タンパク質の真実

タンパク質の組成

タンパク質の化学成分は、炭水化物や脂肪のそれとは比較にならないほど複雑です。

タンパク質は生き物にとって、単なるエネルギー源としてよりはるかに重要な働きをしています。筋肉、皮膚、骨など、からだの組織をつくり、細胞内部の微小で繊細な機構をつくり、多種多様な生命機能を調整しています。タンパク質の分子は窒素を含む比較的単純な成分であるアミノ酸の長い連鎖として始まります。

アミノ酸は、アルファベットの文字のようなものだと考えると分かりやすいです。わずか26種類の文字で無限に言葉がつくれるように、からだは20種類のアミノ酸から無限の種類のタンパク質をつくります。からだはその材料であるアミノ酸のほとんどを自分でつくることができますが、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン(スレオニン)、トリプトファン、バリン、ヒスチジンの8つは例外で、私たちのからだで作り出すことができません。そのた め、それらは「必須アミノ酸」と呼ばれ、私たちは食事から摂取しなければなりません。

タンパク質の連鎖が集まると、アミノ酸の配列によって決められたとおりに複雑で立体的な形ができます。

「文字」の配列によって、タンパク質という「ことば」に意味が生じるわけです。タンパク質の化学構造は、その配列と形態に数限りない組み合わせがあるため、他の体成分に比べると有機体による差異が著しくなります。

つまり、炭水化物や脂肪は、実は私もあなたも、我が家の猫や庭の植物もさほど変わりませんが、私のからだのタンパク質は、植物や動物のタンパク質はもちろん、人間であるあなたのタンパク質ともまったく違うのです。

酵素とは

細胞、組織、器官をつくる設計図は生命の基本的な分子で、遺伝子を形成するDNAにコード化されています。DNAの遺伝コード(これはすべての生物に共通している)で書かれた情報は、特定のタンパク質をつくることによって表現されます。からだの中では、さまざまな化学反応が起こっています。それぞれの反応を引き起こすために触媒(反応を促進する物質)として必須のタンパク質が私たちのからだにとってもっとも重要な酵素です。酵素は、生体内に存在する特定の有機分子であり、地球上の温度で細胞生物が存在し、機能することを可能にしているのです。生命維持に必要なほとんどの化学反応は、酵素がなければ90℃以上でしか起こりません(ss1s2s3)。

酵素は、タンパク質、炭水化物、脂肪を構成する大きくて複雑な分子を、より小さな分子に分割することで、食べ物を消化します。これにより、食品から摂取した栄養素が血液中に吸収され、全身に運ばれやすくなります。

酵素は消化、吸収、代謝など、私たちのからだの中のあらゆる反応になくてはならないものです

遺伝子が情報を送ったり止めたりするにつれて、特定の酵素の合成が始まったり停止したりしながら、細胞が指示通りに組織をつくっていき、その組織があなたになり、犬になり、植物になり、やがて出来上がった生体の機能までも調整します。

ヒトを含む生物が、摂取した食べ物を消化・吸収・代謝したり、からだの中で起こるほとんどの化学反応は、酵素がなければ行われません。しかし酵素は、それぞれある特定の反応しか触媒することができません。例えば、タンパク質を分解する酵素は、タンパク質を分解することしかできず、デンプンや脂質を分解することができません。デンプンや脂質を分解するためには、また、別の酵素が存在し、それぞれ、デンプンや脂質しか分解できないのです。これを酵素の特異性と呼びます。そのため、ヒトの体内には、約5,000種類もの酵素があると言われています。

ほとんどの酵素の主要な構成要素はタンパク質です。そのため、他のタンパク質と同じように加熱により構造が変化して、酵素の機能を失ってしまいます。

酵素の大きな特徴は、限られた環境条件の下でしか働かないことです。多くの酵素はヒトや動物の体内で働くために、摂氏35度から40度の温度で最もよく働きます。55度以上の高温でタンパク質が変性し、分子構造の変化による破壊が生じるため、反応が低下、または完全に停止します。低温では反応が遅くなり、酵素の活性が低下します。様々な食品、特にトロピカルフルーツや野菜、生肉などには、それ自身や特定の栄養素の消化を促進する消化酵素が自然に多く含まれていますが、調理などで熱を加えるとこれらの酵素は減少したり破壊されて死んでしまいます。

他のタンパク質と同様に、酵素は、からだの中で遺伝子の情報に基づいて合成されていますが、加齢とともに酵素を合成する力も衰えてきます。そのため、高齢者は消化や代謝の力が弱くなってしまいます。

つまり、私たちが一生のうちに体内で生成できる酵素は限られており、変な食べ合わせや、加工食品、調理によって食品そのものの酵素が死んでいるものなどを暴飲暴食することで大量の消化酵素を使ってしまうと、ただでさえ消化・分解には莫大なエネルギーを必要とする上に、それぞれの酵素を分泌する器官に大きな負担をかけることになり、それが病気の引き金になってしまいます。そのような食事では、食後に眠くなったりからだがだる重くなってもまったく不思議ではありません。

さらに、それぞれの酵素ごとに、ある特定の範囲のpH1の下でしか、酵素は働くことが出来ません。ヒトの体液のpH7.357.45なので、多くの酵素は中性付近のpHで最もよく働きます。しかし、胃の中は胃酸により強い酸性であるため、胃で働くタンパク質を分解する酵素であるペプシンは、pH2という非常に低いpHの条件下で最も活性が高くなり、中性付近ではほとんど働きません。

1 pHpH(ピーエッチ)は酸性かアルカリ性かを示す指標のこと。酸性からアルカリ性の度合いを0から14の数字で表すものです。 pH7を中性とし、ph7未満を酸性、ph7より大きければアルカリ性とします。 pH7よりも値が小さいほど酸性の性質が強く、値が大きいほどアルカリ性の性質が強いことをあらわします。

酵素のはたらき

からだの中で働く酵素の中で、大事なものの一つが食べた食品を消化する酵素です。消化酵素は大きく分けると、デンプンを分解する酵素、タンパク質を分解する酵素、脂質を分解する酵素に分けられます。デンプンをグルコース(ブドウ糖)に分解する酵素はアミラーゼ、タンパク質をアミノ酸に分解する酵素はプロテアーゼ、脂肪を脂肪酸とグリセロールに分解する酵素はリパーゼと言います。プロテアーゼの中にも、例えば、消化酵素のペプシン、トリプシン、キモトリプシンや、パパイヤに含まれているパパイン、パイナップルに含まれているブロメラインなど多くの種類があります。

<主な消化酵素一覧>

酵素

働き

アミラーゼ

アミラーゼは、炭水化物の消化に重要です。デンプンを糖に分解します。

アミラーゼは、唾液腺と膵臓の両方から分泌されます。血液中のアミラーゼ濃度を測定することで、膵臓やその他の消化管の病気を診断することができます。

血液中のアミラーゼ濃度が高いということは、膵臓の管が詰まっている、または傷ついている、膵臓癌、膵臓の突然の炎症である急性膵炎などの可能性があります。

アミラーゼの濃度が低い場合は、慢性膵炎(膵臓の継続的な炎症)や肝臓疾患の可能性があります。

マルターゼ

デンプンは消化中、アミラーゼによって部分的にマルトース(麦芽糖)に変換されます。

マルターゼは、マルトースをグルコース(単糖)に分解する役割を担っており、小腸で分泌されます。グルコースは体内ですぐにエネルギーとして使用されるか、将来使用するためにグリコーゲンとして肝臓に貯蔵されます。

リパーゼ

リパーゼは、脂肪を脂肪酸とグリセロール(単純糖アルコール)に分解する働きがあります。

口や胃からも少量は分泌されますが、大部分は膵臓から分泌されます。

ラクターゼ

ラクターゼ(ラクターゼ・フロリジン・ヒドロラーゼとも呼ばれる)は、乳製品に含まれる糖であるラクトースを分解する酵素で、ラクトースをグルコースとガラクトースという単糖に分解します。

ラクターゼは、腸管に存在する腸球と呼ばれる細胞で作られます。吸収されなかった乳糖は、腸内細菌によって発酵されます。これにより、ガスが発生したり、お腹が痛くなったりすることがあります。

セルラーゼ

セルラーゼは、食物繊維のセルロースを、βグルコースと短鎖多糖類に分解します。セルロースはすべての野菜の細胞の重要な構成要素であり、世界でもっとも豊富に存在する化合物の一つであり、多くの生物にとっての主要な食料となっています。

セルラーゼは、バクテリア、菌類、原生動物のほとんど全ての種が生成しますが、人間や動物は生成できません。

セルラーゼは、エクソグルカナーゼ(セロビオヒドロラーゼとも呼ばれる)、エンドグルカナーゼ、β-グルコシダーゼなど、複数の異なる酵素の複合体で構成されています。これらの酵素が協力して働くことで、動物はセルロースを完全に分解(または加水分解)し、単純な糖であるβ-グルコースにすることができます。

セルラーゼがセルロースを多糖類やβ-グルコースに分解すると、体内ではこれらの副産物が利用されるか、排出されます[2]。残りの植物性セルロース繊維は増量剤として働き、便中に排出されます。

プロテアーゼ

ペプチダーゼ、タンパク質分解酵素、プロテイナーゼとも呼ばれる消化酵素で、タンパク質をアミノ酸に分解します。また、細胞分裂、血液凝固、免疫機能など体内の様々なプロセスに関与しています。

プロテアーゼは、胃や膵臓で作られます。主なものは以下の通りです。

ペプシン:胃から分泌され、タンパク質をペプチド、つまり小さなアミノ酸の集まりに分解する。分解されたアミノ酸は、小腸で吸収されるか、さらに分解されます。

トリプシン:トリプシンは膵臓から分泌された酵素が小腸の酵素によって活性化されて形成される。トリプシンはその後、カルボキシペプチダーゼやキモトリプシンなどの追加の膵臓酵素を活性化し、ペプチドの分解を助けます。

キモトリプシン(Chymotrypsin):ペプチドを腸壁で吸収可能な遊離アミノ酸に分解する酵素です。

カルボキシペプチダーゼA:膵臓から分泌される酵素で、ペプチドを個々のアミノ酸に分解する。

カルボキシペプチダーゼB:膵臓から分泌され、塩基性アミノ酸を分解する。

スクラーゼ

スクラーゼは、スクロース(砂糖)をフルクトースとグルコースに分解し、体に吸収される単純な糖にします。

スクラーゼは小腸で分泌され、腸絨毛に沿って存在します。腸絨毛とは、腸に張り巡らされた小さな毛のような構造物で、栄養分を血流に吸収する働きがあります。

<消化酵素を含む食品>

食べ物

酵素

利点

パイナップル

プロテアーゼ(ブロメライン)

タンパク質の消化を助け、追加の抗炎症効果があります

パパイヤ

プロテアーゼ(パパイン)

タンパク質の消化を助け、肉を柔らかくする効果があります。

キウイ

プロテアーゼ(アクチニジン)

消化酵素に加えて、果物は消化管機能をサポートする食物繊維が豊富です。

マンゴー

アミラーゼ

炭水化物をデンプンから単糖に分解する。果実が熟すにつれて増加する。

バナナ

アミラーゼ、グルコシダーゼ

アミラーゼと同様に、グルコシダーゼも複雑な炭水化物を分解します。

生の蜂蜜

アミラーゼ、ジアスターゼ、インベルターゼ、プロテアーゼ

アミラーゼとジアスターゼはデンプンを分解するのを助け、インベルターゼは糖を分解し、プロテアーゼはタンパク質を分解します。

アボカド

リパーゼ

脂肪の消化と代謝を助けます。

ケフィア

リパーゼ、ラクターゼ、プロテアーゼ

ケフィアのラクターゼは発酵乳を消化するのに役立ち、乳糖不耐症の人でも許容される可能性があります。

ザウアークラウト、キムチ

リパーゼ、プロテアーゼ

発酵食品は、発酵プロセス中に酵素が生成されるほか、プロバイオティクス(善玉菌)、も含まれており、消化器の健康をさらにサポートします

味噌

ラクターゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ

乳製品に含まれる乳糖、脂肪、タンパク質、炭水化物の分解を助ける強力な酵素の組み合わせを含む大豆発酵食品。

ショウガ

プロテアーゼ(ジンギパイン)

タンパク質を分解する酵素に加えて、吐き気を和らげる効果があります。

消化酵素は消化の他に、吸収された栄養素からエネルギーを作り出す反応、体内の有害物質を処理し尿などと一緒に排泄する反応、からだの成長、免疫反応、からだの調節機能などにかかわる多くの代謝反応に関与しています。

酵素は、からだの中で起こるほぼすべての反応に関与しているため、体内で作りだされる酵素の量が少なくなると、以下のようなからだの不調を引き起こす恐れがあります。

欠乏症

食物を完全に消化するのに十分な量の消化酵素の分泌を妨げる健康状態はさまざまです。遺伝性のものもあれば、時間の経過とともに発症するものもあります。

乳糖不耐症

乳糖不耐症は、小腸でのラクターゼの産生が不十分なために、乳糖を消化できない場合に起こります。乳製品を摂取すると、膨満感、下痢、腹部痛、ガスなどのような症状が現れることがあります。

乳糖不耐症にはいくつかの種類があります。

・先天性ラクターゼ欠損症

先天性ラクターゼ欠損症(先天性アラクタシアとも呼ばれる)は、まれな遺伝性の乳糖不耐症の一種です。新生児が母乳や粉ミルクに含まれる乳糖を分解することができないために起こります。母乳や粉ミルクに含まれる乳糖を分解できない新生児は、乳糖を含まない代替品を与えられないと重度の下痢を起こします。

先天性ラクターゼ欠損症は、ラクターゼ酵素を作るための指示を出すLCT遺伝子の変異によって起こります。

・ラクターゼの非持続性

ラクターゼ非持続性は、大人になってから発症する人もいる一般的な乳糖不耐症の一種です。約65%の人が罹患し、LCT遺伝子の発現(活性)低下が原因とされています。症状は通常、乳製品を食べたり飲んだりしてから30分から2時間後に現れます。

ラクターゼ非持続性のほとんどの人は、ある程度のラクターゼ活性を維持しており、少量の乳糖を食生活に取り入れることができます。

・二次性乳糖不耐症

二次性乳糖不耐症は、小腸に損傷を与える病気のためにラクターゼの産生が低下した場合に発症します。このような病気には、セリアック病やクローン病のほか、腸壁に影響を与えるその他の病気やけががあります。

・外分泌性膵臓機能不全

膵臓は、主要な消化酵素であるアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼを生成します。外分泌膵臓機能不全(EPI)の方は、これらの酵素が不足しており、食べ物、特に脂肪を適切に消化することができません。

膵臓に影響を与え、EPIに関連する健康状態は以下の通りです。

・慢性膵炎:膵臓の炎症で、時間の経過とともに膵臓が永久的に損傷する可能性がある。

・嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう)。膵臓線維症:膵臓を含む肺や消化器系に深刻な障害を引き起こす遺伝性疾患。

・膵臓ガン

十分な量の消化酵素を持っていない人や、酵素が生きた食品を普段からあまり摂 取しない場合、消化酵素をサプリメントなどで補うことを検討する必要があります。そのためには、良質な天然の消化酵素を選ぶ必要があります。 

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食品由来の酵素を摂取して消化を助けてもらうことについては、まだ議論の余地が残っているものの、食べたものを消化吸収するためには多大なエネルギーが必要であり、過剰な食品を消化しなければならない状況は胃や腸などの消化器官に負担をかけることは事実です。とくに高齢者は消化器官に負担をかけないためにも、腹八分目に気を付けた食事をすることは健康のためには大切なことです。消化酵素サプリメントは消化プロセスをサポートし、消化を加速させることで、からだの負担を軽くすることができるのです。

ただし、酵素サプリメントさえ摂れば良いというものではありません。摂取した酵素がハイレベルな効果を発揮するためには、ビタミンやミネラルが体内に充足していることが大切です。(詳細はビタミン・ミネラルのパートでお伝えします。)

酵素の機能と性質

酵素は以下の役割を担っています(s)。 ①キナーゼやホスファターゼによるシグナル伝達や細胞の制御。

②ミオシン(筋タンパク質)がATPを加水分解して筋収縮を起こすことで運動を起こす。

③細胞骨格の一部として細胞の周りに必要な分子を運ぶ。

④消化、代謝、呼吸。代謝酵素は臓器、組織、および血液を調節します。新しい細胞を作り、既存の損傷した細胞を修復し、からだがもっとも必要とする場所に栄養素を運びます。

⑤ アミラーゼやプロテアーゼなどの消化酵素は、大きな分子のデンプンやタンパク質を、腸で適切に吸収されるように小さな分子に分解する。

⑥ホルモンの生成

⑦栄養素の吸収と輸送。

⑧細胞の修復と分裂

⑨解毒

⑩病気、ウイルスには、HIVインテグラーゼや逆転写酵素のように、細胞に感染するための酵素が含まれています。

 

タンパク質の必要量、本当のところ

新しい組織をつくり、損傷した組織を修復するには、食事からタンパク質を摂らなければなりません。成長期の子どもは特にタンパク質をたくさん摂る必要があります。重い病気やケガの回復期にある人も、じゅうぶんなタンパク質を摂る必要がありますが、それ以外の健康な成人のタンパク質の必要量は、妊娠中の女性や活発に動いている人でさえ、そこまで多いものではありません。

ほとんどの成人の場合、1日にわずか60gの良質なタンパク質を摂れていればタンパク質の欠乏の心配はありません(目標(適正)体重kg×1g:適正体重が60kgの場合は60gということ)。筋量アップのためにややハードな運動を行っている場合でも倍量の120gも摂れば十分です。現代では、多くの人が1食だけで120g以上のタンパク質を摂っている場合があります。 

高タンパク食はからだを疲れさせる

成長と組織の修復維持のためにからだが必要とする量以上のタンパク質を食べたら、どういうことになると思いますか?

必要以上に摂取して体内で余ったタンパク質は、炭水化物や脂肪とともに燃料として燃やされますが、あまり効率の良い燃料とはいえません。タンパク質分子は複雑なので、分解してエネルギーを取り出すためにからだに余計な作業や負荷をかけるため、エネルギーの収支が炭水化物や脂肪のようにはうまくいきません。

高タンパク食は消化器系に相当な負担を与え、疲労感や精力減退感の原因になります。精力減退を訴える人がタンパク質の摂取量を減らして、炭水化物や野菜をたくさん食べ、有酸素運動をすることで、ほとんどの人が気分もスッキリして元気を取り戻します。

燃料としてのタンパク質がかかえる第2の問題は、それがクリーンなエネルギーではないということです。タンパク質には窒素が含まれているため、燃焼すると毒性の窒素廃棄物である「灰」が残ってしまい、からだはそれを排出しなければいけなくなります。高タンパク食を摂ると、血液にアミノ酸がどっと流れ込み、肝臓が懸命に働いてアミノ酸を分解して単純な成分の尿素に変えます。尿素は毒性があるため、今度は腎臓がそれを排出しなければなりません。そのためには、大量の水分を使って血中の尿素を洗い流す必要があります。

つまり、タンパク質の代謝は消化器系全体に大きな負担をかけ、さらに肝臓と腎臓にも余計な負担を与えるわけです。

 高タンパク低糖質ダイエットと骨粗鬆症

本や雑誌、さまざまなメディアで騒がれている「高タンパク低糖質ダイエット」による急速な体重の減少は、からだの水分が尿管を通じて失われる排尿過多によるものです。

ステーキとグレープフルーツジュースだけの食事を続ければ1週間で5kg痩せることはできますが、減ったのはほとんどが水分であり、必死に尿素を押し流そうとする腎臓の働きによるもので、普通の食事に戻って体重がもとに戻る確率は100パーセントです。この手の食事療法でリバウンドなしに減量に成功した人には会ったことはありませんし、何よりもからだに恐ろしくストレスをかける方法でもあります。

高タンパク摂取による排尿過多には、カルシウムを含むミネラル類をからだから排出してしまうという作用があります。

カルシウムが失われると、骨がすかすかになる骨粗鬆症の発病を招き、いずれは骨の変形や骨折、とくに骨盤の骨折を引き起こします。骨粗鬆症は最近、怖い病気として知られるようになりましたが、閉経期の女性はホルモンの変化によって、男性よりも若い年齢で発症しやすいとされています。骨を守るためにホルモン剤やカルシウムサプリを飲んでいる女性が増えていますが、一方でタンパク質中心の食事を続けているため、実際には骨を守ることにはなっておらず、まったく無意味なのです。(骨粗鬆症を悪化させる誤ったアプローチ

骨粗鬆症の原因は単なるカルシウムの欠乏ではありません。さらに、一度骨粗鬆症になってしまうとカルシウム剤では治りません。

骨粗鬆症は、遺伝(痩せ型で骨の細い女性がなりやすい)、運動不足(ランニング、エアロビクス、重量挙げなど、体重を支える運動が骨のカルシウム吸収を促す)、性ホルモンの低下(閉経後の女性や80代の男性のような状態)、それに食生活が複合して起こります。

生化学者の多くは、高タンパク食によって骨からカルシウムが失われるという事実を何年も前から知っていたことですが、医者や私たちに知らせることはありませんでした。医者も多くの人も、若い頃から食生活や運動に気を配って予防するよりも、骨粗鬆症になったら薬を飲めば良いと思い込んでいます。

また、高タンパク食は一部の人たちの免疫系を刺激し、アレルギーや自己免疫疾患(慢性関節リウマチや狼瘡のように、免疫系が判断を誤って自分のからだの組織を攻撃してしまう)を悪化させると、考えられます。

タンパク質は有機体の中でも独自性の強い成分であるため、免疫系が自己と非自己を識別する指標としても使われています。アレルギーや自己免疫疾患に見られるように免疫系が活発になりすぎると、体内に押し寄せてきた動物性や植物性の異種タンパクが免疫系の判断を一層狂わせ、症状が悪化する恐れがあるのです。極端な低タンパク食の生活をするだけで、そうした病気をもつ人の症状が改善された例はたくさんあります。

私たちはなぜ食品や献立を考える時にタンパク質をメインとして重要視してしまうのでしょうか?

ほとんどの人はタンパク質が足りないと心配することはあっても、摂りすぎを気にすることはありません。菜食主義に近い人ほど、同じ菜食主義者に何からタンパク質を摂っているかと質問を投げかけますが、何から脂肪を摂っているか?何からデンプンを摂っているか?という質問をすることはまずありません。食卓の中心に位置するのは、たいていタンパク質主体の料理です。

獣肉や魚肉、チーズは使うなといわれると、多くの人は何を作っていいのか分からなくなります。食べる側の人も、メイン料理が見当たらず面食らうことになるでしょう。

私たちのタンパク質好きも歴史的にみると説明がつきそうです。

私たちの祖先は長い農耕社会の時代を経てきました。農耕社会では、貧しい者はデンプンを食べ、富める者の食卓には肉がありました。潜在意識に残響しているさらに遠い過去の記憶【成功とは狩りの成功のことだった】が作用して、食卓の肉は豊かさの象徴となりました。狩猟時代には、もっとも地位の高い狩人はもっとも多く肉を持ってくる狩人だったからです。そうした文化的・経済的な偏見は、飢饉に見舞われタンパク質不足になった第三世界の子どもたちの悲惨な姿の映像も手伝って、今でも非常に強く印象に残っています。

不足よりも過剰の心配を

飽食の現代でタンパク質不足になることは実はとても難しいことです。たくさん食べてさえいれば、緑の野菜からでも十分なタンパク質が摂れます。

さまざまな体調不良改善のために低タンパク食を取り入れた人で悪影響が出た人は一人もいません。

タンパク質が欠乏し、必要量が摂取できなかったときの初期症状としては、髪や爪の伸びがとまり、外傷が治りにくくなります。そんな状態になっていない人は、タンパク質不足よりも過剰の心配をした方が良さそうです。

タンパク質信仰の形成に寄与しているのは当然ながら栄養学です。バランスの良い食事のために毎日三色食品群と6つの基礎食品群のすべてから食べものを選んで食べなさいという、このような図を見たことがない人はいないと思います。学校にも掲示されていましたし、給食の献立表もこの表をもとに分類されていて、校内放送でも毎日「血や肉、骨や歯のもとになるもの・・・」などと流されていました。視覚、脳、聴覚とあらゆる刺激によって刷り込まれてきた情報の一つです。 

実際には炭水化物の中にもかなりのタンパク質が含まれているため、この栄養学に基づいて毎食摂取すると、ほとんどの場合1日分のタンパク質必要量を上回ることになります。

世間ではさまざまな種類のタンパク質を摂った方が良いという見解もあれば、その必要はないという見解もあります。しかし、牛肉のような動物性であれ豆腐のような植物性であれ、総摂取量という点から見ればタンパク質はタンパク質です。植物性タンパク質の方が有利な点はただひとつ、動物性よりもタンパク濃度が薄く、炭水化物や繊維質が混ざっていることが多いため、必要タンパク量を超えない範囲でたくさん食べられるというところにあります。

植物性タンパク質は含んでいるアミノ酸の内容が動物性とは異なっており、8種類の必須アミノ酸のうち1種類足りないことが多いため、一部の栄養学者からは「不完全タンパク質」と呼ばれています。人間の組織に近い動物性食品には8種類の必須アミノ酸が正しい比率で含まれています。

「補助タンパク質」とか「タンパク質結合」ということばを聞いたことがある人も多いと思いますが、これは健康と地球のエコロジーを考えて菜食に関心をもつ人が増えるにつれて人気が出てきた考え方のひとつです。ベジタリアンなどの人は、たとえば穀物と豆類を一緒に食べるなどして、その組み合わせで足りないアミノ酸を補うことができるという発想に基づいています。

異なったタンパク質を組み合わせるのは良いことではありますが、必ずしもそうすべきであるという理由はありません。

不完全なタンパク質からでもからだが完全なタンパク質をつくってくれるからです。腸内に棲む大量の細菌が腸管内壁の再生細胞を材料にアミノ酸をつくり、その中から摂取食物では足りないアミノ酸を探し出して、完全なタンパク質をつくるのです。

補助タンパク質という考え方を広めている人たちの書いた本やメディアで流す情報によって、多くの人がいつも手に電卓をもって栄養計算しないと安心して菜食ができないような気にさせられています。その著者たちはまた、私たちの文化的強迫観念ともなっているタンパク質信仰を強化する役割を果たし、タンパク質不足について心配する人を増やしていますが、長年の教育や刷り込みによって三色・6つの食品群からそれなりにバランス良く食べるようになっている私たちは、タンパク質不足よりも過剰を心配しなければなりません。

それぞれのタンパク質の長所と短所

それではここで、おもなタンパク食品について詳しく比較をしてみたいと思います。

赤肉(ビーフ、ラムなど)

赤肉は欧米食が浸透してきた私たちにとって、さまざまな健康情報とともに人気のあるお肉であり、もっとも高価なタンパク源です。炭水化物や繊維質の比率が小さいためタンパク濃度が高く、人間の肉に組成がよく似た完全タンパク質です。赤肉は少量でもタンパク質の必要量をオーバーしやすいため、タンパク質の摂りすぎに気をつけている人にとっては短所となります。 おもな欠点は飽和脂肪とコレステロールが多いところにあります。ビーフ、ラム、ポークに含まれる脂肪の多くは筋肉組織にひろく分布しており、脂肪だけを取り除くことはできません。しかし、私たちは、銘柄牛や霜降り肉など、脂肪の多い肉の方が高価であり、旨味があると感じます。 メインディッシュにお肉がない食事など考えられないという人は、肉なしの生活をしている人よりはるかに心臓血管疾患のリスクが大きくなっています。

<肉食の問題点>

食用に飼育した動物を食べることは、上の者が下の者を食べるという生物の序列である地球の食物連鎖のほぼ頂点に立つことになります。肉食動物は、その連鎖に沿って濃縮されてきた多くの環境汚染毒物を体内に蓄積しています。菜食を中心にしたほうがいい理由のひとつは、植物は食物連鎖の底辺に位置しているため、一般的には汚染が少ないところにあります。

さらに、現代の畜産法では歩留まりをあげ、食品としての商品価値を高めるために、大量の薬品・ホルモン剤・毒性化学物質を多用して飼育されています。肉食中心の生活に対するそれらの危険は心臓血管疾患のリスクほどには知られておらず、研究もされていませんが、実際には心臓血管疾患に劣らず恐ろしいものなのです。

それらはガンや変性疾患になる確率、免疫系の損傷を起こすリスクを高めます。また、レア(生焼け)の肉は、ガンの発症に関与していると考えられており、その他ある種のウイルスの感染源になります。しっかり焼くことでその危険はなくなりますが、毒物や汚染についてはどうしようもありません。

また、飼育のための穀物栽培は効率が悪く、農業資源の浪費でもあります。栽培した穀物を直接人間が食べれば穀物のカロリーははるかに多く活かされますし、牧畜のエコロジーに与える影響には甚大なものがあります。計画的でない過剰な放牧は世界の多くの土地を荒廃させ、その排泄物は地下水汚染の原因になっています。

白肉(仔牛の肉、ポーク)

赤肉をやめることで健康な食生活に大きく近づいたと考えて平気で仔牛や豚の肉を食べる人がいます。仔牛の肉は親牛の肉より脂肪は少ないですが、すべての肉の中でもっとも悲惨な状態で飼育された動物の肉(貧血状態にされ、筋肉が発達しないように動くことも許されない食用仔牛の肉)であることを忘れてはなりません。 豚の飼育は牛の飼育ほど環境を汚染しませんが、養豚業者が主張するように、豚肉が牛肉よりも低脂肪とか健康に良いとはとても考えられません。豚肉もまた、タンパク質・飽和脂肪・コレステロールの摂りすぎの大きな要因となっています。要するに、「白肉」といっても赤肉と大きな差はないのです。

鳥肉(鶏、七面鳥など)

獣肉に加えて人気のある、用途の広い動物性タンパク源は鶏肉と七面鳥の肉です。大部分の脂肪が筋肉ではなく皮にあるので、皮を剥いて中身だけを食べられるという利点があります。 皮を剥いて油もつけずに焼くか炙るかスチームしたものは、赤肉、白肉よりも健康的なタンパク源ではあります。もちろん、皮付きのまま調理したり、揚げたり、バターやマヨネーズをたっぷりつけたりすればその長所は失われます。 他の家禽類(鴨、アヒル、鷲鳥)は一般に鶏や七面鳥より脂肪が多くなっています。すべての家禽類の脂肪には飽和脂肪とコレステロールが非常に多いため、あまり食べないほうが良いです。 その他の鳥肉の欠点としては、一般に化学汚染が進んでいるということが挙げられます。家禽類の飼育は家畜の飼育よりもひどい方法で行われていることが多く、不自然な環境に監禁して薬品をたっぷり使っています。放し飼いの鶏や七面鳥で、薬品もホルモン剤も使っていないものが手に入るのであれば、獣肉よりもおすすめですが、そうでない場合には鳥肉についても用心しなければなりません。

<ヒ素(毒物)や抗生物質の残留問題>

チキンマックナゲットを食べると、トランス脂肪酸を大量に摂取することになります。しかし、少なくともヒ素を摂取することはありません。なぜなら、マクドナルドはヒ素を鶏に与えていない生産者からのみ鶏肉を購入しているからです。

ヒ素は毒物です。なぜ養鶏業者は販売する鶏にヒ素を与えるのでしょうか?信じられないかもしれませんが、ヒ素は少量であれば鶏の体重増加を早め、寄生虫の感染からも守ってくれるからです。

養鶏業界では1970年代から、鶏の飼育効率を高めるヒ素の効果を利用してきました。もちろん、鶏の飼料にヒ素を添加するには政府の承認が必要で、安全性の調査が行われました。飼料への使用が認められたのは、有機ヒ素です。ここでいう有機とは、炭素原子を含む化合物を意味しています。厳密に言うと、承認されていたのはロキサルソン、つまり化学用語では4-ヒドロキシ-3-ニトロベンゼンヒアソン酸です。この化合物をネズミで実験したところ、驚くほど無害であることが分かりました。しかし、後になって、鶏の体内では炭素原子が取り除かれ、無機物であるヒ素が残ることが分かりました。これは大きな問題で、無機ヒ素には発ガン性があります。鶏肉にはこの無機ヒ素が含まれている可能性があるのです。

では、なぜこのような行為が禁止されていないのでしょうか?それは、毒性データの解釈の問題です。おそらくビジネス上の利益に汚染されているのでしょう。欧州では、鶏肉に含まれるヒ素の量は多すぎると判断し、飼料添加物としてのヒ素の使用を禁止しています。北米ではまだ使用が許可されていますが、これは肉に残留する微量のヒ素が健康に影響を与える可能性が低いという判断に基づいています。これはおそらく正しいでしょう。しかし、ここにはもっと大きな問題があります。それは、鶏の排泄物です。

鶏糞のほとんどは、肥料として農地に撒かれたり、家庭菜園用のペレットに加工されたりしています。現在では、鶏糞や土壌に存在するバクテリアが、排泄された有機ヒ素を無機ヒ素に変えることが知られており、畑からの流出により水道水に混入する可能性があります。また、鶏糞の粉塵を農家や庭師が吸い込んでしまうという問題もあります。無機ヒ素の粉塵には発がん性があるだけでなく、長期間の暴露により神経学的、ホルモン学的、免疫学的な影響が出る可能性があります。これまでのところ、養鶏飼料へのロキサルソンの使用が人間にそのような問題をもたらしたという証拠はありませんが、その可能性は否定できません。アーカンソー州の小さな町、プレーリーグローブの住民の中には、この可能性は「あり得る」と主張する人もいます。彼らは、この町では珍しいガンの発生率が異常に高く、それは町を囲む畑に撒かれた鶏糞のせいだと主張しています。ロキサルソンのメーカーを相手に訴訟を起こしましたが、裁判では証拠不十分で却下されています。ヨーロッパではヒ素を使用しない鶏の飼育に何の問題も出ていません。いずれにしても、鶏の飼料にヒ素を添加することは必要ありません。

また、こちらの研究は、食肉動物に主に使用される抗生物質(シプロフロキサシン、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、スルファニルアミド)の残留量を複数の方法によって分析したものです。いずれの分析方法でももっとも残留濃度が高かったのがスルファニルアミドです。スルファニルアミドは合成抗菌剤の一種でほとんどのグラム陽性菌、グラム陰性菌、原生動物に対して広いスペクトルを持っています。長期間摂取することで成長促進効果が得られる可能性があることから食肉動物の飼料としても使用されています。食物連鎖の上位である人間がこれらの抗生物質が残留している食肉を食べると、過敏症、胃腸障害、組織障害、神経障害の恐れがあり、長期的な暴露によって臓器および全身への急性または慢性毒性につながり、アレルギー反応や、薬剤耐性菌を生成する可能性があります(ss1s2)。

こうした問題は氷山の一角であり、毒性の危険性について早くに認識されていても、国や機関が使用の禁止を決定するまでに数十年の期間を要します。その間、私たちは情報を伏せられたままこれらの食品を消費し、体内に毒素を蓄積し続けているのです。こうした薬品を開発し、市場を広め、強大な権力を握る巨大企業によって、私たちの健康は大きく脅かされているのです。

卵は朝食の材料として使われるだけではなく、パン、ケーキ、クッキー、アイスクリーム、パスタなど、さまざまな加工食品の材料にひろく使われています。卵の白身は良質なタンパク源ですが、卵の黄身はもっとも濃厚なコレステロール源です。

卵だけをときどき食べるのであればさほど問題ではありませんが、美味しい料理の多くは卵とともにバター、クリーム、ミルク、チーズなどが使われ、その組み合わせが心臓や動脈にとって非常に危険なのです。卵を置き換えるか(卵の代替レシピはこちら)、白身だけを使うことで料理のコレステロール濃度を下げることができます。卵を使わなくてもおいしいマフィンやクッキー、ケーキなどをつくることができますし、小麦粉と水だけでつくったパスタも売っています。加工食品を買うときはよくラベルを見て、現在の自分の状態を意識して(コレステロールを控えた方が良いかどうか、組み合わせ、原材料)選んだほうが良さそうです。 ちなみに普通の無精卵よりも有精卵の方が良いという特別な理由はありません。それよりも、多少面倒で高価であったとしても、放し飼いで薬物もホルモン剤も使っていない鶏の卵を選ぶことの方が重要です。有害な化学物質の摂取を少しでも減らすことができるからです。

加熱した卵と生卵の栄養価を比較した研究では、生卵の方が、33%のオメガ3DHA36%のビタミンD33%DHA20%のビオチンと亜鉛、23%のコリンを多く含むことが分かっていますが、加熱した卵よりも消化が悪い(ゆで卵の消化率90%、生卵の消化率50%s)、つまり同量のタンパク質が含まれていても、ゆで卵の方が多くタンパク質を摂取できるということ)、タンパク質の吸収量が少ない、細菌(サルモネラ菌)感染のリスクがある、タンパク質の吸収を妨げる可能性があるなどの欠点があります。 最近では卵の細菌(とくにサルモネラ菌)汚染が増えているという問題があります。サルモネラ菌は、私たちのからだに汗腺を引き起こす可能性のある有害な最近です。汚染された卵を食べると、下痢、腹痛、発熱、頭痛などの症状のある食中毒につながる恐れがあります。十分に加熱して(75度以上で1分以上または65度で5分以上)食べた方が安心です。

また、卵を水で洗ってから冷蔵庫に保管してはいけません。鶏卵は採卵後、通常はパックに詰められる前に洗浄・殺菌処理が施されています。殻の表面の汚れを水で洗うと、殻の気孔(無数の微細穴)から水と一緒に雑菌が卵の中に侵入する可能性があります。気になる汚れは洗わずに軽く拭き取るか、調理直前に洗うことをおすすめします。

卵は最高のタンパク源の一つであり、私たちのからだに必要な9種類のアミノ酸がすべて含まれています。上手に取り入れていきましょう。

魚肉

魚はかつて、獣肉にくらべて脂肪の少ない良質なタンパク源でしたが、今日では河川や湖や海に流した毒物によって汚染されていることが多くなり、食用としてはやや心配になっています。一般的には海の魚の方が淡水魚よりも安全ですが、海水魚も淡水魚も食物連鎖の上位に位置しているため、下位の小さな生物のからだに蓄積したすべての毒物が上位の魚の体内に濃縮していることが少なくありません。そのため、もっとも汚染の著しい魚は大型の肉食魚と、汚染が進んだ沿岸で過ごす時間の長い魚です。メカジキやマカジキなどの大型の海水魚を食べることはおすすめできません。イワシやニシンのように主として微小な海洋生物を食べ、沖に棲む魚の方がはるかに安全です。さらに、イワシやニシンは心臓発作を予防するオメガ3脂肪酸の供給源にもなります。(脂肪のパート参照)

脂肪分に富んだ魚には他にサケ、サバ、ムツなどがあり、ビンチョウマグロはやや少ないです。ムツの類は水銀の濃縮度が高いことが多いため、産地を確かめて食べると安心です。マグロは大型魚の中ではもっとも安全であり、適量を摂取する分にはおすすめします。 サバはオメガ3脂肪酸のすぐれた供給源ですが、新鮮なものは特定の季節にしか食べられません。北方のきれいな海で獲れたサケは年中食べられ、まず安全だと考えて良さそうです。アラスカ産のサケは天然ものですが、ノルウェーのサケは養殖ものです。狭く不自然な環境で育てられる養殖の魚は病気になりやすく、その予防と治療のために薬剤を使っています。いまでは養殖魚のさまざまな病気が天然の魚にも拡がり、ついには種全体が危機にさらされる恐れさえ予測されています。養殖のサケは薬剤が残留している恐れがあるし、天然ものにくらべて一般的にオメガ3も少なくなっています。 魚は腐敗が早いため、栄養と味覚の両面から考えて、できるだけ新鮮なうちに食べなければなりません。また、稀ではありますが、生の海洋魚を食べると非常に危険な寄生虫にやられることがあります。他のタンパク食と同じで、魚も加熱したほうがからだが消化しやすくなります。

甲殻類

貝類(ハマグリ、牡蠣、ホタテガイ、カタツムリ、ムラサキガイなど)と甲殻類(小エビ、ロブスター、カニなど)の2つのタイプがあります。食習慣と生息地(沿岸を好む)から考えても、これらの生物はほとんど鱗のある魚(毒物や汚染物質を蓄積していることが多い)よりもさらにリスクが高くなります。 貝類を生で食べる時には、肝炎ウイルスを含むさまざまな病原体をもっていることが多いため注意が必要です。小エビやロブスターにはコレステロールが大量に含まれていますが、飽和脂肪が非常に少ないため、バターやクリームソースを使ったり揚げ物にしたりしなければ、獣肉よりはるかにからだに良いタンパク源となります。 エビの背わたは消化管であり、身の部分よりも大量に汚染物質を含んでいるため、必ず背わたをぬいてから食べましょう。

ミルクと乳製品(チーズ、ヨーグルト)

大部分の人が大量に摂取している人気のあるタンパク源です。乳製品業界は私たちに「ミルクの摂りすぎに害はありません」、「ミルクは自然がくれた最高の完全食である」と信じさせようとしていますが、その説は考えものです。実際、ミルクに含まれているすべての栄養素は何らかの病気の原因になりうるものでもあります。

インドでは、牛はもっとも神聖な動物とされてきました。なぜなら、仔牛が必要とする以上のミルクを自然に出し、余った分を喜んで人間に分け与え、健康維持、特に病気に対する抵抗力を高めたり、回復や再生を促進し、長寿に貢献するためです。

地球もまた牛のように、無私の心で生き物たちを養い、支えています。ギリシャ語のガイアとサンスクリット語のガウは、地球を意味しています。地球上には生命を司る有機的な知性が存在するという『ガイアの原理』は、古代の『宇宙の牛』の比喩を現代風にアレンジしたものです。人間が地球をどのように扱っているかは、牛をどのように扱っているかに共通しています。今日、この心優しい聖なる生き物が搾取されていることは、地球を汚染し、破壊する無謀な消費者思考の文化を反映しています。

現代の私たちが、乳製品の消化に必要な酵素が不足し、うまく消化できずに不快感を感じる問題の多くは、実は、乳製品そのものではなく、その製造過程が不適切であることに起因しています。丁寧に栽培し、適切なプロセスで余計な手を加えずに作られた本物の全粒粉と自動的に製粉、漂白された白い小麦粉がまったく違うように、完全な機械化によって製造され、スーパーで売られている乳製品と、自然に暮らしている牛から絞り出されたお乳は、まったくの別物です。

自然に暮らしている牛は、まず、仔牛にミルクを与えることが許されており、残ったかなりの量のミルクだけが人間の手に渡ります。仔牛が母牛から引き離されると母牛の乳はその栄養価を失ってしまいます。酪農産業は、仔牛を母牛から引き離して屠殺します。動物の子どもを殺して、その乳を奪いとるのです。もしも同じことが起きたら人間の母親はどのように感じるでしょうか?牛は仔牛の鳴き声を聞くとすぐに母乳を分泌し始め、仔牛が連れ去られるとその苦痛でミルクに毒素が分泌されます。

さらに、牛は狭い囲いの中に閉じ込められ、機械で搾乳されたりと、さまざまな虐待を受けています。現代の牛は人工授精で作られたハイブリッド動物であり、健康に良い量よりもはるかに多くのミルクを出すように遺伝子的に再設計されている工業製品です。ホルモン、抗生物質、不自然な無機質の穀物を与えられており、残留化学物質は組織に吸収されてミルクに濃縮されていきます。インドの伝統的な医学では、化学物質や薬物の汚染は、自分の組織に蓄積されて病気を引き起こすため、避けるべきだと考えられています。鎖でつながれ、閉じ込められて不自然な暮らしを強いられた動物の肉や乳製品は、自由に草を食むことができる動物の肉や乳製品よりもはるかに質が悪いとされています。

ヨーガによれば、牛乳はサットヴィックな性質(完全にナチュラルで純粋)を持っています。牛乳は愛から生まれ、人間が本来持っている知性や感性を高めてくれるものです。しかし、現代の乳牛の飼育方法や製造方法では、それらの有益な特性は損なわれています。

まず、病気の原因は細菌にあるとする現代の細菌説では、病気を防ぐには食べものや環境を殺菌することが一番の解決法です。自然の中にはたくさんの細菌がいるため安全ではないとされ、自然の産物には疑いの目が向けられます。しかし、ホリスティック医学の観点からすると、殺菌することは殺すことです。無菌状態の環境は、生命力や自然の免疫力が破壊されているため、病原体が発生するのに最適な場所なのです。牛乳を殺菌するには、牛乳を加熱して、含まれている可能性のある細菌を死滅させます。これにより、牛乳が腐るまでの期間が長くなり、商業的には有利になりますが、本物の乳製品よりも明らかに生命力が劣っているため、私たちのからだにとって良い食品ではありません。

低温殺菌は、乳製品の品質を低下させる行為のほんの一部に過ぎません。人間は常に自然を改良することができ、自然の産物は最初に処理された方が安全であると考えているため、私たちの文化では、自然のままの牛乳を人間が口にすることは安全ではないと捉える一方で、人工的な環境で人工的な食べものを与えられ、薬やホルモン剤を投与されて育った動物から採取された牛乳は健康的であると考えられています。低温殺菌され、均質化され、長時間冷やされ、ビタミンやカルシウムの強化を謳い文句にするために何らかの添加物が加えられています。このような過程を経て作られた乳製品に本来の栄養価や特性などあろうはずがありません。

日本では数軒しかありませんが、24時間365日昼夜放牧を行っている山地酪農家さんで作られた自然な暮らしをしている牛の牛乳や乳製品を体験すると、スーパーで売られている乳製品がいかに劣悪なものであるかがよく分かります。

ご当地牛乳グランプリ『最高金賞』受賞!
満天☆青空レストランでも紹介されました!

岩手県岩泉町、通年昼夜放牧の『なかほら牧場』

乳製品をどのように摂取するかも非常に重要です。アーユルヴェーダでは、温かい牛乳は病気を治すが、冷たい牛乳は病気を引き起こすと言われていますので、牛乳は温かくして飲みましょう。また、牛乳などの乳製品は粘液を発生させる性質があるので、適切なスパイスを使って解毒する必要があります。乳製品を料理に使うことには、ほとんど制限がありません。なぜなら、乳製品の特性が料理に混ざるからです。牛乳、ヨーグルト、チーズ、サワークリームなどをスープやカレーなどに使うと、とても美味しくなります。

また、アーユルヴェーダでは、乳製品は糖分と同様に過剰に摂取すると害があり、特に冷えた場合は注意が必要です。乳製品の湿った重い性質は、循環の経路を詰まらせます。アレルギー、喘息、関節炎、心臓病などの慢性疾患を悪化させる可能性があります。乳製品の摂取量は適切に調整する必要があります。

本来の牛乳は理想的な若返り食品であり、心と体に栄養を与えます。肺からの出血、乾いた咳、潰瘍、不妊症、活力のない状態などに良いとされています。ギーを加えた温かいミルクは、天然の下剤となります。しかし、低温殺菌された牛乳や均質化された牛乳は、しばしば便秘の原因となります。

カルダモンは、牛乳の粘液形成作用を抑制するのに最適なスパイスです。他にもジンジャー、シナモン、ターメリックなどがあります。スパイシーなハーブをミルクに入れると、ミルクの消化が良くなるだけでなく、薬効も加わります。寝る前に温かい牛乳にナツメグをひとつまみ入れて飲むと、不眠症に効果的なホームレメディです。煎じたミルクに含まれる強壮作用のあるハーブは、強力な若返りの食品です。アシュワガンダ(Withania somnifera)、シャタバリ(Asparagus racemosus)、コンフリー(Comfrey)の根、ジンセン(Ginseng)などがあります。

牛乳は、カファ(重い、水っぽい)タイプにはお勧めできませんが、低脂肪の牛乳なら問題なく飲めることもあります。水分の多いエネルギーを必要とするヴァータ(空気のようなもの)やピッタ(火のようなもの)のタイプには最適です。アーユルヴェーダの考えでは、良質な牛乳は、すべての組織に栄養を与える純粋なプラズマのようなものです。しかし、質の悪い牛乳は、血漿の老廃物である純粋な粘液のようなものです。

牛乳は、カパ(重い、水っぽい)タイプにはお勧めできませんが、低脂肪乳なら問題なく飲める場合もあります。

アーユルヴェーダにおける身体的、感情的、精神的、行動的な特徴に基づくそれぞれのドーシャ(体質)について

<ヴァータ>
ヴァータは、主に空気と空間(エーテルとしても知られている)の2つの要素で構成されており、一般的には、冷たい、軽い、乾燥している、荒い、流れる、広々としていると表現されます。秋は涼しくてさわやかな日が多く、ヴァータを象徴しています。

ヴァータのドーシャを持つ人は、通常、スリムでエネルギッシュ、創造的であると言われています。既成概念にとらわれない考え方をすることで知られていますが、気が散りやすいところがあります。さらに、彼らの気分は、天候、周囲の人々、食べるものに大きく左右されます。

長所:学習能力が高い、創造性に富む、マルチタスクをこなす、心優しい、柔軟性がある、行動力がある、自然とスリムになる

短所:忘れっぽい、不安感が強い、気分が不安定、すぐに参ってしまう、寒さに強い、寝つきが悪い、食欲や食事パターンが不規則、消化不良やガスが溜まりやすい、血行が悪い(手足が冷たい)

アーユルヴェーダによると、ヴァータ優位の人が最適な健康を得るためには、規則的な日常生活を送り、瞑想などの心を落ち着かせる活動でストレスを管理し、寒さを避けて温かい食べ物や飲み物を摂取することで体温を維持する必要があります。

<カパ>

Kapha(発音は「カッファ」)は、土と水をベースにしています。安定している、重い、遅い、冷たい、柔らかいなどの特徴があります。春はカパの季節として知られており、世界の多くの地域ではゆっくりと冬眠を終えます。

このドーシャを持つ人は、強く、骨太で、思いやりがあると表現されます。物事をまとめ上げ、他の人のサポートをすることで知られています。カパ優位の人はめったに動揺せず、行動する前に考え、ゆっくりと慎重に人生を歩みます。

長所:共感力がある、思いやりがある、信頼できる、忍耐力がある、落ち着いている、賢明である、幸せである、ロマンチストである、骨や関節が丈夫である、免疫力が高い

弱点:太りやすい、代謝が悪い、だるい、寝すぎ、呼吸器系の問題(喘息、アレルギーなど)、心臓病のリスクが高い、粘液がたまる、うつ病になりやすい、定期的にやる気と励ましが必要。

アーユルヴェーダでは、カパ優位の人の健康のためには、定期的な運動、健康的な食事、体温の維持(サウナに入ったり、温かいものを食べるなど)、規則的な睡眠を心がけるべきとされています。

<ピッタ>

粘り強い性格で知られるピッタ・ドーシャは、火と水をベースにしています。一般的には、熱く、軽く、鋭く、油っぽく、液体で、動きやすいと表現されます。夏は日差しが強く暑いため、ピッタの季節として知られています。

このドーシャを持つ人は、筋肉質の体格で、運動能力が高く、強力なリーダーであることが多いと言われています。やる気があって、目標を持っていて、競争心が強いです。しかし、その攻撃的で粘り強い性格は、人によっては不快感を与えることもあり、それが原因で争いが起こることもあります。

長所:知的、目的意識が高い、学習速度が速い、自己決定力がある、スキルを簡単に習得できる、成功への強い願望がある、強い、天性のリーダー、新陳代謝が早い、血行が良い、健康的な肌と髪をしている

弱点:せっかち、争いごとを起こしやすい、常に空腹である、空腹になると気分が落ち込む、ニキビや炎症を起こしやすい、暑い温度に弱い

ピッタ優位のドーシャを持つ人は、ワークライフバランスを重視し、極端な暑さ(天気、スパイシーな食べ物など)を避けるべきです。

ヤギのミルク:カパタイプで粘液、鼻づまり、浮腫みがある人にはよい。その場合でも、スパイスと一緒に温めて飲むべきです。温性なので、熱性疾患や感染症にかかっている人、胃酸過多の人(ピッタ型)は避けたほうがいいでしょう。

クリーム:クリームは牛乳に似ていますが、より重いものです。うっ血していたり、消化機能が低下しているときには、より注意が必要です。乳製品、特にクリームやチーズのような重い乳製品についての一般的なルールは、消化器系の混雑を示す舌の上のコーティングに気づいたら、それらを避けることです。

アイスクリーム:アイスクリームは、体にとって扱いにくい食品です。特に食後に食べると、その冷たさが消化器系の働きを抑制します。また、砂糖や添加物、卵などが多く含まれています。アーユルヴェーダでは一般的に推奨されていません。しかし、より自然な形のアイスクリームやアイスヨーグルトは、消化が良く、太っていなければ、また組み合わせる食品に気をつけていれば、夏にも食べることができます。

ヨーグルト:ヨーグルトはチーズのように重く、一般的な情報に反して、体重減少には役立ちません(肉や重い食品の代わりにする場合は別です)。逆に、体重を増やすのに適した食品です。低脂肪ヨーグルトは重くないとはいえ、減量には適していません。

欧米では朝食として使われていますが、朝のヨーグルトは必ずしも良いものではありません。朝の冷たいヨーグルトは、体内の粘液を悪化させます。ヨーグルトを果物と一緒に食べると、水っぽくて粘液を作る性質が強くなります。

一般的に、ヨーグルトは単独で、あるいは空腹時に摂取すべきではありません。ヨーグルトはキュウリと相性がよく、キュウリの軽さがヨーグルトの重さと釣り合います。これは、ほとんどのインド料理に添えられるライタ(ヨーグルトのサラダ)の基本です。ヨーグルトは、コリアンダー、クミン、コリアンダー、カイエンヌなどのスパイスと一緒に食べるとよいでしょう。

ヨーグルトは、乳製品の中でも最も安全です。品質の良くない牛乳でも、許容範囲内のヨーグルトを作ることができます。また、ヨーグルトは自分で簡単に作ることができる乳製品でもあります。ただし、酸味の強いヨーグルトほど、酸味を悪化させ、血液を毒性にしてしまいます。甘いヨーグルトの方が良いでしょう。また、ヨーグルトは酸味のある果物やバナナと一緒に摂ると酸味が強くなります。ヨーグルトは主にヴァータタイプに適しており、ピッタやカパ(熱性または水性)タイプには注意が必要ですが、ピッタは甘いヨーグルトを扱うことができます。

ヨーグルトが酸っぱければ酸っぱくなるほど、酸味を悪化させ、血液を毒性にしてしまいます。甘いヨーグルトの方が良いでしょう。

インドのバターミルク:ヨーグルトを摂取する良い方法は、同量の水とミキサーで混ぜ、カルダモンやナツメグを加えることです。これはタクラム、またはインドのバターミルクと呼ばれています。体を冷やす性質がありますが、回復期や弱った消化器官に良い食品で、特に吸収不良や下痢には効果があるとされています。インドのバターミルクは、神々の食べ物と考えられています。

西洋のバターミルク:西洋のバターミルクは低温殺菌されており、多量の塩分を含んでいることが多いことを除けば良い乳製品です。他の乳製品に比べて利尿作用(水分を排出する作用)が強く、粘液の生成が少ないのが特徴です。この点では、カパに適しています。また、弱った消化力や吸収不良、下痢などにも有効です。

ケフィア:ケフィアも乳製品を発酵させた飲み物で、ヴァータのタイプ、つまり空気の流れが悪く神経質な体質の人には特に有効です。しかし、果物と組み合わせると、牛乳やヨーグルトと同じような問題を引き起こす可能性があります。甘いケフィアには、大量の砂糖が含まれていることもあります。

チーズ:チーズは重く、粘り気があり、消化しにくい。うっ血、滞り、チャネルの閉塞がある場合にはお勧めできません。関節炎、痛風、感染症、にきび、風邪、インフルエンザ、肺疾患などを悪化させ、コレステロールを増加させる可能性があります。発酵したものや塩分の多いものは、消化しにくいことがあります。チーズによく使われるレンネットは牛の腸から採取されるため、市販されているほとんどのチーズは厳密にはベジタリアン向けではありませんので、レンネットを使用していないチーズを選ぶようにしましょう。

塩分が少なく、レンネットを使用していない、発酵が強くないチーズを食べるのがベストです。よりマイルドで甘い味のチーズが好ましく、チーズの重さは、マスタード、カイエンヌ、ブラックペッパー、ホースラディッシュ、クミンなどの香辛料で部分的に和らげることができます。チーズを野菜、特にブロッコリーやカリフラワーのような淡白な野菜の上に溶かして食べることもできる。このようにして、野菜とチーズの両方の特性がバランスよく保たれます。

ファーマーズ・チーズ(パニール)は、軽くて消化に良いため、インドで最もよく使われているチーズです。カッテージチーズも消化しやすく、軽くて冷たく、栄養価が高く、タンパク質を多く含んでいます。クリームチーズは、少し粘り気がありますが、これも通常のチーズほど消化しにくいものではありません。

サワークリーム:サワークリームは、おそらく最も酸性の強い乳製品で、潰瘍、心臓の火傷、発熱、感染症などの炎症(ピッタ)状態を悪化させる可能性があります。ヴァータ型や風通しの良いタイプに最適です。

バター:バターは通常、低温殺菌された牛乳から作られており、着色料や大量の塩が加えられていることが多く、また、長期間冷蔵保存されていることもあるため、健康に良い特性が弱くなっています。本物のバターは、消化力が強く、体内の熱が高いタイプ(ピッタ)の人に向いています。バターは冷やして食べるのではなく、溶かして食べるのが良いとされています。バターの摂りすぎは、チーズのように内臓を詰まらせ、コレステロールを上昇させます。バターを外用すると、火傷や皮膚の発疹に効果があります。

ギー:生のバターから作られるGhee(澄ましバター)は、ほとんどの人に良い影響を与えます。体力、活力、知性を高め、熱や感染症に対抗してくれます。肝臓での消化が良く、コレステロールの増加が見られますが(バターよりは少ないです)。免疫力を高め、長寿と意識の向上を促します。精神的な作業や瞑想に最適な食品です。

ギーは、食事と一緒に摂るか、ミルクで割って摂ります。ギーをそのまま飲むと、多くのオイルと同様に吐き気を催すことがあります。ギーは、BrahmiGotu Kola)ギーやCalamusギーのようなアーユルヴェーダ薬用オイルの基礎となります。ギーを目に入れると視力が回復します。(ターメリックギー、またはターメリックをギーで調理したものは、女性や血液の強化に最適な食品のひとつです。

ギーは生の無塩バターで作るのがベストですが、冷蔵庫で冷やすと数ヶ月は持ちます。銅製の容器に入れて外用すると、あらゆる種類の皮膚の発疹や炎症性皮膚疾患に効果があります。ギーは、その栄養価の高さから、環境や心を浄化する効果があると言われており、瞑想や儀式のためのランプオイルとしても役立ちます。

乳糖が消化できない人は大勢います。北欧出身者以外の人や幼年期からミルクを飲む習慣がない文化の人には、乳糖を代謝する酵素のラクターゼが欠乏しており、ラクターゼがないと消化器系に入った乳糖が消化されず、下痢になったり、腹が張ったり、ガスが出やすくなったりするため消化機能の障害となります。そのような乳糖不耐症の人でも、ヨーグルト、バター、チーズなど、微生物によってつくられた乳製品なら食べられる場合もあります。微生物が乳糖を分解してくれるからです。あるいは、ラクターゼを含む市販の酵素サプリを摂取することでミルクを飲むという人もいます。 「脂肪」のところでお話したように、ミルクの脂肪(乳脂肪)は、あらゆる脂肪の中で心臓や動脈に対してもっとも危険なものです。べらぼうな量の飽和脂肪酸とコレステロールが含まれ、アテローム性動脈硬化症を起こす主犯であることは間違いありません。ミルクがチーズになると、タンパク質も凝縮されますが、乳脂肪も濃縮されます。多くのチーズには重量比で5070パーセントの脂肪が含まれており、タンパク源というよりは脂肪源になっています。たとえば、クリームチーズ、ブリーチーズ、カマンベールなどは高脂肪チーズの代表です。スイスチーズやチェダーチーズはそれほどでもありませんが、タンパク源としての乳製品の最大の欠点は、からだによくない脂肪が多すぎるところにあります。 おすすめできるのは低脂肪チーズや、低脂肪や無脂肪のヨーグルトです。半脱脂のモッツァレラは最近ではどこのスーパーでも手に入ります。乳製品はかならずラベルをよく読んで、脂肪の含有量を調べることです。さらに脂肪はカロリーの比率に換算することをお忘れなく。(計算方法については脂肪の真実参照。) ミルクのタンパク質、つまりカゼインも私たちのからだに良くない影響を及ぼします。粘液産生量を増やし、喘息や気管支炎、副鼻腔炎などを悪化させる原因になるからです。さらに免疫系を刺激して、免疫過剰の状態(アレルギー、自己免疫疾患)をつくりだすこともあります。検査でミルクアレルギーがないという結果が出た場合でも、ミルクをやめることで喘息や湿疹などのアレルギー症状、慢性関節リウマチやエリテマトーデスなどの自己免疫疾患が改善されたという例はたくさんあります。無脂肪乳にしたからといって安心はできません。乳タンパクの量は変わらないわけで、乳タンパクそのものが招かれざる症状の原因になっているからです。 ほとんどの市販のミルクには、近代的な飼育場でふんだんに使われた抗生物質やホルモン剤などの化学薬品が残留しています。パスチャライズ(低温殺菌)もホモジナイズ(均質化)もされていないミルクは、そうでない一般的な市販のミルクよりもマシですが、信頼できる農場でつくられたものでないかぎり、恐ろしい病原菌が含まれている可能性があります。低温殺菌のミルクにさえ、ガンの発生に関与しているパピローマウイルスが混入することもあります。牛の乳よりも山羊の乳のほうが消化しやすいという人もいますが、信頼できる山羊の乳は手に入りにくく、作り方によっては味に大差があります。 この国では、食の急激な欧米化とともに乳製品も日常的に摂取されるようになりましたが、世界的にみると乳製品への嗜好は少数派です。地球上の大半の人は、大人がミルクを飲むことに顔を背けないまでも、奇異な感じを抱いているものです。ミルクが完全食品なのは仔牛にとってであり、人間にとってのものではないからです。

牛乳は牛のお乳(濾過された血液)です。人間同士の血液の輸血でさえ、私たちの免疫系に多大なストレスを与えます。乳製品業界は巨大な権力を持つ恐ろしい市場の一つでもあり、給食制度にまんまと忍び入って、私たちは長い間ほぼ強制的に牛乳を飲まされてきました。牛乳には大きくホエイとカゼインという2種類の乳タンパクが含まれていますが、特にカゼインはもともと人体では消化されにくい成分です。現代の牛乳はホモジナイズ(均質化)されて分子が細かくなり、消化・吸収がしぼりたてのお乳よりも容易になった異種タンパクです。

牛乳の人体への影響について調べると、からだに良いものだとするデータが面白いほどたくさん出てきます。相反するものについてはかなりの圧力とともに長々とした反証が繰り広げられており、とても興味深いのですが、何度もお伝えしている通り、これらの科学的根拠やデータはいくらでも都合よく作り出すことができるのでキリがありません。牛乳は仔牛の成長に必要なものであり、牛の血液からできているものです。人の手を加えられて機械的製品として作られた牛乳は、栄養として考えてみても加工した血液なので他の食品とは異質のものです。たとえば、犬や猫のお乳は飲めますか?スッポンの生き血も高価でありながら栄養価が高いものとして知られていますが、寄生虫やさまざまな細菌による危険性も報告されています。何より、『血』を飲むことに抵抗を感じませんか?

牛乳の栄養価が目的であれば、もっと心配のない他の食品からでも十分摂取することができます。飲んではいけないということではありません。牛乳とひとくくりにいっても、その牛がどんな環境で何を食べてどんな風に育ったのかによってその栄養価はまったく異なります。ただ闇雲に大きな市場だからと信じたり、みんな飲んでるんだから大丈夫と過信するのではなく、自分の感覚を大切にして選ぶこと、目先だけでなく長い目で見たときにどんな影響があるのかフラットな目で見ること、本当に本当の事実が分かるまでは距離を取ることが必要な場合もあるということです。

 

豆科植物(インゲン豆、エンドウ豆、ヒラ豆、ピーナッツ、大豆食品)

ベジタリアン、とくにミルクも卵もとらない人には重要なタンパク源であります。新世界の先住民におけるトルティーア(トウモロコシ粉でつくった円い薄焼きパン)や豆料理のように、多くの伝統文化の標準的な食事は豆類と穀物の組み合わせでできています。この組み合わせにはほとんど脂肪がなく、必須アミノ酸はすべて含まれています。大豆とピーナッツを除けば、豆科植物は脂肪が少なく、タンパク質と複合炭水化物が豊富で、しかもタンパク質濃度が低いので、からだに余計な負担をかけすぎることなく、たくさん食べることができます。 しかし、豆類に含まれているある種の炭水化物は、構造が複雑すぎるため人間には消化できません。その複雑な炭水化物は腸内細菌が分解してくれるのですが、そのとき副産物として大量のメタンガスが発生します。豆類を食べるとガスが出やすくなるのはそのせいです。最良の解決法は不消化な成分を多く含む豆類(ピンク豆や大豆など)よりもその成分が少ない豆類(黒豆、アナサジ豆など)を選ぶことです。加熱していない大豆や大豆の粉などの大豆製品は非常にガスが出やすくなるため、嫌う人も多いものです。 種子や穀物、豆科植物、ナッツにはフィチン酸が含まれています。フィチン酸は、天然の抗酸化物質であり、腎臓結石やガンを予防する可能性もあるとされています(ss1s2s3)が、鉄、亜鉛、カルシウムの吸収を妨げ、ミネラル欠乏症を招く恐れがあるため(s)、バランスの取れた食事を心がけている人はまったく問題視する必要がありませんが、ベジタリアンやビーガンで日頃から鉄分や亜鉛が不足している場合には重要な問題となります。それぞれのフィチン酸含有量は以下の通りです(s1)。

食品

フィチン酸

アーモンド

0.49.4%

0.62.4%

ブラジルナッツ

0.36.3

ヘーゼルナッツ

0.20.9

レンズ豆

0.31.5

トウモロコシ

0.72.2%

ピーナッツ

0.24.5

エンドウ豆

0.21.2

0.11.1

米ぬか

2.68.7

ゴマ

1.45.4

大豆

1.02.2

豆腐

0.12.9

クルミ

0.26.7

小麦

0.41.4

ふすま

2.17.3

小麦胚芽

1.13.9

ご覧の通り、フィチン酸の含有量は栽培環境などによって大きく変動します。

フィチン酸は食事中のミネラル吸収を妨げますが、一緒に食べずに間食としてそれ単体を摂る分には影響を及ぼしません。日頃からバランスの良い食事を心がけ、たまに間食としてナッツや種子類などを摂る分には、オメガ3の良い供給源となり、バラエティに富んだ食生活にもなります。また、フィチン酸を含む食品もさまざまな食品から微量栄養素を摂取するためにも一切避けるべきではありませんし、以下のようなちょっとした工夫によって、その食品のフィチン酸含有量を大幅に減らすことができます。

水に浸す

穀類や豆類は一晩水に浸した後、水を替えて煮る。

発芽

種子や穀物、豆類は発芽するとフィチン酸塩が分解されてリンが放出され、新芽に利用される。

発酵

発酵中に生成される有機酸がフィチン酸塩の分解を促進する。特に乳酸発酵が好ましいとされており、サワードウはその好例である。

これらの方法を組み合わせることで、フィチン酸塩の含有量を大幅に減らすことができます。たとえば、キヌア種子のフィチン酸含有量を98%も低減することができます(s)。自分のからだの反応を見ながら上手に取り入れてみてください。

ピーナツやエンドウ豆、モヤシ類も生の豆に特有の不快な味があるため、生で食べるべきではありません。煮ればその臭いも消えます。生のヒヨコ豆には免疫系を害する毒素が含まれていてエリテマトーデスに似た神経ラチリスム(neurolathyrism)という病気の原因になります。乾燥させて焼いたヒヨコ豆の粉をよく使うインドでは、ラチリスムが大発生して多くの州では販売が禁止されています。ヒヨコ豆の毒は水煮すると消えてしまいます。 豆料理では生煮えのまま食べるという失敗をしがちですが、スロークッカーなどを使用してとろ火で長時間、豆がスープに溶け始めるまで煮ると、味も消化も非常に良くなります。 何世紀も前から私たちアジア人は、大豆を消化も味も良いさまざまな食品や調味料に加工する技術を伝えてきました。豆乳や豆腐をはじめ、味も歯ざわりも肉によく似た食品も大豆からつくってきました。大豆の魔法とも言うべきその技術は、仏教寺院の精進料理で真価を発揮しています。 20世紀の西洋文化の食品業者は、大豆タンパクからホットドッグ、カツレツ、ベーコンなどに似た食品をつくろうとしてきましたが、つい最近まで、彼らの努力は日本や中国の精進料理には遠く及ばないものでした。東洋の大豆食品が親しまれるようになった今日では、西洋でも新たな食品が開発されはじめました。たとえばテンペです。インドネシア料理には欠かせない大豆の発酵食品であるテンペは、味も歯ざわりも肉によく似ていて、西洋料理にもなじみやすく、とくにバーガー類やケバブ類、ひき肉を使う料理にはぴったりです。テンペは発酵しているためガスのもとにもならず、お肉の代替としてとても美味でおすすめできます。

穀物

豆類ほどのタンパク質はありませんが、ベジタリアンの食事には重要なタンパク源であり、デンプン源でもあります。トウモロコシを除けば脂肪も少ないため、穀物を頻繁に食べることをおすすめします。 パンやパスタとしてだけではなく、スープや主食としても十分美味しくいただくことができます。アワ、ヒエ、ソバ、キビ、キヌア、ワイルドライス(野生米)など、最近ではさまざまなものが手に入るので、いろいろなものを愉しみながら試していただきたいと思います。

ナッツと種子

タンパク質に富み、脂肪の含有量が非常に多いものも少なくありません。主食に近い形でナッツ類や種子類を食べることはおすすめしません。

タンパク質のまとめ

多くの人は、動物性食品を少なめにし、デンプンや野菜を多く食べ、食卓の中心に獣肉・鳥肉・魚肉料理を置くような現代的な食生活から脱却することで総タンパク摂取量を減らせば、それが健康につながることになります。

ここまで読まれたあなたはたぶん、食生活に関する注意点があまりにも細かいことにうんざりされていることと思いますが、バランスの良い食事によって健康的で若々しいからだを手に入れるために知っておいたほうが良いことを最大限記述させていただきました。

私たちは食べなければ生きていけませんが、現代社会ではきちんとした本来の栄養価ある本物の食べものはほぼ皆無です。その中でいかに良いもの(高価なものという意味ではない)を選んで食べ、できる限り多くの栄養を摂取し、不要なものを素早く体外に排出できるか?が大切なのです。そのために今の私たちができることで重要なのが正しい知識を身につけて本物を見極める目を養い、バランスをとることです。バランスの良い食事とは、高複合炭水化物・低タンパク・低脂肪食です。それさえ知っておけば、飽和脂肪も多不飽和脂肪も最小限になり、動物性食品も一般的な食事よりははるかに少なくなるはずです。

とはいえ、節々で繰り返していますが、神経質になり過ぎたり、こうせねばならぬと無理や我慢をして強いストレスを感じては元も子もありません。肉類などは特になるべく高品質なものを選んで、からだの声を聴きながら、時にはからだがビックリし過ぎない程度に思いっきり食べたいものを食べて(次世代ファスティングでは週に1日は好きなものを食べてもOKとしています。)、愉しみながら1週間の中でバランスを取っていくことをおすすめします。

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