玄米菜食をやめた理由

10年以上前、家族に苦い顔をされながらもマクロビオティックを実践していました。玄米がどうやったら少しでも食べやすくなるか、とか、バーベキューには小麦グルテンで肉もどきを作って持って行ったり・・・それはそれで意外と美味しかったし楽しかったです。

実際、玄米と白米をくらべてみると、

玄米は蒔けば芽が出ますが、精白してしまった白米には、蒔いても芽が出る生命力はありません。もちろん栄養価もケタ違いです。玄米にはバランスよく配合されている栄養素が、ぬかをとって白米になると驚くほど少なくなっています。炭水化物（糖質）こそあまり変わらないものの、タンパク質、脂質、繊維質をはじめ、各種のビタミン・ミネラルは激減しています。
米を白くすると粕（かす）という字に、米を健康にすると糠（ぬか）という字になりますが、漢字にすると一目瞭然です。昔の人は精白すると失われてしまうぬかや胚芽にこそ、大切なものがいっぱいあることをよく知っていたのです。
ぬかや胚芽には、酵素やビタミン・ミネラル、食物繊維など、身体の機能をととのえる成分がたくさん含まれています。

胚芽・・・ビタミン・ミネラル
種皮・糊粉層・・・おもにタンパク質
胚乳・・・おもに炭水化物 酵素は食べたものの代謝になくてはならないものですし、ビタミン・ミネラルは酵素を助けたり、ホルモンや自律神経の調整をする働きがあります。繊維は善玉菌をふやし、有害物質をまきこんで腸の掃除をしてくれます。また、重金属を排泄する作用のあるフィチン酸なども混じっています。
こういった成分が少ない白米には、身体をすこやかに保つ機能がかなり失われていることになります。
いちばん問題なのは、代謝がうまくいかずに疲労物質の乳酸を作ってしまうことです。玄米の中性に対し、白米は身体に負担をかける酸性食品になりさがってしまうのです。

私自身は玄米菜食によって体調や便通も良くなったりはしたのですが、子どもたちにはやっぱり動物性タンパク質も必要です。それに、玄米菜食の場合、ビタミンB12、クレアチン、カルノシン、DHA、コレステロール、必須アミノ酸が不足するので、健康に必須の栄養素を補うのが難しくなります。

実際、マクロビ食で育った子どもはビタミンD不足によるくる病（ビタミンD欠乏や代謝異常によって生じる、骨の石灰化障害）の有病率が高い(r)とか、ビタミンB12欠乏症の原因になる(r)といったデータもあります。オランダで行われた調査では、成長の遅延、脂肪と筋肉の浪費、および精神運動発達の遅延をもたらしたという結果が出ています(r)。

とはいえ、玄米菜食というのはマクロビのほんの一部です。マクロビを実践し学んでいる中で教わった、これらの3つの決まりごとは、心身のバランスを整えて、豊かに過ごすためにはかかせないものとして、日々の食材選びにもとても役立っています。

1.陰陽調和

食材にも陰と陽があり、どちらに偏るわけでなく、その中間である中庸の状態が最適という考え方。私たちは暑い夏は陰性である冷たい食材を取り入れて、無意識に陰陽のバランスをとっています。

2.身土不二

本来仏教の用語ですが、私たちの身体は住んでいる土地（国）とは切り離せない関係であり、その土地（国）でとれた、季節のものを食べるのがよいという意味です。

昔から「郷に入りては郷に従え」という言葉もあり、最近では「地産地消」という運動もあるように、私たちが健康で幸せに生きるために必要な指針だと思います。近年、食材は季節に関係なくいつでも購入できますが、体には住んでいる土地（国）で育った旬の食材をとることが大切としています。

3.一物全体

一つの食材をまるごと全部摂取するという意味です。これは、生命あるものの全体を食べると言うこと。

現代では、玄米を精白した白米に、肉や魚のある部分、皮をきれいにむいた野菜を食べていますが、野菜の皮や魚の骨など捨ててしまう部分にも、ビタミンやミネラルなど多くの栄養が含まれています（玄米は土に蒔けば芽が出ますが、白米は腐ってしまいます）。それらを食べることで、すべての栄養を取ることができ、バランスがとれるということです。生命の糧としてきちんと生命をまるごといただくことが本当の活力や生命力につながっていきます。

食事にとって一番大切なこととは？

これらの学びは、心身をバランス良く豊かにするためにはかかせないものとして、日々の食材選びにもとても役立っています。さらに、漢方や薬膳、東洋医学の思想も取り入れることで、より一層深まります。

テレビやメディアでは、〇〇を食べるとガンになる！とか逆に□□を食べていれば大丈夫！とか不安を煽るようなことが四六時中取り上げられていますが、ヒトとして必要不可欠な食において、『これを食べなければならない』、『これは身体に悪い』、『こうじゃなければいけない』という使命のようなものをもって、食事を楽しめないことは何よりも良くありません。むしろ、食べものという生命の源に、愚痴や悪口、文句を言っていることになるので、その食べものにさらに呪いをかけて食べることになります。

その時その時に『食べられるもの』、『食べられること』に、『私の身体の栄養となってくれてありがとう』と感謝していただくことで、身体の中で必要な栄養となって働いてくれることになります。

質素な食事だからこそ、無農薬のものや丁寧につくられた調味料を少量使う玄米菜食の素材本来の美味しさや滋味深さは、口に入れた瞬間、身体が喜んでいるような何ともいえない美味しさ、豊かさがあります。

しかし、なによりも最高の調味料は「お腹を空かせること」。お腹が空いているかどうかも分からず時間だから食べている食事よりも、自分の身体の状態をいちいち確かめ、時には胃腸を休ませていたわり、食べるときにはそのものをよくかんで味わい、生命をいただいていることに感謝することが大切だと思います。

昨日たまたま観た映画ですが、食について改めて意識するのに、とても良い面白い映画でした。どちらもAmazonプライムで観れますので、良かったらぜひ観てみてくださいね。