麻農家さんのお米はなぜ整う?麻の土壌改良の仕組み

ワークショップやイベント、マルシェで麻農家さんのお米をご購入いただいた方から、手触りがまったく違う、次の日のお通じがすごい、心身が整う、などなど喜びの声をたくさんいただき、とても嬉しいです。

麻にかける想いについてはこれまで度々綴ってきましたが、今回は改めて、『自然栽培(ずーっと無農薬・無化学肥料の畑)で麻を育てた土壌で収穫した麻農家さんのお米のことを詳しくお伝えしたいと思います。

⒈麻の土壌改良効果について

麻(ヘンプ)は、その特性から土壌改良に多大な効果をもたらす植物として注目されています。実際に麻の自然栽培をしたかった私が、世界中の文献から得られた麻の土壌改良効果について詳述します。

1. 根系による土壌構造の改善

麻は成長が早く、100~120日で約3~5メートルの高さに達します。その強力な根系は土壌中に深く広がり、土壌の物理性を改善します。これにより、土壌がふかふかになり、通気性や排水性が向上します。この効果は、土壌微生物の繁殖を促し、地力の増進にも寄与します。 

2. 硝酸性窒素の低減

麻の栽培は、土壌中の硝酸性窒素濃度を低減させる効果があります。硝酸性窒素は、化学肥料や有機肥料、畜産廃棄物、生活排水などが原因で土壌中に蓄積し、酸素欠乏を引き起こす可能性があります。麻はこれらの過剰な窒素を吸収し、土壌の健全性を保つ役割を果たします。 

3. 土壌浸食の防止

麻の長い根は、土壌浸食を防ぐ効果があります。これにより、土壌の肥沃度を維持し、持続可能な農業に貢献します。 

4. 土壌中の有害物質の除去

麻は不毛の土壌でも育ち、重金属や毒素を吸収する能力があります。これにより、土壌の浄化や環境修復に利用されることがあります。 

5. 環境への適応性と持続可能性

麻は害虫に強く、本来農薬や化学肥料を必要としません。また、乾燥した土地でも育つため、栽培の手間が少ない植物です。さらに、世界中ほとんどの地域で栽培でき、輪作や二期作、暖かい地方では二毛作も可能です。これらの特性により、再生可能な循環型社会の構築に貢献できる植物として再認識されています。 

これらの特性から、麻は土壌改良や環境保全において非常に有用な植物であることがわかります。

では、なぜ多くの麻農家さんは農薬を使用しているのでしょう?

確かに「麻(ヘンプ)は農薬いらず」とよく言われますが、実際に農薬を使っている農家さんがいるのは事実です。その理由は大きく分けて5つの観点から説明できます。

なぜ農薬が使われるのか?5つの理由

【1】規模拡大による効率優先(商業栽培)

農薬なしでも育つ強さがある麻ですが、商業レベル(数ha以上)での大規模栽培になると、雑草管理や虫害のリスクが「手間・人件費」として重くのしかかります。

→ 経済効率を優先し、除草剤や殺虫剤を導入することで省力化を図るのが現実です。

【2】用途によって求められる品質の違い

繊維用(工業麻)は多少虫に食われても問題ありませんが、種子用・CBD用・食品用麻(ヘンプシード、葉・花など)は、品質・外観の影響が大きくなるため、虫食いや病気を避ける必要があります。

→ 特にCBD抽出用の花穂などは、病害虫のリスク管理が求められやすいです。

【3】気候変動・栽培地の違い

一般に「麻は病害虫に強い」と言われるのは、乾燥地・温帯地域での話が主。

日本のように湿度が高く、雨の多い地域では、実際には…

    • 根腐れ(湿害)
    • 灰色かび病・白絹病(高湿病害)
    • アブラムシ・ハスモンヨトウ などの虫害
      が起きやすくなり、「思っていたより病害虫が出た…」という声も多いです。
【4】栽培技術・輪作設計が未成熟

麻を本来の力で育てるには、「土壌微生物の多様性」「輪作設計」「有機的な管理」が必要です。

しかし、それを学ぶ機会やサポートが少ない現状では、従来の慣行農法(化成肥料+農薬)での栽培を選ばざるを得ない場合もあります。

【5】法規制による制限(特に日本)

日本では「大麻取締法」の影響で、麻の栽培自体が厳しく制限されているため、

    • 栽培免許を持つ農家が限られている
    • 栽培面積も小規模にとどまることが多い
      → 農薬を使ってでも「確実に収穫したい」と考える心理も働きやすくなります。
補足:麻は自然栽培が可能です!

土壌環境・輪作・生態系を整えれば、農薬や肥料なしでも麻は充分育ちます。

実際に、日本や海外の自然栽培農家の中には、無農薬・無肥料で麻を立派に育てている事例もあります。

特に、小規模・循環型農業と相性が良く、仲間と手を取り合う形(共同農場・村づくり)で育てるのにぴったりの植物です。

 

麻の後作に稲を育てる利点と効果

【1】土壌改良による稲の発育促進

麻は強い根を張り、土壌を耕す「自然のトラクター」のような働きをします。その結果…

  • 土壌がふかふかになり、通気性・排水性が向上
  • 地中の微生物環境が活性化
  • 根の張りが良くなることで、稲の根腐れや病気リスクが減る

これにより、無農薬・無肥料でも稲がしっかりと根を張り、元気に育ちやすくなります。

【2】残留窒素・重金属の吸収 → クリーンな圃場に

麻はファイトレメディエーション(植物による土壌浄化)効果があり、以下を吸収・除去してくれます。

  • 過剰な硝酸性窒素(化学肥料由来)
  • 重金属(カドミウム、鉛など)

その結果、安全性が高く、稲作に適した「クリーンな土壌」にリセットされるため、有機や自然栽培での稲づくりに最適な圃場条件が整います。

【3】雑草抑制 → 除草の手間が減る

麻は生育がとても早く、背丈も高いため、雑草の光合成を妨げて成長を抑える性質があります。

そのため、麻を育てた後の畑では…

  • 雑草の種が減る
  • 翌作の稲の時に草取りが最小限になる

→ 農薬を使わずに「草を制する」サイクルがつくれます。

【4】生物多様性の維持・害虫リスクの低減

麻の根周辺では**有益な微生物(善玉菌)**が増えやすく、病害虫が好む条件(酸性・高窒素など)から脱却できます。

また、

  • 単一栽培ではなく輪作することで害虫が定着しづらくなる
  • 稲の葉を食べる虫の発生サイクルを断つ効果

なども期待され、自然の力で防除できる状態が生まれます。

【5】二毛作・二期作による農地の有効活用

麻と稲はどちらも短期間で育ち、収穫までが早いため…

  • 麻(春〜夏)→ 稲(夏〜秋)の二毛作
  • 稲(春〜夏)→ 麻(夏〜秋)の二期作

のどちらも可能。

→ 同じ農地で年に2回収穫できるため、収量も収入も上がる上に、土地の生態系が活性化します。

このようなサイクルによって、

  • 無肥料・無農薬でも自然の循環が生まれ、土が元気になる
  • 子どもたちや次世代に安心して繋げられる土づくり
  • 麻→稲の自然農法ローテーションがモデルとなり、村づくりや教育プログラムにも活かせる

まとめ

  • 麻 → 稲は自然農法でも相性が非常に良く、循環を助け合う関係です
  • 上記はあくまでモデルなので、地域・品種・天候に応じて柔軟に調整可能
  • 稲ではなく「麦」や「野菜」との組み合わせもできます(必要あれば別途提案します)

🌾数に限りがありますが、麻農家さんのお米(玄米)はインスタにてご予約を承っております。

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