有酸素運動のメリット・デメリットとおすすめ

前回お伝えしたように、さまざまな運動を取り入れることで飽きずに続けることができ、からだの一部だけに負荷をかけることなく、あちこちまんべんなく動かすことができます。

それぞれの有酸素運動の1時間あたりの消費カロリーは

  • ウォーキング:200~300kcal/h
  • ランニング:480kcal/h
  • 水泳:700~900kcal/h
  • クロストレーナー:500kcal/h
  • 踏み台昇降:150kcal/h
  • 縄跳び:560kcal/h

です。それでは、それぞれの運動のメリットとデメリットを見てみましょう。

ウォーキング

ウォーキングの最大の利点は、特別な練習も技術もいらないことです。誰でも歩く方法は知っているし、良い靴があれば他には何も必要ありません。戸外でもショッピングセンターなどの室内でもできますし、ケガをする危険がもっとも少ない、安全な運動です。

ウォーキングの問題点は、楽に歩きすぎて運動量が足りなくなりがちなことです。有酸素運動としてのウォーキングとは、ぶらぶら歩きや休み歩くことではありませんし、他の運動よりも多少時間をかける必要があります。時速6.7kmぐらいの速度で歩かなければなりません。それでも物足りない場合は、もっと速く歩くか、坂道(ゆるやかな長い登り坂が良い)を歩くか、ハンドウェイト(手に持つ重り)をもって歩く必要があります。(ちなみにアンクルウエイト(足首につける重り)は関節に負担をかけて負傷の原因になるため使わない。)

ウォーキング運動で大切なのは、良い靴を選び、良い姿勢を保ち、両手と両足を反対方向に大きく振って歩くことです。

 

ランニング

ランニングは最近、人気が高まっている有酸素運動の一つです。走るという運動の最大の利点はその過酷さにあります。素早く効果的にフィットネスを促進し、適切な速度と時間によってカロリーを大量に燃焼させ、確実に減量を実現します。激しい運動のためエンドルフィンの放出量も多く、一部の人たちが「エネルギーの優しいキス」と呼ぶ、「ランナーズハイ」を味わうこともあります。有酸素運動全般に通じることですが、ランナーズハイにもすぐれた抗うつ効果があります。

ランニングには、定期的に始める前に知っておくべき重大な欠点があります。それはここで紹介する有酸素運動の中で一番負傷する可能性が大きい、危険な要素を含んでいるということです。足・膝・腰・背中の関節が傷ついたり、腎臓を損傷したりする恐れがあります。しかし、その危険はいくつかの注意を守ることによって未然に防ぐことができます。まず、コンクリートの道は走らないことです。

できれば競技トラックか、土の道を走るのが良いです。そして、必ず関節への衝撃が最小限で済むように設計されたランニングシューズをはくこと、古くなった靴はやめて、新しいものと交換することも大切です。さらに、走り出す前に関節を柔軟にする準備運動を忘れてはいけません。

もっとも大切なことは、自分のからだの声に耳を傾けることです。関節が痛み出したら、痛みの原因が分かるまで走るのをやめるか、無理のない走り方に変えなければなりません。関節のちょっとした痛みを無視して走り続け、脊椎、股関節、膝関節などを傷めて走れなくなった人が大勢います。どんな運動にもいえることですが、からだを傷めやすいランニングにおいては、とくに気をつける必要があります。

また、他の運動にくらべてランニングには、苦しさがエンドルフィン系を刺激するせいか、知らずにからだを酷使してしまいがちな傾向があります。まるで中毒になったかのように、生命の危険を冒してでも走る続ける人がたくさんいます。何らかの事情で走れなくなったら生きていけないかのようにのめり込んでしまうのです。自己懲罰のいち手段として走る人もいます。

真夏の日中、気温34℃、湿度64%、雲に隠れることなく照りつける太陽、地面からの強い照り返しを容赦なく受ける時間帯の約45分間ですれ違ったランナーの数はなんと17人、翌日の気温31℃、湿度74%の暑さの中、同じコース90分間ですれ違ったランナーの数はなんと43人。みんな走ることが趣味みたいなもので大好きなのです。からだの不要な水分を排出した爽快感や走り終えた後の達成感、洗い流すシャワーの気持ちよさは味わった人にしか分からないものです。

が、酷暑の中で走るという極端なストレスはからだを傷めつけます。とくに心臓血管系と泌尿器系への負担は計り知れません。暑い季節に走るとき、汗をたくさんかいたときは、水の補給を忘れてはなりません。また、ランニングは有酸素運動のため、呼気の量も増えているので、交通量(排気ガス)の多い街路で走るのもやめた方が良いです。

フィットネスクラブにあるベルトランナーは、最近では家庭用のものも出ています。速度や角度が変えられるもの、モニターにさまざまな情報が表示できるものもあり、ベルトが弾力のある材質でできているので、からだを傷める危険性は少なくなります。

ただし、体重や筋肉量、呼吸器の状態によっては心臓や膝への負担が大きいため、自分のからだの反応をよくスキャニングしながら、まずはウォーキングや筋トレ、食事制限によって体調を調えてから始めることをおすすめします。

 

水泳

水泳もひろく親しまれている運動です。ただし、泳ぐ場所と若干の技術がいるため、たいがいの人にとってはウォーキングやランニングにくらべると手間がかかります。水中の運動には他の運動にはないいくつかの利点があります。水の浮力で関節や筋肉の動きが陸上より自由になるため、筋骨格系の障害がある人の運動としても好まれています。

泳いでいると自由な運動感覚や浮遊感、リズミックな呼吸によって、適度の変性意識状態に入る人が少なくありません。ウォーキングやランニングとは違い、下半身だけでなく上半身もよく使うので、よりバランスのとれた筋肉鍛錬になります。心臓血管系への負担もランニングほど大きくありません。

有酸素運動として水泳を行うときは、水中で正しい姿勢を保ち、効率的なストロークを行い、動きと合わせた呼吸をするという正しいフォームを身につける必要があります。そのため、水泳をメインの有酸素運動に選ぶ場合にはしばらくインストラクターにフォームを教わることをおすすめします。ちなみに有酸素運動としてはクロールが一番おすすめです。また、水泳とダンスと柔軟体操を組み合わせた水中エアロビクスは、ただ泳ぐよりも面白く、からだのためにも良いです。

水泳の最大の欠点は、プールにまつわるものがほとんどです。常夏の国に住み、近くに泳げる海や川などがあるという恵まれた人は別として、ほとんどの人はプールで泳ぐことになると思いますが、プールの塩素殺菌した水が目・皮膚・毛髪・鼻や口の粘膜・上気道に有害なことが多いのです。

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の方で塩素の経皮吸収や経皮毒の恐ろしさについてかなり詳しくお伝えしましたが、プールを利用する際にはまず、必ずよくフィットするゴーグル(水中メガネ)をつけることをおすすめします。マスクやシュノーケルを使うのも塩素の害を一部防ぎ、水中でより良い姿勢を保つこともできます。耳栓はしない方が良いです。耳に水が入ったら耳の中をよく拭いてから消毒用アルコールを少々塗るとアルコールが水を取り除いてくれます。長時間泳ぐ人は温水プールの方が良いです。とくに関節炎や筋肉痛のある人は、冷たい水で泳ぐと悪化することがあるので気をつけた方が良いです。

もう一つの注意点として、クロールで泳ぐ時には、右側と左側の療法で呼吸する習慣を身につけることをおすすめします。いつも一方に首を曲げていると筋肉の負担に偏りが生じて、首や肩を傷める恐れがあります。

 

サイクリング

自転車の愛好者は急増しており、おしゃれなデザインの自転車が続々登場しています。ウォーキングと同じく、有酸素運動として実行する場合には、サイクリングもかなり活発に行わなければなりません。平坦な道なら時速25キロぐらいのスピードは出したいところで、15キロ以下では運動にはなりません。サイクリングはスピード感と気ままな移動感覚によって爽快な気分になり、美しい環境の中を走っていれば楽しく運動ができるという利点があります。膝に弱点がある人でも、関節にあまり負担をかけずに膝の筋肉を鍛えることができるので、運動による障害の恐れは非常に少ないです。

サイクリングの最大の欠点はある程度良い自転車を買わなければならないことです。レース用の自転車は、選手以外には必要のないスピードを出すために設計されているので、乗り心地を犠牲にしているものが多く、ハンドルが低く上半身を前屈させて乗るドロップハンドル式では首や肩にストレスがかかります。自転車は形とサイズがからだに合っていることが大切で、とくにサドルの選択が重要です。乗り心地の悪いサドルは皮膚を刺激したりお尻が痛くなったり、圧迫によって神経を傷めたりします。からだに合ったサドルでも、前立腺の病歴がある人は背骨の衝撃から前立腺の症状を悪化させることがあります。

ランニングにくらべるとからだへの負担が少ない安全な運動とはいえ、乗る環境によってはサイクリンにも危険が伴います。一番恐いのは自動車です。交通量の多いところを走る場合は、つねに車に注意していなければならず、景色よりも車の動きに気を取られ、おまけに排気ガスを吸い込むことにもなります。自動車がほとんど通らない道に恵まれている人には、サイクリングは格好の有酸素運動になるといえます。

戸外でのサイクリングができない気候や天気のときでも、フィットネスクラブや家庭でのペダル踏み運動ならいつでもできます。これにもいろいろなタイプがあり、コンピューターつきの高価な機械も販売されています。適当なものを選べば、室内でも十分な有酸素運動ができます。

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クロスカントリースキー

フィットネス専門家の多くが最高の有酸素運動として注目しているのがクロスカントリースキーです。どの運動よりも多くの筋肉を使い、心臓血管系の強化には著しい効果があります。からだを傷めるリスクも少なく、技術をマスターすればこれほど楽しいものはありません。欠点は指摘するまでもなく、雪の多い地方に住んでいる人であってもできる季節は限られており、たいがいの人は、まずインストラクターについてスキーの初歩から学ぶ必要があります。スキー板をはじめ、道具や装備類を買う必要もあります。

多くのフィットネスクラブにはクロスカントリースキーの動きで有酸素運動を行えるクロストレーナーがあり、自宅に設置できるものもあります。ペダル踏み運動器よりやや面倒ですが、あまり退屈せずに良い効果が期待できます。

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ダンス

運動生理学者は軽視する傾向にありますが、ダンスは最高の有酸素運動のひとつといえます。 ダンス好きな人にはこれまでに紹介してきたどの運動よりも楽しみながら心身ともに強化することができ、気分も爽快になります。ロック音楽が苦手な人でも、現代では、YouTubeなどの動画視聴サイトやさまざまなダンスエクササイズDVDも売られていますし、手軽で退屈せずに健康を増進することができます。

ひとりでもできるし、天気が悪い日に行うと良い気分転換にもなります。

 

エアロビクス

エアロビクスは、準備運動に続いてインストラクターの指導のもとに、音楽に合わせながら有酸素運動と筋肉強化運動を行うのが一般的です。フィットネスクラブの会員であればご存知のように、たいがいは初級・中級・上級と各人のレベルに合わせてクラス分けがされています。手順が分かりやすく、楽しめるようにプログラムが工夫されている場合が多く、運動に対する意気込みがあまり強くなくてもついていけるという利点があります。

ただし、運動の一部にはジャンプやランニングの類で関節を傷める恐れのあるものが含まれているため、最近では強い衝撃がないように改良された「ローインパクト・エアロビクス」のクラスを設けるクラブも出てきています。自由自在に動くダンスにくらべると面白みに欠けるともいえますが、エアロビクスは多くの人にとって効果があることは認められています。まずはやさしいクラスに入って無理をせずに自分が楽しめる感覚を味わうことをおすすめします。運動の習慣がない人がいきなり中級クラスに入ると、過労になったり筋肉痛を起こしたりする恐れがあります。

 

縄跳び

スポーツ選手の間では、以前から効果的な有酸素運動として縄跳びを取り入れていましたが、これまでに紹介してきた他の運動にくらべると一般的にあまり人気があるとはいえません。縄跳びの最大の利点はその簡便さです。縄跳び用のロープは安価であり、旅行先などどこにでも持っていくことができます。

上達すると、縄跳びのリズムに催眠効果が出てきて、退屈どころか時間がなめらかに流れていくようになります。縄跳びは心臓血管の強化にもすぐれた効果があり、腕と足の筋肉も鍛えられます。

上達するまでには多少の訓練がいりますが、コツは着実なリズムを身につけることと、足をあまり地上から話さずにスムーズなダンスのようなステップを踏むことです。両足跳びより交互片足跳びの方が効果があります。縄跳びだけで30分続けるのは長すぎる場合には、別の運動と組み合わせることもおすすめです。

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階段登り

一度に二段以上ずつ登れば、階段は以外にキツイ運動の場になります。自宅に階段がある人は、それを運動のために意識的に使うといい。また、エレベーターやエスカレーターを使わず、なるべく階段の利用を心がけるようにすべきです。エクササイズマシーンの中でもっとも過酷な運動を要求されるもののひとつに、ミニエスカレーター(ステアマシーンともいう)があります。フィットネスクラブで気に入ったら自宅に一台置いても良いでしょう。比較的ゆっくりとしたスピードで使っても、すぐに汗びっしょりになります。30分も続けると相当の運動をしたことになります。ただし、肥満症の人の場合は、心臓の負担が大きすぎるし、関節を傷める恐れがあるため、ランニングなどと同様、多少の減量と筋力アップをしてから取り組むのがおすすめです。

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有酸素運動の心得

有酸素運動の一般的な注意点を整理してみると、

  1. 運動は何もしないより、少しでもしたほうがいい。定期的にするのなら数分間でもしたほうがいいですが、これまでご紹介した有酸素運動のさまざまなメリットを活用したい場合は、週に5日、1日30分という処方を守ること。
  2. 自分のペースでやさしいところから始めることを忘れずに。とくに、今まで運動をしていなかった人は注意が必要です。
  3. おすすめしている時間や量はあくまでも目安です。ときどき1日や2日運動ができなかったとしても自分を責めて落ち込む必要はまったくありません。いくらでも取り返しがつくし、運動をしなかったことより、それに罪悪感を抱くことのほうが有害です。
  4. メインに選んだ運動に加えて、階段をよく使う、目的地より遠くに駐車して歩く、肉体労働を誰かに頼まずに自分でやるなど、日常生活の中で少しでもからだを動かす方法を工夫すること。
  5. 仲間と一緒にやるときは、けっして競わないこと。競争心は運動から得られるせっかくの効果、とくに心臓血管系・免疫系・情動にたいする効果を損ねる恐れがあります。競争心の強い人はひとりで運動したほうが良い場合もあります。
  6. テニスやハンドボールなど持続的に運動せず、動いたり止まったりする競技は、ここで紹介している有酸素運動の代わりにはなりません。心臓血管系にいちばん良いのは、持続的・定期的な運動です。
  7. 有酸素運動に入る前には必ず準備運動をすること。いちばん良い準備運動は、これからする有酸素運動をゆっくりと行うことです。たとえば、スローモーションで歩いたり走ったりすることです。よく準備運動としてストレッチをする人がいます(学校の授業でそのように教えられている場合があります)が、有酸素運動の前に筋肉を伸ばす(ストレッチ)のは役に立たないどころか逆効果になる場合がありますのでおすすめしません。
  8. 有酸素運動のあとは数分間の整理運動を行うこと。これも準備運動と同じで良いです。
  9. これまでに運動をしたことがない人は、定期的に始める前に健康診断を受けることをおすすめしたす。とくに心臓の病気や高血圧がある人や、遺伝的にその素因がある人は、心臓負荷検査を受けた方が良いです。
  10. 常にからだの声に耳を傾けること!異常な痛みなどを感じたら、すぐに運動をやめるという決断をすることが大切です。
  11. めまいがする、頭がふらふらする、気が遠くなる、呼吸が困難になる、胸痛を覚えるなどの症状が出たら、即座に運動をやめて医師の診察を受けること。
  12. 有酸素運動を終えて5〜10分以内に心拍が平常に戻るのが普通です。それ以上かかる場合は健康診断を受けること。
  13. 具合が悪いときは運動をしないこと。回復するまで待って、徐々にもとのペースに戻していくことです。体重はすぐに戻るので心配する必要はありません。それよりも、病気の初期に激しい運動をして病気を長引かせることのほうが恐いです。
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