- 水の成分の詳細
- 8.総リン(total phosphorus:T-P)富栄養化関連項目
- 9.n-ヘキサン抽出物質(normalhexane extracts)排水基準項目
- 関連
水中の被酸化性物質(主として有機物)を、過マンガン酸カリウム(KMnO4)または
重クロム酸カリウム(K2Cr2O7)などの酸化剤で酸化する際に消費される酸化剤の量を
酸素量に換算したもので、BODとともに有機汚濁の指標としてよく用いられます。
単にCODという場合は、わが国では通常、
硫酸酸性で過マンガン酸カリウムによって沸騰水浴中(100℃)で
30分間反応させた場合の消費量(CODMn)を指します。
また、酸素量に換算する前の過マンガン酸カリウム消費量を
そのまま指標とする場合もあり、特に上水関係では直火・5分間煮沸による
過マンガン酸カリウム消費量がよく使われます。
反応条件が同じであれば、両者の関係は次式のようになります。
CODMn(㎎/l)≒KMnO4消費量(㎎/l)×0.25
重クロム酸カリウムは酸化力が強く、有機物の大部分は 80~100%酸化されるため、
酸化剤として重クロム酸カリウムを用いた場合(CODCr)の測定値は
CODMnに比べて大きく、TODの意味あいに近いものとなります。
諸外国では、CODCrの方が主流です。
環境基準は河川についてはBODで、
湖沼および海域についてはCODで設定されています。
これは、河川は流下時間が短くその間に
川の水の中の酸素を消費するような生物によって
酸化され易い有機物を問題にすればよいのに対し、
湖沼は滞留時間が長く有機物が溶存酸素を消費する時間は5日間以上になるので、
有機物の全量を問題にしなければならないという立場にたっているのと、
湖沼には光合成によって有機物を生成し、
溶存酸素の生成と消費の両方を行う藻類が大量に繁殖しているため
BODの測定値の意味が不明確になりがちなためです。
海域の環境基準(B類型)のうち、
工業用水およびノリ養殖場として利用されている水域のCODは、
アルカリ性での過マンガン酸カリウムによる方法(CODOH)が採用されています。
人為的汚濁のない水域のCODはおおむね1㎎/l以下です。
利水目的によるCODは、水道用水源としては3㎎/l以下、
水産用水としてはサケ、マスなどには3㎎/l以下、コイ、フナなどには5㎎/l以下、
農業用水としては溶存酸素の不足による根ぐされ病の防止の点から
6㎎/l以下が望ましいとされています。
CODは有機汚濁の指標としてBODと同じような取り扱われ方をしますが、
微生物によっては分解されないが酸化剤によっては分解される物質もあれば、
逆に酸化剤では分解されにくいが微生物には分解される物質もあるため、
CODとBODの間に決まった関係はありません。
(CODCrの場合はほぼ常にBODより大きいといえます)
図3-2で、2つの輪の大きさや重なった部分の大きさは
対象とする水によってまちまちです。
ただ、同じ排水や同じ水域の水であれば、ある程度の相関関係はあるので、
CODからBOD(またはその逆)を推 図3-2.
BODとCODの関係定することも可能です。
たとえば都市下水の場合、生下水ではBODの方が高く、
その二次処理水ではCODの方が高い傾向があります。
粒状物質(particulate matter:PM)、セストン(seston)などともいう。
水中に懸濁している不溶解性の粒子状物質のことで、
粘土鉱物に由来する微粒子や、動植物プランクトンおよびその死骸、
下水・工場排水などに由来する有機物や金属の沈澱などが含まれます。
一般に、清澄な河川では粘土分が主体ですが、汚濁が進んだ河川では有機物の比率が高く、
湖沼や海域ではプランクトンとその遺骸が多くなります。
SSが多いと水の濁りや透明度などの外観が悪くなるほか、
・魚類のえらを塞いで死亡させる
・光の透過を妨げて水中の植物の光合成を阻害する
・沈澱堆積して底生生物を埋没して死亡または枯死させる
・農業用水の場合は土壌の透水性を低下させて作物の生育を阻害する
・有機性粒子は沈澱後腐敗分解して悪臭を発生したり作物の根を損傷する
などの影響があります。
通常の河川のSSは25~100㎎/l以下ですが、
降雨後の濁水の流出時には数百㎎/l以上になることもあります。
たとえば、造成工事に伴って流出する濁水のSSは 500~5000㎎/l程度といわれています。
湖沼は、流れが緩やかで沈澱しやすいため、河川に比べてSSは少なく、
一般に15㎎/l以下程度、貧栄養湖では1㎎/l以下です。
農業用水としては、土壌の透水性の保持の点からSS100㎎/l以下、
水産用水としては、河川については25㎎/l以下、
湖沼については、サケ、マス、アユなどには1.4㎎/l以下、
コイ、フナなどには3㎎/l以下が適当とされています。
水中に溶解している酸素ガス(O2)のことで、河川や海域での自浄作用や、
魚類をはじめとする水生生物の生活には不可欠なものです。
酸素の溶解度は水温、気圧、塩分などに影響されますが、
DOは、水が清澄なほどその条件における飽和量に近い量が含まれます。
単位は通常㎎/lを使いますが、同じ濃度であっても
条件(特に水温)によって意味が違うので、
飽和溶存酸素量に対する百分率(%)で表すこともよく行われます。
(20℃の純水の飽和溶存酸素量は8.84㎎/l)
海水は塩分濃度が高いために、河川や湖沼に比べてDOはいくぶん低くなります。
一般に、魚介類が生存するためにはDO3㎎/l以上が必要であり、
良好な状態を保つためには5㎎/l以上であることが望ましいとされています。
また、好気性微生物が活発に活動するためにはDO2㎎/l以上が必要であり、
それ以下になると嫌気性分解が起こって、
硫化水素やメルカプタンなどの悪臭物質が発生したりします。
農業用水としては、DO5㎎/l以下では根ぐされなどの障害が生じます。
水中に存在する多種多様な細菌をすべて分別して検出することはきわめて困難なので、
通常の水質試験では、大腸菌群と一般細菌に分けて分析します。
大腸菌群とは、大腸菌(Escherichia coli)および大腸菌と
きわめてよく似た性質を持つ細菌の総称です。
大腸菌群は一般に人畜の腸管内に常時生息し、
健康な人間の糞便1g中に10億~100億存在するといわれています。
そのため、微量のし尿によって水が汚染されてもきわめて鋭敏に検出され、
また、その数に変動をきたします。
大腸菌群の検出は容易かつ確実なので、し尿汚染の指標として広く用いられています。
大腸菌群自身は普通、病原性はなく、大腸菌群が検出されたからといって
直ちにその水が危険であるとはいえません。
しかし、大腸菌群が検出されることは、その水はし尿による汚染を受けた可能性が高く、
したがって赤痢菌やサルモネラ菌などの病原性細菌によって
汚染されている危険があるということを示すものです。
大腸菌群数は、検水1ml中の個数(正確には培養後の集落数)または、
検水100ml中の最確数(most probablenumber:MPN)で表します。
環境水などの比較的低濃度の試料ではMPN法がよく用いられます。
ただし、現行の大腸菌群測定法ではし尿由来の大腸菌群以外に
種々の土壌細菌も測定されてしまうため、
人為汚染の考えられないような水域でも
しばしば多量の大腸菌群が測定されるなどの問題点があります。
そこで、これに変わる指標として糞便性大腸菌群
(通常の大腸菌群数試験が約36℃で培養するのに対し約44.5℃で培養するなど、
試験方法が若干異なる)なども用いられるようになってきました。
富栄養化現象の原因物質である窒素・リンや、
藻類の発生量の指標としての有機物量や葉緑素量などの項目が含まれます。
水中に含まれるすべての窒素化合物(総窒素:T-N)は
無機態窒素(IN)と有機態窒素(ON)に大別され、
さらに無機態窒素はアンモニウム態窒素(NH4-N)、
亜硝酸態窒素(NO2-N)、硝酸態窒素(NO3-N)に、
有機態窒素はタンパク質に起因するもの(アルブミノイド窒素など)と
非タンパク性のものに分けられます。
また、有機態窒素では、藻類などの体内に取り込まれたものとそれ以外のものという意味で、
粒子性有機態窒素(PON)と溶解性有機態窒素(DON)に区別する場合があります。
無機態窒素にも粒子性のものが無いわけではありません
(懸濁粒子に吸着されているものなど)が、ほとんどは溶解性です。
これらの量はいずれも、化合物としての量ではなく
その中に含まれる窒素原子の量で表します。
たとえば、アンモニウム態窒素濃度と
アンモニウムイオン濃度の関係は次式のようになります。
NH4-N(㎎/l)=[NH4+](㎎/l)×14/18 (原子量:N=14 H=1)
有機態窒素は、微生物の働きによってアンモニウム態窒素に分解されます。
好気的環境では、アンモニウム態窒素はさらに、
硝化菌の働きによって亜硝酸態窒素から硝酸態窒素へと変化します。
(この変化を硝化といいます)
嫌気的環境では、逆に硝酸態→亜硝酸態→アンモニウム態という変化が起こり、
また、硝酸態窒素や亜硝酸態窒素の一部は、
脱窒菌の働きで窒素ガスとして大気中に揮散します。(図3-5)
無機態窒素は、いずれの形でも植物の栄養素として直接的に利用されます。
また、ある種の藻類や、マメ化の植物の根に共生している根粒細菌は、
空気中の窒素を無機態窒素として固定して利用します。
アンモニア性窒素ともいう
水中にアンモニウム塩として含まれている窒素のことで、
大部分はアンモニウムイオン(NH4+)のかたちで存在しています。
アンモニウム態窒素は、主としてし尿や家庭下水中の有機物の分解や
工場排水に起因するもので、それらによる水質汚染の有力な指標となります。
アンモニウム態窒素は、自然水中ではしだいに
亜硝酸態窒素や硝酸態窒素に変化して行くので、
アンモニウム態窒素が検出されるということは、汚染されてから間もないか、
有機汚濁の程度が大きいために溶存酸素が欠乏していることを示します。
ただし、深い井戸水などでは、硝酸態窒素の還元によって
アンモニウム態窒素が生じることがあるので、このような場合には、
アンモニウム態窒素を直接水質汚染と結び付けることはできません。
アンモニウム態窒素は、富栄養化の原因となるだけでなく、
浄水処理における塩素の消費量を増大させるなどの問題点も持っています。
(塩素処理にはアンモニウム態窒素のおよそ10倍の塩素が必要で、
通常の浄水処理の水源としては 0.1㎎/l以下、高度な処理を行う場合でも
0.5㎎/l以下が望ましいとされています。)
亜硝酸性窒素ともいう
亜硝酸塩に含まれている窒素のことで、
水中では亜硝酸イオン(NO2-)として存在しています。
亜硝酸態窒素は、主にアンモニウム態窒素の酸化によって生じますが、
きわめて不安定な物質で、好気的環境では硝酸態窒素に、
嫌気的環境ではアンモニウム態窒素に、速やかに変化してしまいます。
したがって、亜硝酸態窒素を検出するということは、
やはりし尿や下水による汚染を受けてから間もないことを示すものです。
ただし、井戸水などではアンモニウム態窒素と同様、総合的な判断が必要になります。
亜硝酸態窒素は、富栄養化の原因物質であるほか、
血色素と反応して血液の酸素運搬能力を低下させる
(メトヘモグロビン血症、特に乳幼児がかかりやすい)ので、人体にも有害です。
また、条件によってはニトロソアミンという
強い発ガン物質を生成することも知られています。
工業用水としても、特に染色工業や醸造工業では、
亜硝酸態窒素を含む水は利用価値がきわめて乏しくなります。
硝酸性窒素ともいう
硝酸塩に含まれている窒素のことで、
水中では硝酸イオン(NO3-)として存在しています。
種々の窒素化合物が酸化されて生じた最終生成物で、
自然の浄化機能の範囲ではもっとも浄化が進んで安定した状態といえますが、
他の無機態窒素と同様に富栄養化の直接原因となります。
硝酸態窒素自身はそれほど有害なものではありませんが、
水中に硝酸態窒素が多量に存在することは、
その水が過去において窒素系物質による汚染を受けたことを示すもので、
水の履歴を示す指標として重要です。
また、人体に摂取された場合、体内で亜硝酸態窒素に還元されて
メトヘモグロビン血症などの障害を起こすことも知られており、衛生上も注意が必要です。
水道水質基準では亜硝酸態窒素と硝酸態窒素をあわせて10㎎/l以下と定められており、
要監視項目としての指標値もこの値が採用されています。
ほとんどの水質汚染物質は、土壌を通過すると
土壌微生物に分解されたり土壌に吸着されたりして除去されますが、
硝酸態窒素は土壌に吸着されにくいので、農業(特に野菜畑)地帯では、
地下水の硝酸態窒素による汚染が問題になっている所があります。
有機物の中に含まれている窒素で、人間や動植物の生活に起因するタンパク質、
アミノ酸、尿素、核酸などのほかにも、製薬、染料、繊維、食品、石油、化学、
肥料工業などの工場排水に含まれる無数の含窒素有機化合物があります。
全窒素ともいう
上記の各形態の窒素を合わせたものを、総窒素といいます。
水中の窒素の総量という意味ですが、窒素ガス(N2)
として溶存している窒素は含まれません。
富栄養化の指標としては、T-Nがもっともよく使われます。
富栄養と貧栄養の限界値はT-Nで 0.15~ 0.2㎎/l程度とされています。
有機態窒素のうち、タンパク質が分解してアンモニアや炭酸ガスになる中間段階のもので、
具体的には、アルカリ性で過マンガン酸カリウムによって容易に分解されて
アンモニウム態窒素を生成するものを指します。
し尿や下水による汚染度を表す指標の一つとして用いられます。
ケルダール法(Kjerdahl method)によって定量される窒素のことで、
有機態窒素とアンモニウム態窒素の和に相当します。
昔の文献では、ケルダール窒素を総窒素として取り扱っている場合があります。
水中のリン化合物もまた無機態と有機態、溶解性と粒子性に区別され、
無機態リンはさらにオルトリン酸塩 (orthophosphate)と
重合リン酸塩(polyphosphate)に分けられます。
全リン(T-P) | 有機態リン(OP) | 粒子性有機態リン(POP) 溶解性有機態リン(DOP) |
|
無機態リン(IP) | オルトリン酸態リン(PO4-P) | 粒子性 溶解性 |
|
重合リン酸態リン | 粒子性 溶解性 |
(オルト)リン酸イオン(orthophosphoric ion:PO43-)として存在するリンで、
pHによって、HPO42-、H2PO4-、H3PO4などの形にもなります。
水中の無機態リンの大部分はこの形で存在しており、また重合リン酸や有機態リンも、
生物的あるいは化学的にしだいに分解されて、最終的には PO4-Pになります。
溶解性のものは、栄養塩として藻類に吸収利用されるため
富栄養化現象の直接的な原因物質となります。
粒子性のものは、カルシウム、鉄、アルミニウムなどの金属とリン酸イオンが結合した
不溶性の塩で、藻類に利用されることなく沈澱してゆきますが、
ある程度富栄養化が進んで底層水が嫌気化すると、溶出してきて富栄養化を促進します。
広い意味では、重合リン酸や有機態リンもリン酸のうちですが、
単にリン酸という場合はオルトリン酸を指すのが普通です。
一般にリン酸態リンとしてリンの量で表しますが、リン酸イオンの量で表す場合もあります。
その場合、両者の関係は次式のようになります。
PO4-P(㎎/l)=[PO43-](㎎/l)×O.326 (原子量:P=31 O=16)
水中のリン酸の起源は、自然的には岩石や土壌からの溶出や動植物の死骸
または排泄物中の有機態リンの分解がありますが、
通常の水域ではそれらの寄与はごくわずかなものです。
人為的負荷源としては、乱開発によって流出した土壌、
森林や農地に過剰散布された肥料や農薬、家庭排水やし尿、
工場排水、畜産排水などがあります。
また、通常の排水処理(いわゆる二次処理まで)ではリンはほとんど除去されないので、
し尿処理場や下水処理場からの放流水も大きな負荷源となります。
最近では、凝集沈澱などの三次処理や特殊な生物処理を導入して
リンも高率に除去している処理場が増えていますが、100 %除去することは不可能ですし、
リンはもともと自然水中にはごくわずか(1~100ppbのオーダー)しか含まれておらず、
わずかな濃度の変動が藻類の消長を左右するため、
そのような高度処理をしてもなお大きな負荷源となります。
家庭排水については、合成洗剤中にビルダー
(水の硬度を下げて泡立ちを良くするための助剤)として含まれている
リン(主にトリポリリン酸塩)が一定の負荷を占めていることから、
滋賀県の琵琶湖富栄養化防止条例にみられるように、
石鹸への転換や合成洗剤の無リン化によって負荷量を減らそうという動きがあります。
薄い酸を加えて煮沸することによってオルトリン酸に分解されるもので、
メタリン酸〔(PO3-)n〕、ピロリン酸〔P2O74-〕、
トリポリリン酸〔P3O105-〕などがあります。
これらは、自然水中には存在しませんが、合成洗剤や水処理剤、
工場排水などに由来して含まれることがあります。
重合リン酸は、特に汚濁した水域以外では少ないので、
オルトリン酸態リンだけを測定して無機態リンとみなす場合があります。
有機態リンは、総リンと無機態リンの差として定量されます。
溶解性のものには、有機リン系農薬類の他に、
工場排水および動植物の死骸や排泄物などに起因する
さまざまな含リン有機化合物(エステル類、リン脂質など)があります。
粒子性有機態リン(POP)は、藻類をはじめとする水中の微生物体または
その死骸の成分として存在するものが主体なので、
藻類の発生状況の指標として用いられることがあります。
全リンともいう
水中のすべてのリン化合物を、強酸あるいは酸化剤によって
オルトリン酸態リンに分解して定量したものです。
各種のリン化合物をすべて分別して測定することはほとんど不可能なので、
通常の水質分析では主に、無機態リンとしてオルトリン酸態リンが、
有機態リンも含めたリンの総量として総リンが測定されます。
富栄養化の目安としては、T-Pで0.02㎎/l程度とされています。
水中に含まれる有機物を炭素量で表したもので、TOC計を用いて測定します。
水中の炭素は、有機物の他に溶存二酸化炭素や炭酸塩などの
無機態炭素(IC)としても存在しています。
TOC計の原理は、試料水を高温(約 950℃)で燃焼して、
水中のすべての炭素系物質(TC)を二酸化炭素として定量し、
別に低温(約 150℃)で分解して無機態炭素から発生する二酸化炭素を定量して、
両者の差をとるもの(高温燃焼法)が一般的です。
ろ液について測定すれば溶解性有機態炭素(DOC)が求められ、
TOC-DOCは粒子性有機態炭素(POC)となります。
POCは富栄養化に関しては藻類の存在量の指標となります。
有機物の指標として従来よく使われてきたBODやCODは、
水中の有機物の一部分しか表れない、有機物以外の還元性物質による
酸素消費量と区別できないなどの欠点があり、また最近では、
有機汚濁でも酸素消費による障害だけでなく有機物そのものが問題になるケースが多いため、
かわってTOCがよく使われるようになってきました。
水中に溶存炭酸ガス(CO2)、炭酸(H2CO3)、炭酸水素イオン(重炭酸イオン:HCO3-)、
炭酸イオン(CO32-)として存在している炭素をいいます。
これらは空気中の二酸化炭素や地質、水生生物の呼吸などに由来して
自然水中に必ずといってよいほど含まれており、pHやアルカリ度、
水の味などを支配する因子となります。
富栄養化に関連しては、無機態炭素は光合成の材料として、
藻類の消長と密接な関係があります。
水中に含まれるすべての物質を完全に酸化分解するのに必要な酸素量という意味で、
TOC計と同様の自動測定器によって、試料を高温燃焼させた際の
酸素濃度の減少を測定することによって求められます。
BODやCODとして求められる酸素要求量の究極的なもので、
やはり有機物の指標として用いられますが、アンモニア態窒素などの被酸化性無機物や、
溶存酸素および炭酸塩など分解時に酸素を放出する無機物の量が測定値に影響するので、
それらの取扱い方によってTODの意味は違ってきます。
富栄養化に関しては、藻類量や底層水の無酸素化との関連で測定されます。
ケイ素(silicon:Si)は地殻中で酸素に次いで存在量の多い元素で、酸化物、
ケイ酸塩として岩石、土壌、粘土を構成しています。
シリカは、狭い意味では二酸化ケイ素 SiO2 のことですが、
水質調査では各種のケイ酸(H4SiO4など)
およびケイ酸塩も含めてシリカとよび、SiO2に換算して表します。
水中のシリカは溶存態(イオン状、分子状、コロイド状)または
懸濁態(鉱物粒子や生物体内に含まれた状態)で存在し、
一般に地下水に多く表流水として流下するにしたがって減少する傾向があります。
通常の自然水中の濃度は 1~30㎎/l程度ですが、流域の地質によって左右され、
火山地帯の河川や地下水では高くなります。
イネは植物体内、特に籾殻にケイ酸を集積する性質があり、
水田では稲の倒伏防止などの目的でケイ酸肥料が使用されるため、
水田地帯の河川で高い値を示す場合があります。
また、土木工事で地盤改良剤としてよく用いられる
水ガラスの成分はケイ酸ナトリウムなので、
地下水中のシリカ濃度が異常値を示した場合は
近くで何か工事が行われていないか確認すべきです。
水中のシリカは除去しにくく、ボイラーなどのスケールの原因になるので、
工業用水にとっては厄介なものです。
富栄養化に関しては、シリカは代表的な藻類であるケイ藻類の主成分なので、
その濃度は藻類の消長を知る一つの手がかりになります。
試料水を105~110℃で蒸発乾固したときに残る物質を
蒸発残留物(total residue:TR)といいます。
蒸発残留物は水中の不溶解性物質(2mmふるいを通過した水であればSS)と
溶解性物質(dissolved matter:DM または dissolved solid:DS
溶存ガスや低沸点物質は除く)の総和に相当します。
強熱減量とは、蒸発残留物をさらに約 600℃で灰化したときに揮散する物質のことをいい、
残った物質を強熱残留物(ignition residue:IR)といいます。
強熱減量の大部分は有機物であり、強熱残留物の大部分は不揮発性の無機物です。
浮遊物(SS)の強熱減量をVSS(volatile susupended solid)といい、
水中の微生物(=有機性浮遊物)量の目安となります。(図3-8)
富栄養化関連では、ILやVSSは藻類の発生量や
底質中の有機物量(藻類の死骸に起因する)を推定する指標として用いられます。
クロロフィル(葉緑素)は、クロロフィルa,b,cおよび
バクテリオクロロフィルに分類されますが、
このうちクロロフィルaは光合成細菌を除くすべての緑色植物に含まれるもので、
藻類の存在量の指標となります。
試水に特定の藻類を接種して、一定の条件下で藻類の増殖が定常期に達するまで培養し、
その最大増殖量を乾燥重量(㎎/l)で表したもので、
富栄養化の程度を示す直接的な指標となります。
供試藻類としては、
Selenastrum capricornatum(セレナスツルム カプリコルナツム):ムレミカヅキモ。
緑藻類の一種。貧栄養~富栄養の広い範囲の水に生息し、
凝集しにくく培養が容易などの特性を持つため、世界各国で標準的に使用される。
Microcystis aeruginosa(ミクロキスティス エルギノーサ):窒素固定をしない藍藻
Anabena flos-aquae(アナベナ フロスアクアエ):窒素固定をする藍藻
Chlorella(クロレラ):緑藻。
下水や下水処理水のような汚濁度の高い水に対しても安定した結果を示す。
その他、対象水域の優占種、カビ臭産生種、ろ過閉塞性珪藻などが使用されます。
一般に、貧栄養湖のAGPは1㎎/l以下、富栄養湖では10~数十㎎/lに達します。
*MBOD(Modified BOD)
BODの測定方法を応用して、AGPを藻類の増殖量でなく
水中の好気性細菌による酸素消費量として間接的に求めようとする方法。
独立栄養生物(植物、ここでは特に藻類プランクトン)は、
光のエネルギーにより炭酸ガス(CO2)と水(H2O)から
炭水化物(CH2O)を作り、酸素(O2)を放出します。
従属栄養生物(ここでは特に水中の好気性細菌)は、
炭水化物などの有機物と酸素からエネルギーを得て炭酸ガスと水を放出します。
どちらの生物も、これらのエネルギーや炭水化物を使って他の有機物
(生体構成物質)を合成し、その際に窒素、リンなどの微量元素を必要とします。
そして、それぞれに必要な光や有機物などのうちの
どれか一つが不足しても生育できません。
通常のAGP試験は、光や炭酸などを十分与えた条件で藻類を培養し、
栄養塩類に制限されるまでの増殖量を測定して、
栄養塩類の濃度を間接的に求めるものともいえます。
また通常のBOD試験は、酸素や栄養塩類は十分与えた条件で
好気性細菌による酸素消費を測定して、有機物の濃度を間接的に求めるものです。
これらに対して、MBODは栄養塩類は与えないで、
かわりに有機物を十分添加してBODと同様に酸素消費を測定することによって、
栄養塩類濃度の間接的な指標とするものです。
あまり一般的な試験法ではなく測定例も少ないですが、
通常のAGP試験にくらべて簡易に測定でき、供試藻類の選択や保存の問題がない、
特定の栄養塩の寄与を検討しやすいなどの特長があるとされています。
「平成8年2月 水質調査の基礎知識(近畿地方整備局近畿技術事務所)より抜粋」
総リンはリン化合物全体の含有量のことで、無機態リンと有機態リンに分けられます。リン化合物も富栄養化によるプランクトンの異常増殖の要因となり、アオコや赤潮等の発生原因となります。
水質汚濁に係る環境基準で、T-Pは湖沼及び海域で類型別に定められており、湖沼では「0.005mg/L以下」から「0.1mg/L以下」が、海域では「0.02mg/L以下」から「0.09mg/L以下」が利用目的の適応性によりあてはめられます。また、水質汚濁防止法(昭和45年)に基づく排水基準(一律排水基準)では、公共用水域に排出されるものの一部について「16mg/L以下(日間平均8mg/L以下)」と規定されています。
ノルマルヘキサン抽出物質というのは、特定の物質名称ではありません。
ではいったい何を分析しているのでしょうか?
ノルマルヘキサン抽出物質は、一般的に水中の油分等を表わす指標として用いられています。
この分析では、pH4以下の条件において、
上記1、2の条件に当てはまるものを定量しています。
具体的には、鉱油類、動植物油脂類などの油分の他にも、界面活性剤や石鹸、アルコール、アミン類、農薬や染料、フェノール類などが上記に当てはまります。 このようにヘキサンに抽出される不揮発性物質の総量をノルマルヘキサン抽出物質として分析しています。
なぜノルマルヘキサン抽出物質の分析が行われるようになったのでしょうか?
ノルマルヘキサン抽出物質は、1965年に「油脂類(n-ヘキサン可溶性物質)」として分析方法ができ、魚介類の死滅や油膜・油臭などの原因となる、油汚染の指標となりました。
日本における公共用水域の水質保全に関する法律は、漁業資源保護の観点から始まりました。
高度経済成長期に入ると、急激な経済発展とともに拡大した公害問題、さらには「黒い水事件※」が直接的な契機となり、水質保全法・工場排水規制法(水質汚濁防止法の前身) が制定され、その後、水質汚濁防止法や大気汚染防止法などの「生活環境の保全」に関する法律が制定されていき、 ノルマルヘキサン抽出物質は生活環境項目の一つとして規制されるようになりました。
※別名浦安事件ともいい、昭和33年に本州製紙江戸川工場が、紙の材料となる木からヤニを除去する為の機械を導入し、 この機械から出る悪水により江戸川の水が黒く濁り、海水も変色して魚介類が死滅しました。その後、悪水放流をやめない企業に対し、 漁民が工場に乱入し、警官隊と衝突、けが人が出た事件になります。
油汚染は魚介類の死滅や油膜・油臭の原因であり、環境負荷が極めて高い為、 この汚染防止を目的として水質汚濁防止法や下水道法でノルマルヘキサン抽出物質として規制されています。
ノルマルヘキサン抽出物質については、放流先が河川の場合は水質汚濁防止法、下水道の場合は、下水道法で規制されています。
水質汚濁防止法・下水道法共に動植物油脂類の基準は30mg/l、鉱油類の基準は5mg/lとなっています。
基準値が2つ設けられている理由は、油の種類によって自然界での『分解され易さ』が変わる為です。
鉱油類は動植物油脂類と比べて分解されにくいので、環境により長く悪影響を及ぼす為、基準値が厳しく設定されています。
動植物油脂類または鉱油類のどちらの基準が適用されるのかについては、事業場の種類や、取り扱っている油の種類によって異なってきます。
例えば、ガソリンスタンドや、機械油、合成油等の鉱油類に該当するような油を使用している事業場等の場合、 鉱油類の基準(5mg/l)が適用されると考えられます。一方、食品製造業や飲食店等では、サラダ油等の動植物油脂類の使用が多い事から、 動植物油脂類の基準(30mg/l)が適用されると考えられます。詳細については、各自治体への確認が必要になります。
海域においては、オイルタンカーの事故などで石油系油分における異臭魚の発生や、油膜による海水浴場の環境保全上の支障、 さらには水産生物に対する被害を生じる恐れがあったためにノルマルヘキサン抽出物質が規制されました。
ノルマルヘキサン抽出物質が、海域のみの規制で河川や湖沼においては特に規制されていないのは、河川や湖沼だと、 石油系油分以外の有機物質も測定の対象となる可能性があるためで、それらはBODやCODで代用できるため、河川や湖沼では規制されていません。
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