非有酸素運動について

有酸素運動を定期的に行う習慣が身についたら、次は非有酸素運動を習慣化することをおすすめします。非有酸素運動には、ストレッチ、筋肉強化、ボディビルディングをはじめ、バランス・柔軟性・敏捷性・協調性を高めるための運動が含まれます。

非有酸素運動の紹介を最後にもってきたのは、まず、有酸素運動を習慣にしていただきたいからです。有酸素運動のほうが非有酸素運動よりも努力を要し、真剣に取り組まないと効果が得られないことが多く、心臓血管系に効果のある運動を毎日30分も続けるよりも、ウェイトマシーンを使ったりヨガ教室に通ったりする方がずっと楽なのです。ですから、まずは有酸素運動の習慣を身につけてから、という条件で、非有酸素運動をご紹介します。

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ストレッチ

これは無理のない、すぐれた条件付けの運動です。筋肉を強化し、その調子をととのえ、腱や靭帯や関節を柔軟にし、神経系を活性化させ、気分が爽快になるという利点があります。イヌやネコを観察すれば、ストレッチ運動がいかに大切かが分かります。長時間一定の姿勢でいたあとは誰でもストレッチ(伸び)をしたくなります。専門家の指摘を待つまでもなく、ふだんとっている姿勢の逆方向にからだを伸ばすようにすれば良いのです。たとえば、会社でデスクに向かって仕事をしている人は、家に帰ってから数分間、頭・首・肩を後ろに反らせるようなストレッチをすれば良いという感じです。

筋肉には「伸展受容器」があります。筋肉を伸展したときに活動する特殊な細胞で、その緊張の状態を中枢神経系に伝達しています。ストレッチをすると気分が爽快になり、意識のレベルが高まるのはそのためだと思われます。ストレッチの気分の良さは快感と苦痛の境界感覚にあります。たとえば、ヨガのようなストレッチ運動は、はじめてすると苦痛のように感じられますが、訓練を重ねれば知覚がすみやかに変化していきます。

ストレッチは自然な運動なので伸ばす方向を自分で見つけるのは簡単ですが、正式に習いたい場合はフィットネスクラブのストレッチ教室に申し込むことをおすすめします。筋肉が固い人、同じ姿勢で座っていることが多い人には、ぜひストレッチを毎日の習慣として取り入れることをおすすめします。If then ルールを使用すれば、簡単に習慣づけられますので、ぜひお試しください。

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ヨガ

ヨガの歴史は古く、単なる筋肉のストレッチではありませんが、ストレッチ自体がヨガの動きを元にしており、ヨガ初心者がまず実感するのがストレッチ感覚でもあります。

インドにおいては、ヨガは意識の統一を獲得するための哲学的・宗教的な修行体系です。ハタ・ヨガとして知られるその身体的な側面には、数々のアーサナ、すなわちポーズ(姿勢)が含まれます。たいがいの人がヨガという言葉を聞くとまず思い浮かべるのがこのアーサナであり、西洋においてヨガの指導者が教えているものもほとんどがアーサナです。ヨガのアーサナは元来、からだと神経系を鎮めることによって意識の集中と瞑想を容易にするための手段であり、それ自体が最終目的ではありません。心を鎮める術を身につけるという本来の目的を達せられなくても、ポーズだけは上達するということが可能なのがヨガの一面でもあります。

ヨガを限定的に、非常によくできた非有酸素運動系ストレッチ運動のひとつとして見ただけでも、その利点はたくさんあります。まず、ヨガはからだの各部分のバランスをとりながら筋肉を強化するすぐれた方法です。柔軟性・融通性を高めるので、慢性の腰痛などの人にも良い運動になります。筋肉を鍛えるという効果ばかりか、神経系にたいしても多大な効果が期待できます。深いリラクゼーションの境地に達することができ、強力なストレス軽減方法にもなります。

ヨガは学ぶ人の年齢を問わず、子どもでも大人に負けず上達し、お年寄りにとってもちょうどよい非有酸素運動となります。要するにヨガは、これまでに紹介してきた有酸素運動を補うものとして、万人に勧められる効果的な非有酸素運動なのです。

ヨガを熱心にやりすぎて関節を傷めたという人がたまにいます。最初から無理に負荷をかけすぎたり、あまり長時間同じポーズをとりすぎて、首・膝・腰などを傷めてしまうのです。段階を踏んでゆっくりとからだをやわらかくしていく必要があるのです。

インドでヨガを習って帰ってきた人から、こんな話を聞いたことがあります。彼の師は乱暴な人で、弟子にむずかしいアーサナを無理にやらせたそうです。痛がる彼に全体重をかけてのしかかり、何とポーズをしている彼の背中の上で飛び跳ねて見せたというのです。そのときも死ぬほど痛かったけど、帰国してからは一層痛くなり、その後遺症はなかなか治らなかったそうです。

他の運動と同じく、ヨガをするときも、自分のからだの声をしっかり聴かなければなりません。あまりに痛みがひどいポーズは避けた方が良いです。近年では、ハタ・ヨガよりダイナミックで習得も難しい「クンダリーニヨガ」や「アシュタンガヨガ」が導入されはじめましたが、両方とも動きが激しく、ポーズも非常に難しいため、リラクゼーションよりむしろ活性化を期待するものであり、初心者には向いていません。

 

重量挙げとボディビル

ともに抵抗に逆らうような筋肉運動であり、一昔前のフィットネスクラブではこれらが運動の中心になっていました。いまでも数多くの人たちが機械やバーベルを使ってウエイトトレーニング中心のワークアウトを行っていますし、フィットネスの専門家は全身運動の一部としてこれらを勧めています。

健康増進法や最適な健康の達成が目的ならば、ウエイトトレーニングはあまり必要ないかもしれませんが、ポイントを絞って筋肉をつけたかったり鍛えたい場合には定期的なウェイトトレーニングを取り入れることをおすすめします。

ウエイトトレーニングが筋肉をたくましくするのは、生理学上の単純な法則によるものです。つまり、筋肉を使えば大きくなるし、使わなければ小さくなるのです。絶えず変化する環境からの要求にからだが素早く反応している証拠です。

ウエイトトレーニングというと、筋肉隆々の女性らしくないからだつきになってしまうのではないかと心配する人が大勢いますが、相当の時間毎日集中してトレーニングをし、規定量以上のプロテインやアミノ酸などの栄養補助食品、時には筋肉増強剤などの危険な薬物を取り続けない限り、ボディビルダーのようなからだになることはあり得ませんし、部分的な筋肉を極端に鍛え上げることはアンバランスでもあり、必ずしも一般の人たちよりも健康とはいえません。むしろ誤った考え方や信仰によって不健康になっている人たちも少なくありません。

とはいえ、フィットネスクラブに通い始めると、せっかくだからとウエイトマシーンやバーベルを使ってみたくなることがあります。そんな時には、胸に手を当ててその運動をやる動機を確かめてみてください。それでいざやってみようと思った時には、どのような効果効能を狙っているのかをよく話し合える良いインストラクターを選ぶことをおすすめします。高タンパク食やプロテイン、アミノ酸、高価な生薬やステロイド系の筋肉増強剤のような副作用がないものを進める人などいろいろなインストラクターがいます。

抵抗に逆らう筋肉運動の利点は、骨密度を高めて、骨粗鬆症などの原因になるホルモンや代謝の変化を阻止する働きがあることです。女性は男性よりも骨粗鬆症になりやすいですが、定期的にウエイトトレーニングを行っている女性は、していない女性より骨粗鬆症になりにくいということが分かっています。

重量挙げは、前回ご紹介した有酸素運動のランニングやダンスなどと同様重量耐久運動の一種であり、、心肺機能の強化に加えて骨を強化する効果もあります。

 

徒手体操

学校の体操の授業や部活、軍隊の訓練でおなじみの徒手体操は、筋肉鍛錬のための運動ですが、その動きの速さと持続時間の長さによっては有酸素運動にもなります。もっともよく知られているものは腕立て伏せ、つづいて懸垂、挙手跳躍運動、屈伸運動などがその代表です。

徒手体操の難点は、ほとんどの人が学生時代に強制的にやらされたような嫌な記憶と結びついていることです。そのため、私たちは自分の意思で徒手体操をすることになっても、義務的に、生真面目にやりすぎるか、あるいは嫌々やるために習慣化しづらい傾向にあります。

食生活の改善でもそうですが、あまり生真面目に取り組むと必ず失敗します。余裕をもって、楽しみながらできれば長く続けることができますが、どうしても楽しめないようなら、ダンスなどもっと楽しめそうな運動をして徒手体操と同じ効果を狙うことをおすすめします。

 

筋肉トリミング

エアロビクス教室の「フロアワーク(床運動)」は筋肉を調え、からだの線をキレイにするための運動だといわれていますが、フロアワークによってたるんだからだが引き締まり、おなかが引っ込み、おしゃれな女性には耐えがたい「セルライト(脂肪・水・老廃物からなり、二の腕・尻・太ももなどの皮下脂肪にできる塊。皮下脂肪細胞同士が付着、また、脂肪細胞に老廃物が付着して固まったもの)」が溶けてなくなるといった誇大宣伝を吐く本やインストラクターには気をつけていただきたいと思います。

いくら懸命に脚を挙げたりひらいたりしても、そんな奇跡は起こりません。余分な脂肪を溶かすには食生活を恒久的に変え、どれかひとつの方法ではなく、これまでお伝えしてきたさまざまなアプローチを組み合わせながら少しずつ体重を減らしていくしか方法がありません。

というわけで、この種の運動からは、気分が爽快になり、継続できることで自分のからだが好きになるという以外の効果を期待してはいけません。

 

腹筋運動

腹筋運動も筋肉トリミングの一種ですが、腰痛の防止に役立つという意味ではおすすめできますので、別枠でご紹介します。

たとえば起き上がり運動は、背骨を支えている筋肉を強化し、バランスを整える効果があります。ただし、男性のボディビルダーによくある、板のように極端に固い腹筋は消化器の機能を阻害する恐れがあるためおすすめできません。腹筋は鍛えた方が良いですが、ほとんどの武道が教えているように、適度にゆるむスペースがあり、圧力に対して柔軟である必要があります。

とくに腰痛のある人、腹部の手術をした人、多胎妊娠(双子以上の妊娠)の妊婦などはほどほどの分別ある腹筋運動をおすすめします。

 

武道

中国・韓国・朝鮮・日本の伝統的な心身鍛錬法である武道は、西洋でも近年非常に人気があります。武道は格闘や護身という目的に加えて、機敏・柔軟・調和・強調に力点を置いており、中には攻撃をメインとするもの、ケガをしやすいものなどもあります。

武道の中でどれかひとつを健康維持のプログラムに入れるとしたら、太極拳をおすすめします。「中国のシャドーボクシング」などと呼ばれることもある太極拳は、からだの内外をめぐる『氣』エネルギーの調和を目的とし、型にしたがってゆったりと流れるように動く優美な運動です。中国のどの都市に行っても、朝早くから大勢の老若男女が太極拳の練習をしている姿を見ることができます。

ヨガと同じく、ストレス軽減およびリラクゼーション効果にすぐれていて、柔軟性・バランス感覚・身体感覚を高めるという効果もあります。見た目にも美しく、演じても爽快で、他の武道にありがちな負傷や故障の心配もありません。

武道の各流派は自己の方法を、意識を覚醒させ、健康と治癒を促進する精神的な修行法として位置づけている場合が多く、格闘技の達人は一般人よりも暴力に対して抑制的であるともされていますが、実際のところ、武道の訓練は人を防衛的にさせ、他人を潜在的な攻撃者とみなしがちになり、暴力には暴力で対抗するという誤った観念を抱かせることによって、不健康なものの考え方を育むことに寄与している場合が少なくありません。

武道を習おうとする場合には、その流派と指導者をよく見極めて選ぶことをおすすめします。

 

フィットネスの落とし穴

特定の有酸素運動に固執せず各種の運動を組み合わせて行うことができるように、非有酸素運動についても工夫次第でいろいろなメニューを展開することができます。筋肉運動の協調性・機敏性・バランス感覚を向上させるための最良の方法のひとつとして、たとえば、凹凸の激しい岩場のようなところでダンスをしたり、歩いたり走ったりすることが考えられます。ただし、岩場や渓流を歩いた経験がない人は、慣れるまでは慎重に取り組むことをおすすめします。サーフィンや、競争的にならなければ、球技もとても良い非有酸素運動となります。

有酸素であろうと非有酸素であろうと、運動に遊びの要素を取り入れることはとても大切です。単調で骨の折れるものでは続けられなくて当然です。子どもたちが時間を過ぎるのを忘れて何時間でも走り回って遊びながら筋力を発達させているように、楽しめる工夫ができれば運動の習慣づけにとても役立ちます。各市町村にある大きな公園やスポーツセンターが、もっと気軽に集い、運動クラブとして利用できるようになると大勢で楽しみながら心身の健康づくりができます。

一方で、食事がそうであるように、運動がそれだけで健康なからだを達成する万能なものではありません。熱心に運動していながら心筋梗塞で急死する人もいます。運動は習慣化できていても休息やリラックスが苦手な人もいます。攻撃的で競争心の強い人は、仕事や人生一般に取り組むのと同じ姿勢で運動に取り組む傾向があります。そういう人たちは、外見は立派なからだになりますが、悲しいことに、情動や精神性は未発達なままなのです。

健康を味わう目的のために、運動に依存しすぎてしまう人が大勢います。真に健康であることの重要な条件のひとつは、フィットネスクラブや特別な器具など外的な要因がなくても全体感覚や完全感覚を感じられるという自覚です。フィットネスクラブに会員登録をしただけでは運動を習慣化することも、汗をかいてからだを動かすことの楽しさを知ることもできませんし、運動に依存しすぎて愉しむことを忘れて激しく運動することばかりに夢中になってしまっても心身の健康を手に入れることはできません。

極端に軽すぎることも重すぎることもなく、適度な運動を楽しみながら、継続し続けることが健康なからだづくりには必要不可欠な要素となります。

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