水道水へのフッ素添加【水物語02】

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 水道水へのフッ素添加    01.16.2011

年賀状、および、1月9日にお知らせしましたように、Facebookに「環境学ガイド」というグループを作りました。意見を述べた人が特定できるクローズドなグループで、色々と議論をしてみたい。これが目的です。  今回の記事は、このグループに提出された疑問が発端となり、その後、グループ内での議論が進行しました。なかなか面白い話題だと思って、さらに調査を行って、記事にしたものです。  このグループの中での議論に興味がお有りでしたら、本HPのTopPageにあります「ご案内」から”2)参加募集 意見交換グループ”を選択し、インストラクションに従って操作をして下さい。お申し込みには、なるべく、速やかに対応したいと思います。
 一応、100名程度を目安として居りますして、現在、約50名のメンバーが登録されております。 C先生:Facebookの成果第一弾、ということかもしれない。今回のテーマは、水道水にフッ素を添加するということをどう見るかということ。 A君:水道へのフッ素添加の目的は、虫歯予防。かなり長い歴史があり、虫歯予防にもある程度有効だということが知られているのですが、最近、取り止める国が増えている状況です。 B君:フッ素添加の国による状況を知るには、英語版のWikiが良いようだ。
http://en.wikipedia.org/wiki/Fluoridation_by_country
 Wikiによると、香港、シンガポールは、水道水の100%がフッ素添加。オーストラリア、ニュージーランドもほぼフッ素添加。ヨーロッパでは、アイルランドは71%がフッ素添加。英国は10%を程度とのこと。米国は67%。 A君:香港などフッ素添加をした国では、虫歯の発生はかなり減ったという評価になっている。しかし、スウェーデンでは、一時期フッ素添加が行われていたが、その後、議会がそれを禁止した。1981年に最終報告書が出されて、その結論は、「水道水にフッ素を添加するよりも、食べ物を改善したり、口腔内の衛生状態を改善したりする良い方法がある。水道に添加することは、個人の選択の自由を損なうし、子供への影響にも一部不明なところがある」、ということだった。 B君:最近ではミネラルウォータを飲むという人も多いが、まあ500mlぐらいまでとすれば、1日の水の摂取量の1/4ぐらい。3/4の水は、料理などから摂取される訳で、選択の自由がある程度は損なわれている。
A君:それにしても、スウェーデンがフッ素添加に対する考え方を何回も変えて来たことが面白いですね。 C先生:スウェーデンやフィンランドなどでの口腔内衛生の意識は大変高い。また、砂糖のかわりにキシリトールを使ったりして、健康な歯への意識が高い。
 個人的なことだが、最近、通う歯医者を変えた。それは、これまでの歯医者がインプラントを露骨に奨めるようになったから。実は、インプラインの工事中の歯が1本あるのだが、それ以上やる気は無いので、行くのを止めた。
 知人からの紹介によって、元某国立大学歯学部の教授で、厚労省の委員会などのメンバーという歯科医に面倒を見てもらっている。この歯科医によれば、インプラントは、衛生上の管理がさらに難しいとのことだ。
 この先生の言葉だが、「日本人の口腔内衛生に対する感度は低すぎる。口が臭い人、特に中年以上の男性が問題だが、先進国としては非常に多い。これは恥ずかしい状況だと言える」。
 「最近スウェーデンなどの北欧諸国では、最近、虫歯が減って、歯医者がバタバタと廃業している」。
 このような話を色々と聴いてみて、これまで正しいと考えていた歯の磨き方が、実は、根本的に間違っていることを知った。これまでも歯ブラシの角度だとか、動かし方だとかを習ってきたが、この先生によれば、若い間はそれでもある程度キレイになるが、年をとると歯ブラシだけではキレイにならない。フロスを併用すべきだ。
 そして、推薦されたフロスが、ライオンDent.EXのウルトラフロスというもの。これを使うと、歯が確かにキレイになったと感じて、大変気持ちが良い。
 このウルトラフロスは、高密度ポリエチレンの繊維を使いやすい形のY字型ホルダーにつけた物。
 まとめ買いをすれば、10本で450円程度で買えると思うが、普通の店にあるのかどうかやや疑問。通販なら確実。 A君:さて、これも重要な情報ですが、元に戻って、どうしてフッ素を水道水に添加するといった発想が出てきたのか、ということから始めますか。 B君:いや、スペースが無駄なので、Wikiで「水道水フッ化物添加」を検索して読んで貰いたい。 A君:同意。一言で言えば、フッ素は過剰に摂取すると、歯にフッ素斑というものが出る。しかし、虫歯に対する抵抗力が増大する。 B君:そもそも歯というものは、ヒドロキシアパタイト【Ca5(PO4)3(OH)】というものが主成分。これは、リン酸塩化合物の一つ。この物質は、陰イオン交換物質で、OHがF(フッ素)に変わったり、Cl(塩素)に変わったりする。外部からフッ素イオンとして口の中に入ると、表面のOHがFに変わる。これによって、虫歯菌が作る酸への化学的な抵抗力が上がる。 C先生:もともとはセラミックス屋だったもので、なんとなく懐かしい。かつて、人工骨用として相当注目を集めた物質だ。現在は、インプラント用の材料として使われているようだ。歯や骨の主成分なので当然なのだが。 A君:次に添加に使われるフッ素というものについても説明しないと。
 フッ素Fは、もっとも陰性が強い元素。陰性が強いとは、陰イオンになる性質が強いことを意味する。水に溶けると、必ず陰イオンとして存在している、という意味だと思えば良い。
 フッ素そのものは、F2という形で気体としても存在する。HFという化合物も気体。これらの気体の毒性は非常に高いと考えるべきなので、フッ素というと有害性物質と決め付ける人がいるけれど、水中に存在しているフッ素イオンの毒性は低いとは言いにくいけど、猛毒という程のものではない。
 塩素も同じハロゲン元素なので、同様のことが言える。Cl2という気体は、毒ガスの起源みたいな物質だし、HClという気体も、吸うと大変なことになる。しかし、イオンとしての塩素イオンCl-は、NaClは食塩で、ヒトの生存にとって必須の成分である。もちろん、食塩も過剰に摂取すると、胃がんや高血圧などの原因になることもある。
 水道にフッ素を添加するときに、大体フッ素イオンの濃度として、1mg/L以下というところです。そのために主として使われるNaFは、食塩の親戚みたいな化合物ではありますが、当たり前ながら毒性は食塩の比ではなく高いようです。
 HSDBという毒性データベースによれば、
http://toxnet.nlm.nih.gov/cgi-bin/sis/search/r?dbs+hsdb:@term+@rn+7681-49-4
NaFを250mg摂取すると、吐き気と腹部の痛み、下痢などの症状を示す。
 さらに大量(5~10g)のNaFを摂取すると、呼吸器系の麻痺によって死に至ることもある。子供の致死量は低く、500mgということも。27ヶ月の小児の場合、わずか体重1kgあたり8mgで死亡した例が報告されている。
 しかし、発がん性は無いし、事後に障害がでることも無い。ただ、試験管レベルの実験では、フッ素の存在によって、DNAの修復酵素の作用が弱くなるということはあるようです。 B君:フッ素の摂取に対して特にリスクの高い群がある。それは糖尿病尿崩症、腎機能障害の患者。割合としては少数であるが、ハイリスク群が存在していることは事実である。血中濃度は、摂取後1時間程度で最大になって、その後の半減期は4~5時間。 A君:フッ素は、カルシウムと結合すると、フッ化カルシウムになって、この化合物は溶けにくい。ということは、フッ素を大量に摂取すると、カルシウム不足になりかねない。 B君:それは、ある種の医薬品を毎日服用している人にとっては、フッ素はまずいということもあるのかもしれない。 A君:このHSDBのデータは実に膨大なので、全部の項目を掲載することは不可能です。NaFに関する全記述は25万字を超します。ということで、かなりいい加減ですが、こんなところでヤメますか。 B君:ヒトへの影響のデータが多いということは、地域によっては、使っている水中のフッ素濃度が高い場所があるということなのだろう。それに、フッ素は、必須元素かどうかについてはどうも議論があるようで、通常、必須元素ではないとされているようだが、一部には、フッ素も必須元素だという考え方もあるようだ。 A君:フッ素は元素ですから、微量であれば、それこそ何にでも含まれている訳です。 B君:フッ素イオンはHSDBには出ていない。これは物質が対象であって、フッ素イオンという分類は無いからかもしれない。 A君:それには、この文書が良いかもしれないですね。

B君:これも長い。28万字もある。 A君:この文書はやや古くて1984年にできたものなのですが、フッ素の情報は、それほど新しいものでなくても十分なのでは、ということでご紹介します。
 UNEP、WHO、ILOという国連の3機関による共同作成の文書です。 B君:フッ素イオンを大量に含む食品として、お茶、魚があげられている。葉っぱとしてのお茶には、100mg/kg以上のフッ素が、そして、飲み物になったお茶には、1.6~1.8mg/kgものフッ素が含まれている。 A君:水道水に添加する場合よりも倍ぐらい濃度が高いですね。お茶を大量に飲んでいる人は、フッ素の摂取量が多いということになりますね。 B君:魚にはやはり多いものがある。5mg/kg程度というものがあるようだ。 A君:ということは、日本人は平均的にフッ素を大量に摂取している人種だということになるのではないだろうか。 B君:子供への暴露だと、まずは、調理に使う水からが多いと書かれている。子供はまあお茶は飲まない。その次が、牛乳のようだ。牛乳を飲めば、歯の原料になるカルシウム、それにフッ素と両方摂取できるということになるのか。 A君:この文書は、WHOがからんでいますから、ベネフィットとして、虫歯予防効果があると書かれています。 C先生:そろそろ最終的な議論をする材料が揃ったのではないか。少なくとも健康な大人にとっては、適切な量のフッ素が添加された水道水を使っていたとしても、問題は起きない。ただし、子供はフッ素に敏感なようだし、ある種の病気をもっている人には、ハイリスク群が存在する。 A君:WHOがフッ素の添加による虫歯予防効果があると述べている背景には、WHOの視点というものは、地球全体であって、むしろ先進国ではない、という要素があるように思いますね。 B君:国連機関というものは、ほぼそのすべてが、途上国のことを主に考えていると思った方が良い。 A君:国連の会議というものも、そんなものだということです。気候変動枠組条約にしても、生物多様性条約にしても。 C先生:こんな絵をかなり前に書いたことがある。これは、地域における環境リスク=ローカルリスク低減の理解を示す概念図だ。
図 ローカルリスク低減がどのように行われるかの模式図。先進国の住民は、「実質安全」では満足しないで、過剰な対策を要求するのが一般的である。 C先生:途上国では、その地域の環境リスクは受容できるレベルを遥かに超えていることが多い。しかし、徐々に発展をすることによって、そのリスクは徐々に低下してくる。そして、WHOの推奨値=国際的な標準が満足される状態になると、リスクはまあまあ適正に対応されていると言えて、ほぼグリーンゾーンに入る。
 しかし、当然のことながら、そのような国での平均余命は、日本のような長寿国とはかなり違う。その大きな要因は、小児の死亡率が高いからだ。
 乳児死亡率は、0歳児の死亡割合を意味する数値であるが、1000の出生数に対して、日本では、2009年データだと、今や2.4なのだ。
 もっとも乳児死亡率が高い国は、今は、アフガニスタンになった。2000年のデータでは、アフリカのシエラレオネが150という数値だった。2009年のアフガニスタンは、133.7だ。100の出産があって、赤ちゃんが生まれても、1年以内に13名が死亡するというすごい数値ではあるが、実は、日本でも、1899年のデータは、東京だと200程度なのだ。この100年間での日本の進化というものはすごいものがある。
 その割には、アフガニスタンの乳児死亡率は下がらない。やはり戦乱の影響が出ていると考えるべきで、例えば、リベリアもかつて2000年には、133.5とひどい状況だったが、内戦が終わった2009年には79.9まで、かなり改善されている。 A君:地域の環境リスクが国際的な標準値であるWHOの規制値が守られるという状態になると、乳児死亡率は、どのぐらいになると考えたら良いのでしょうか。 C先生:いきなり難しい質問だ。工業が発展すれば、SOxなどの大気中濃度などが基準になりそうなのだが、最貧国では、工業が発達していない。どうもそんな便利な指標は無いような気がする。むしろ、先の図の横軸は、一人当たりのGDPのようなものだと考えて欲しい。 B君:となると、大体、$10000だろうか。 C先生:大体良い線ではないか、と思うが、一人当たりGDPにも色々あって、constant2000US$というデータ(WorldBankのWDI)の場合の話だとして、丁度$10000ぐらいの国に行ったことが無いのでよく分からない。例えばポルトガルだが。韓国の歴史を見れば、大体、そんな感じかと思う。$10000を超すと、WHOの推奨の基準値が守られるようになるような気がする。
 さらに経済発展をして、$30000といったレベルになると、その国の人々は、WHOの基準値では満足できなくなる。個人というものがさらに重視されるようになるとも言える。
 個人の特性によって、リスクが集中しないか。例えば、持病などによって、さらには、常用している薬などへの影響などによって悪影響はないか。あるいは、個人の自由を損なうことはないかという観点もより重要になる。
 例えば、お茶にはフッ素が大量に入っているので、もしも水道水にフッ素が入っているとすると、お茶中のフッ素の濃度は3倍になることもある。大量のお茶を日常的に飲むと、まずいということにもなりかねない。 A君:個人の特性の尊重と言えばその通りなのですが、あるところから先は我侭とも言えそうですね。 B君:現代社会は、功利主義的が主な枠組みになっているので、そもそも我侭なのだ。マイケル・サンデルが注目されている理由は、功利主義あるいは自由主義から、共同体という概念を重視しようという彼の考え方への共感があるからかもしれない。 A君:水道にフッ素を添加すれば、ほとんどすべての人にベネフィットがあることはほぼ確実。途上国であれば、この状況が許容される。
 しかし、先進国になると、所得もあるわけで、フッ素がどうしても使いたければ、フッ素入り歯磨きを使えば良い。フッ素を使わなくても、フロスを使って歯磨きをやり、虫歯を防止すれば良い。少数だとは言っても、自らのリスクが高くなるという主張があれば、それは尊重すべきだということになる。 B君:水道にフッ素を添加すれば、その費用は、100円/年・人程度だと言われる。フロスを1本50円として、1ヶ月に2本使えば、1200円/年・人だ。フッ素入り歯磨きなら、そんなにも高くはないだろうけど。 C先生:それ以外にも、別の要素もある。過去、アラスカ州で事故が起きて、かなり高濃度のフッ素が供給されてしまって、一人死亡という事態になった。途上国ならば、乳児の死亡率が高いこともあって、このようなことは滅多に起きないことだし、起きてもまあ仕方ないという判断になるが、先進国では、それは許しがたいという判断になる。となると、先進国の自治体あるいは水道業としては、こんなリスクがあることをやりたくない。したがって、虫歯の予防ぐらい自分でやれ、ということになる。 A君:社会の意識によって、フッ素の添加に対する判断が変わる。途上国ではベネフィットがあると判断されるが、先進国だとそう断言することができない。 B君:WHOの判断は、常に、途上国が対象。だから、先進国は、それに従う必要はない。
 もちろん、「住民が合意すれば」、が条件だ。といっても全員が合意するということは無いので、最大限、リスクファクターが多い人が存在していないかどうかを注意深く点検して、それを元に、冷静に判断を下す必要がある。 A君:米国はフッ素添加をしている地域が多いのですが、Facebookの「環境学ガイド」グループの米国在住のメンバーからの情報では、最近、添加量を削減しようという検討が始まったとのこと。EPAが報告書を出したということも、同じグループでは共有された。 B君:これが、リスク評価をしている文書だ。2010年12月発表の最新のもので、今年の1月7日にリリースされたばかり。
http://water.epa.gov/action/advisories/drinking/upload/Fluoride_dose_response.pdf
歯にフッ素斑点ができるかどうかだけのリスク評価で、他の視点はなさそう。 A君:EPAはこれまで1.87mg-F/Lという濃度を無害の上限としていた。そのため、0.7~1.2mg/Lという濃度を、水道水に添加する場合の基準値にしてきた。 B君:それが、次の文書によれば、
http://yosemite.epa.gov/opa/admpress.nsf/3881d73f4d4aaa0b85257359003f5348/86964af577c37ab285257811005a8417!OpenDocument
8才以下の子供に限っての話だが、過剰摂取による歯にフッ素斑点がでる可能性がでてきた。それは、歯磨き中のフッ素、口腔衛生のためのフッ素処理などの普及のためである。
 これに対処するために、これまでの推奨値を変えて、0.7mg/Lとする。 A君:中国や香港などでは、もっと低い添加量だったようですから、それでも効果があるのなら、低くするのも妥当な決定でしょう。 C先生:そろそろまとめるか。こんな状況なので、日本の自治体で、水道水へのフッ素添加を新たにやろうという人が出るとは思えない。こんな簡単な結論になってしまうが、それはそれで良いのではないだろうか。
 今回、このHPでは指摘しないが、フッ素添加に反対している人のHPもいくつかあって、その内容をチェックしてみると、ひどいものがある。科学リテラシー、化学リテラシーの不足が明らかな主張だ。
 例えば、気体としてのフッ素、あるいは、フッ素化合物と水溶液中のフッ素イオンとの区別が付かない人。いやいや、わざと区別していないという感触もあるので、読む人が知らなければダマされることを狙っているという記述なのかもしれない。
 水道へのフッ素添加は、ナチスが始めたのはどうやら事実らしいけど、最近でも同じ狙いなのだという笑えるような議論をしている人もいる。
 このあたりのHPは検索をすればいくらでも見つかるので、読んで楽しんでみてください。

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