝庫であり、糖尿病のおもな原因になるものです。ドライフルーツや飴、フルーツシャーベット、混じりけなしのメープルシュガーなど、脂肪ぬきの糖分だけで甘い物嗜好を満たせるようになるだけでも、いくらか危機を回避できるはずです。
一方、砂糖を悪の権化のように避難する人は、サトウキビのふるさとであるインドではそれが最高位の評価を受け、さまざまなサトウキビ製品がすぐれた食物兼医薬として、古代の聖典に記されていることをご存じないでしょう。意識的に(感謝して、自分を褒めたい時のごほうびとして)賢く適量を食べ、食べた後にはすぐに口をすすぐなどの適当な対応をする限り、砂糖は食生活に色を添える喜ばしい食べものでもあります。
代謝という観点からいえば、どんな形態であれ、糖分は糖分でしかありません。黒砂糖、ハチミツ、糖蜜、メープルシロップが白砂糖よりも特に優れているわけではありません。ただ、不純物として多少のミネラルを含み、香味が強いので、無意識に白砂糖を使うよりは使用量が控えめになるという利点があるぐらいのものです。
甘いものは人間の心理と密接につながっています。私たちは子どもの頃から、いい子にしていれば(嫌いな野菜を食べれば)、甘いものがもらえると教えられてきました。今日では多くの加工食品の中に、食べやすくするために大量の砂糖が入っています。ケチャップ、ソース、ピクルスなどの香辛料にも、ソフトドリンク類に劣らず大量の砂糖が使われています。精糖産業は「小さじ1杯の蔗糖はわずか18カロリーしかない」といいますが、ほとんどの料理は小さじどころか、何カップもの砂糖が使われています。フルーツ、フルーツジュース、デザート、スナック、加工食品、レトルト食品などを含めて、自分がどれぐらいの糖分を摂取しているかを調べてみるととても恐ろしい結果が待ち受けています。『砂糖断ち』をしてみると、その常習性の強さを実感することができます。抑うつ傾向のある人、気分が変わりやすい人、エネルギーレベルが変わりやすい人は、無意識のうちに糖分に影響されていたことがよく分かるでしょう。
摂るべき炭水化物とは?
炭水化物にはいろいろな種類があり、私たちのからだに必要不可欠で、すべてが悪者ではありません。炭水化物は私たちの細胞のあらゆる活動にとってのエネルギー源です。しかし、やはり悪者の炭水化物も存在します。
それは精製・加工された炭水化物です。
加工された炭水化物というと何が思い浮かぶでしょうか?白米、小麦粉、そしてそれらを使った麺やパン、ケーキ、クッキー、キャンディ、加糖飲料、コーンフレークなどが加工された炭水化物です。ソーダなどの炭酸ジュースには1缶(360ml)あたり小さじ12杯、1.5Lのペットボトルには小さじ32杯の砂糖が入っています。これらはGI値も高く、血糖値が急激に上がるため、食後に眠くなったり、からだが重だるくなったり、頭がボーッとしたり、疲労を感じたりします。
炭酸飲料にはリン酸が多く含まれており、リン酸は私たちのからだの骨や他の細胞からカルシウムを押し出す作用があるため、炭酸飲料を日常的に飲むことは骨粗鬆症の要因となります。
さらに、最近ではあらゆる商品にビタミン○○配合、ミネラル強化、など何らかの成分が追加されていることがパッケージに書かれているのをよく見かけます。
[gallery type="columns" columns="2" size="full" ids="4850,4858"]
たとえば玄米を加工した白米は、玄米から、ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富な果皮、胚芽、糠などの身ぐるみを剥がして胚乳だけになったものです。
玄米には白米には含まれない抗酸化作用が強いビタミンEが100gあたり0.5mg、ビタミンB1は0.41g(白米の5倍以上)、鉄は2.1mg(白米の約3倍)、葉酸は10μg(白米の3倍以上)、食物繊維は白米には不溶性食物繊維が0.3gしか含まれないのに対し、玄米には不溶性食物繊維2.5g、水溶性食物繊維が0.5g含まれています。
食べにくいとされる玄米ですが、私たちが健康を保つために必要とされる栄養素のほとんどを摂取できる完全栄養食品とも呼ばれており、圧力鍋や最近の高機能炊飯器では簡単に美味しく炊くことができます。
小麦粉も、全粒粉から食物繊維である表皮や、タンパク質、ビタミン、鉄分などを含む胚芽を取り除いたものです。これらも比較してみるとその栄養価には大きな差があります。
引用元:栄養成分ナビゲーター
また、アメリカで全粒粉として売られているものには、砂糖を焦がしたものを加えて香ばしそうな色をつけたものや、オガクズを高繊維のセルロースとして混入したものが出回って問題になったこともありました(s)。
わざわざ一旦身ぐるみを剥がして、後から化学合成されたビタミンや葉酸を配合して高値で売られているものよりも、玄米や全粒粉のままの方がよほどバランス良く自然で、消化吸収しやすい形で栄養価を摂取することができます。
加工された炭水化物はからだを酸性に傾けたり、免疫力を低下させたり、栄養分がほとんどないだけでなく、脂肪分として蓄積されやすいため太りやすくなります。このような話をきくと、加工された炭水化物は控えようと思いますが、そうはいっても加工された炭水化物(ラーメンやケーキ、丼もの、パン、パスタ、お菓子などなど)はとても美味しくてどうしても食べたくなることがあります。無理に我慢してストレスまみれになってしまっては元も子もありません。
<血糖値が急激に上がるのを防ぐ2つの方法>
1つ目は、よく噛んで食べることです。よく噛んで食べることで食事時間が長くなり、からだの中の消化・吸収の働きが分散されることで血糖値が急激に上昇するのを防ぐことができます。唾液も多く分泌されるため、唾液に多く含まれるアミラーゼという炭水化物分解酵素によって口の中で分解が進むため、胃や膵臓などの負担を軽くすることができます。また、時間をかけてゆっくり食べることで満腹中枢が刺激されるため(食べ始めから約20分)、食べすぎの防止にもなります。
2つ目は、繊維を多く摂ることです。繊維が多いことで消化や分解に時間がかかるため、炭水化物の吸収に時間がかかり、血糖値が急激に上がるのを防ぐことができます。食事に繊維が含まれていない場合や繊維量が少ない場合におすすめのものは、オオバコ、ノパルサボテン、コンニャクマンナン(グルコマンナン)、フェヌグリーク、ギムネマ・シルベスタなど。これらを摂取することでからだが脂肪を蓄積しにくくなりり、血糖値が急激に上昇するのを防ぐことができます。
甘味料
現代では、甘味料もさまざまなものがあります。蜂蜜やメープルシロップなどの天然の甘味料はからだに良いと思われがちですが、ミネラルなどに多少の違いはあっても体内では糖分として白砂糖などと同じように使われます。
<糖アルコール>※お酒ではありません。
マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトールなどの糖アルコールは味に甘味はあってもからだの中に吸収されないため、GI値もカロリーもほぼ0で、からだへのダメージが少なく、糖尿病の方の糖分の代替品として使われています。糖アルコールは値段が高いことと腸へのストレスが懸念されるものの、エリスリトールはメロン、ブドウや梨などの果実や醤油・清酒などの発酵食品に含まれる天然の糖アルコールで、白砂糖の70%の甘みがあり、血糖値に左右することも虫歯の原因となることもなく、他の糖アルコールに比べて比較的腸への負担が少ないとされています。
<アスパルテーム>
アスパルテームやスクラロースは完全人工甘味料です。カロリーゼロとして市場に出回っているものの多くにこれらの人工甘味料が使われています。砂糖と同じ甘味があり、カロリーも副作用もないと大々的に取り扱われていますが、発ガン性や盲目の原因となることが分かっています。アスパルテームはL-フェニルアラニン化合物と表示されることもあります。天然には存在しない化合物で、小腸でフェニルアラニン(50%)とアスパラギン酸(40%)というアミノ酸と有害なメタノール(10%)に分解されて吸収され、通常のアミノ酸と同じようにタンパク質に合成されたり、脱アミノ化された後にエネルギー源として分解されたりしますが、それぞれの成分に健康被害への疑念があります。
■メタノール
メタノールは猛毒です。飲むと失明、最悪の場合は死に至ります。第二次世界大戦後、物資が不足した日本では、酒の代わりに飲まれた事例もあったそうです。闇市での密造酒はバクダンと呼ばれていたとか。メタノールは「目散るアルコール」と呼ばれ、「絶対に飲んではいけない」と理科の先生から教えられたものです。
この現代でも、世界中でメタノール入りの酒により、集団で命を落としたというニュースを見聞きします。2020年3月、イランでアルコール摂取が新型コロナウイルス感染症治療の一助となるとの噂の後、密造酒を飲んでメタノール中毒で死亡する者が続出。2月以降にメタノール中毒で病院に運ばれた人が5000人以上、うち525人が死亡したとのことです(2020年4月27日、イラン保健省)。
メタノール(methanol)はアルコール脱水素酵素によってホルムアルデヒドに、次いでアルデヒド脱水素酵素によって蟻酸(ギ酸)に、最終的には二酸化炭素と水に代謝(解毒)され体外に排出されます。代謝中間体のホルムアルデヒドと蟻酸に毒性があります。メタノールは無色、無味・無臭でお酒に混ぜても、そうと分かりません。飲んだ当日は普通のお酒を飲んだと同じような状態で、早ければ翌日位から蟻酸による症状が出てきます。
ホルムアルデヒド(formaldehyde)は刺激臭のある無色で可燃性がある気体です(化学式:CH2O)。ヒトの粘膜を刺激するため、目がチカチカする、涙が出る、鼻水が出る、のどの渇き・痛みやせきなど、シックハウス症候群の代表的な原因物質です。水に溶けやすく37%以上の水溶液はホルマリンと呼ばれ、生物標本の製造に用いるほか、消毒・防腐剤、写真フィルムや乾板製造などに広く用いられています。しかし、体内ではホルムアルデヒドで存在する時間は短く、すぐにアルデヒド脱水素酵素により蟻酸に代謝されます。
蟻酸(formic acid)がメタノール毒性の原因物質です。視神経に直接働いて脱髄を起こしたり、ミトコンドリアの電子伝達系に関わるシトクロムオキシダーゼを阻害したりするために、視神経毒性が現れるといわれています。なぜ目だけに症状が強く現れるかというと、網膜にはビタミンA(レチノール)をレチナールに酸化するためのアルコール脱水素酵素が豊富に存在しており、メタノールを飲んだ場合には網膜でホルムアルデヒド、蟻酸が大量につくられるためです。また、蟻酸の影響でアニオンギャップが開大する代謝性アシドーシスが起こってきます。
メタノールは新鮮な野菜や果物など自然界にも存在します。しかし、ごく微量のため人体に害はないとされています。アスパルテームに含まれているメタノールも野菜・果物より少量のため人体へ直接的な害はないとされています。しかし、注意をするに越したことはありません。
■アスパラギン酸
アスパラギン酸(aspartic acid)はアスパルテームの40%を占める非必須アミノ酸の一つです。「興奮性神経伝達性物質」とよばれ、神経から神経への情報の伝達の介在をします。しかし、過量だと「興奮毒」として神経細胞に障害を与えてしまいます。
アスパルテームは成分としてアスパラギン酸だけでなく、メタノールも含んでいます。そして、アスパルテームの分子特性上、メタノールとアスパラギン酸がそれぞれ単独で存在しているより500~5000倍も毒性作用を高めてしまうという説もあります。
■フェニルアラニン
フェニルアラニン (phenylalanine)は神経伝達物質の一つで、脳内でドーパミン、ノルアドレナリンに合成されます。ドーパミン、ノルアドレナリンは脳を大いに覚醒し、幸福感を与えるホルモンです。いずれもヒトの体内にあるものではありますが、フェニルアラニン単体で摂取すると脳細胞を過剰に刺激し、時に死に至るほどの興奮性毒となり得ます。つまりは、摂取するだけで強制的に「ハイ」になってしまうわけです。さらにその影響からか症状として脳障害や頭痛、躁鬱、不眠症、知能低下など脳への影響が懸念され、間接的に皮膚や血液のガンなどが増えるという研究結果もあります。また、暴力性が高まるともいわれています。
これらの研究対象はほとんどラットであり、投与量も多過ぎると指摘する声もあります。しかし、アスパルテームのような合成甘味料を「長期間、大量に摂取した人間への影響」はこれから検討されるべき課題です。しかし、動物で危険性が指摘されている以上、避けるのが賢明ではないでしょうか。
<スクラロース>
スクラロース(sucralose)はショ糖(砂糖)の600倍の甘さを持つ人工甘味料です。蔗糖に有毒の塩素を反応させた有機塩素化合物で、農薬(殺虫剤)を開発するための実験中に偶然発見されました。消化管で消化・吸収されずにそのままの形で便として排泄されるため、カロリー(エネルギー)はゼロで、摂取しても血糖値は上がらないとされて、コーラなどの清涼飲料水、アイスクリーム、ガム、デザート、ドレッシングなどあらゆる低カロリーを売り物とする商品に使われていますが、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会資料のスクラロースの体内動態に関する報告から10~30%が尿として排泄される(消化管から吸収されている)ことと、肝臓や腎臓から(脳からも少量)スクラロースが検出されていることから、体内で分解・吸収されて血液を通じて全身の臓器に存在することが推測されています。
さらに2018年のラットによるこちらの研究では、スクラロースの代謝産物が脂肪組織に蓄積されていたことが確認されています。しかし、大きな利権が絡んでいるためか、これらは非科学的思考として見てみぬフリをされたまま、私たちの身近な食品に使われています。詳しいメカニズムが判明していなくても有毒の有機塩素が含まれている時点で摂取は避けなければなりません。
<ローハン(羅漢)、ステビア>
ローハンは羅漢果という果物とキシリトールが成分の甘味料です。羅漢果は中国南部の山で栽培されるウリ科ラカンカ属の多年生植物の果実で、果実から抽出される甘い果汁のモグロサイドは、血糖値に影響することのない甘味があります。モグロサイドは砂糖よりも250倍の甘さがあり、キシリトールは砂糖と同様の甘さですがカロリーは40%オフです。キシリトールは、天然に存在する炭水化物の一種のポリオールによって、口の中ではハッキリした清涼感のある甘味を感じます。
ステビアはキク科の植物で、南アメリカのパラグアイとブラジルの国境付近に自生しています。ステビアは154種類もの種がありますが、甘味があるのはたった1種類で、正式名称はステビア・レバウディアナ・ベルトニー。ステビアの甘味料としての歴史は古く、南アメリカのパラグアイでは6世紀からマテ茶(コーヒーや紅茶とともに世界三大飲料の一つ)の甘味料として楽しまれていたそうです。ステビアは砂糖の約200倍の甘さがあるため、少量で十分な甘味を味わうことができます。ステビアの甘味は糖質ではなく配糖体(糖と糖以外のものがくっついたもの)なので、糖質はゼロです。長い歴史のある甘味料であり、日本では正式に認可されていますが、アメリカではしばらくの間安全性が認められず、アスパルテームなどの使用が過度に推奨され続けていました。
<異性化糖(HFCS)>
異性化糖は、果糖またはグルコース(ブドウ糖)主成分とする糖で、サツマイモやトウモロコシ、ジャガイモなどのデンプンを酵素で糖化した後、その一部を別の酵素で異性化させたものを主成分とする高果糖コーンシロップ(液体甘味料)のことで、含まれる果糖が50%未満のものはブドウ糖果糖液糖、50%以上90%未満のものは果糖ブドウ糖液糖、90%以上のものは高果糖液糖と分類されています。また、それぞれの液糖に10%以上の砂糖を加えたものは砂糖混合異性化液糖(その液糖がブドウ糖果糖液糖なら砂糖混合ブドウ糖果糖液糖)と呼ばれています。
果糖やブドウ糖という名前から良いイメージを持つ人もいますが、不自然に分離・加工された異性化糖を摂取しても私たちの体内ではうまく消化も分解もできず、エネルギーに変換できないため、からだにはとても負担がかかります。大部分は腸からそのまま吸収されて直接細胞の中に入りますが、グルコースのようにインスリンが関与することはありません。そして、こちらの研究でグルコースの10倍以上も糖化(タンパク質を変性、劣化させて結びつき、タンパク質本来の働きを阻害する)を早めることが分かっています。
つまり、10倍以上の早さでAGEs(終末糖化産物)を生成するということです。AGEsは血管を傷つけ、老化だけでなく骨粗鬆症、動脈硬化(心筋梗塞・脳梗塞)、ガン、白内障、認知症など多くの病気の原因となります。
AGEsに関する詳細記事はこちら
残りの果糖は肝臓に入り、肝臓内の酵素の働きで、一部はグリセリドという脂肪に変化し、さらに一部はグルコースへと変化します。グリセリドは内臓脂肪として蓄積されやすいため、肥満の原因ともなります。
また異性化糖は、レプチンという食欲抑制ホルモンやグレリンという食欲増進ホルモンなどの働きに作用しないため、食べすぎてしまい、たくさん食べても満足感が感じられない状態になり、結果的に甘味依存症となってしまいます。
果糖は果物に多く含まれているから良いものと思われがちですが、実は果物そのものの果糖含有量はそれほど多くありません。しかも、さまざまなビタミンや食物繊維も豊富に含まれているため、食べ合わせに注意して適量をゆっくり食べればまったく問題ありません。
<食品業界の罠>
人間の舌は、甘味、塩味、酸味、苦味、旨味という5つの味覚を察知することができますが、糖分(甘味)は残りの4つの味覚の欠点を補うことができます。糖分を多めに使うと大抵のものが美味しくなるため、食品業界ではこの仕組がふんだんに使われています。
糖分を加えて焼いたものは視覚的にそそられるような褐色の焼色がつきますが、これはメイラード反応というもので発ガン性があるため、私たちのからだにとっては害になります。糖分をふんだんに使うことで、ケーキが膨らみ、アイスはなめらかになり、グミには高密度の粘性を与え、飴にはガラスのような見た目とバリバリ噛める食感を生み出し、食品の水分活性を下げて腐りにくくするため保存料ともなります。また、保水性を高めるために焼き菓子などが固くなってしまうのを防ぐこともできます。
食品業界の繁栄のために必要な大量の糖分ですが、異性化糖はどの糖分よりも安価であり、液体で扱いやすいため、この国でもその使用量は年々増加しています。
引用元:農林水産省|令和3砂糖年度における砂糖及び異性化糖の需給見通し
米国では、さまざまな補助金や有利な関税の設定によって、異性化糖は11兆円もの大規模な市場となっており、今後もさらにシェアを広げる動きが見られています。
世界保健機関が2015年に発表した「成人及び子どものための糖類の摂取に関するガイドライン」では、肥満や虫歯の予防のために、砂糖などの糖類の摂取量は総摂取カロリーの5%までにした方が望ましいとされています。
大人一日の総摂取カロリーを2000キロカロリーとすると、5%は100キロカロリーとなり、砂糖では25グラムに相当します。
この25グラムはとても少ない量です。例えば、一般的なコーラ飲料350ミリリットル缶には約40グラムの砂糖が含まれているため、一本で一日の推奨限度を軽くオーバーしてしまうことになります。
また、一般的なスポーツドリンクでも500ミリリットルのペットボトル一本に約30グラムの砂糖が含まれています。
農林水産省の「砂糖及び異性化糖の需給見通し」によると、私たち日本人は一日に平均42.5グラムの砂糖17.7グラムの異性化糖を消費しています。つまり、世界保険機関の推奨値を大幅に上回る糖類を毎日摂取しているというわけです。
世界保健機関は砂糖や異性化糖の摂り過ぎを抑えるために、これらが入った飲料などに税金をかけることを推奨しており、2011年にはフランス、2014年にはメキシコ、2017年にインドとタイ、2018年にはイギリスとフィリピンが導入するなど、世界的に「砂糖税」の導入が進められています。
このように、砂糖と異性化糖の過度な摂取が健康をおびやかすことは、世界中の常識になりつつあるのです。
さらに、繊維が含まれると食品の保存期間が短くなるため、食品業界では食べものから繊維を取り除きます。スーパーなどに売られている繊維が取り除かれたパンは、手作りしたものよりもずっと長持ちします。食品業界はこの点も存分に利用し、減価償却率の低下=コストが抑えられ、売上増加につなげています。
また、食物繊維が含まれたものを冷凍すると質感が変化します。ファーストフード店では食物繊維を除くことによって、冷凍して世界中に輸送し、すぐに調理することができるのです。そして、食物繊維が取り除かれているそれらの食品を食べても満腹感を得られないため、多くのものを購入しては食べすぎてしまい、からだは必要な栄養素が不足し、高インスリン血症、肥満、メタボ症候群などの原因となっているのです( s )。
炭水化物のまとめ
・GI値の高いものは摂らない。GI値やGL値を意識する。
・加工された炭水化物はなるべく摂らない。どうしても摂りたい場合は、良質の食物繊維(オオバコやノパルサボテンなど)を一緒に多めに摂取する。
・穀物は、玄米、キヌア、アマランス、大麦、小麦などの全粒穀物を取り入れる。
・清涼飲料水の多くはほぼ砂糖水である。カロリーゼロのものは、白砂糖を含むもの以上に有害である。
・異性化糖は清涼飲料水だけでなく、ドレッシングやタレ類、調味料など多くの身近なものに大量に使われている。まだ分かっていないさまざまな危険性がある人工甘味料や異性化糖、これらが含まれるものは摂らない。
・ただし、食事はただ単にからだを作る栄養を摂るだけでなく、私たちの楽しみの一つでもあります。我慢してストレスを溜め込む方がからだに良くないということを念頭において、楽しみながら健康なからだを作っていきましょう♪
]]>
コメント